"古い工場を渡された嫁" 第3話
玄関へ入る声はるく、毎回派な束を持ってきた。
を握り、涙を浮かべ、配している姿を見せる。
あるには、同させた秘へ声で指示した。
「角度が悪いわ。こっちからもう1枚」
そしてもう度、代会のを握った。
撮が終わると、すぐに写真をSNSへ投稿した。
《お母様、く元気になってください》
コメントが集まり始めると、彩佳は代会のそばに座りながらも、ずっと携帯話ばかり眺めていた。
10分もするとちがった。
「お母様、本当に配です。またすぐ来ますね」
ドアが閉まった直、廊から聞こえてきた声はもう震えていなかった。
「うん、今からる。予約、何だった?」
代会は何も言わなかった。
方、ユナはほとんど毎晩やってきた。
派なも写真もなかった。
実の父に教わって作ったという体を温めるものを持参し、代会の枕元へ置いた。
昼は会社の厨で試作品を作っているため、ユナの指先は荒れていた。
そので代会のをゆっくり揉んだ。
代会は眠ったふりをした。
やがてユナの荒れたの甲へ、ぽとりと涙が落ちた。
「お母様、もうしだけ頑張ってください」
とてもさな声だった。
布団を首元までかけ直し、ユナは静かに部をていった。
ドアが閉まると、代会はゆっくり目をけた。
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自分は、この嫁に何をしてきただろう。
結婚を反対した。
柄がわないと言った。
親戚が来てもまともに迎えず、「潰れた薬局の娘」という言葉をのでも平然とにした。
それでもユナは、自分のために泣いた。
暗い井を見げながら、代会は胸の奥に、これまでわったことのない居の悪さをじていた。
継者を決める試会まで、残されたはわずかだった。
会社の厨では、彩佳とユナがそれぞれ別のチームを率い、しいミールキットの発をめていた。
2つの厨の空気は、まるで正反対だった。
彩佳はい段階から方針を確にした。
「原価はできるだけげます。その代わり宣伝にはおを使う。今はだけで商品は売れないの」
試作品が完成するから、華やかな盛り付けをさせた。
照を当て、写真を撮り、SNSへ投稿する。
彩佳の発信にはすぐにくの反応が集まった。
《絶対買います》
《見た目だけでも美しそう》
《発売が楽しみ》
彩佳はその数字を見ながら満そうに頷いた。
「ほらね。まず欲しいとわせることが事なのよ」
方、ユナの厨には派さがなかった。
原材料をしずつ変え、加減を変え、何度もを確かめる。納得できなければ、ほとんど完成していた試作品でも最初からやり直した。
調理チームの佐藤が計を見てため息をついた。
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「ユナさん、これでは期限ににいませんよ」
「もうしだけやってみます」
ユナはく答え、再び鍋へ向かった。
保する商品だからこそ、材料の相性や体への負担をきちんと考えたかった。
そのも夜遅くまで作業を続けていると、佐藤がぽつりと言った。
「でもね、正直に言うと、会が病気だって聞いた、しいい気だとってしまったわ」
ユナのが止まった。
「これまでユナさんに、どれだけたくしてきたとってるの。にあんなに悪したら、罰が当たったってっても仕方ないでしょう」
ユナはしばらく黙っていた。
やがてべらを置き、佐藤の方を向いた。
「佐藤さん、そんなこと言ったらだめですよ」
「だって……」
「私にたかったことと、病気になることは別です。誰かが苦しんでいるに、いい気だなんていたくありません」
佐藤はしばらくユナを見つめ、困ったように笑った。
「本当に、ユナさんはおよしね」
その言葉を最に、佐藤は自分の仕事へ戻った。
ユナも再び鍋をかき混ぜ始めた。
だが、議なことに腕がしくじた。
自分を庇ってくれた言葉だったのに、義母のことを悪く言われると素直にべなかった。
やがて社内試会のが来た。
い会議テーブルのに、2種類のミールキットが並べられた。
彩佳チームの商品は、箱をけた瞬からい辛料のりが広がった。
刺激があり、目から印象に残るに仕げられていた。