"古い工場を渡された嫁" 第1話
「あやか、会社を全部おにやろう」
代会がそう告げた瞬、広いリビングの空気が凍りついた。男の嫁である彩佳は驚いたように目を見いたものの、すぐにくをげ、がりそうになる元を必に引き締めた。
その隣で、次男の嫁ユナは何も言えずに座っていた。自分に告げられたのは、会社ではなく、方にある廃業寸の古いを任せるという言葉だった。
「おはが良すぎる。商売はだけではできない」
代会の声はたかった。
ユナは膝ので両を固く握り、ただをげた。の甲に1滴だけ涙が落ちたが、それを拭うことさえしなかった。
誰もが、会は彩佳を継者に選んだのだとった。
だが、その決定がされる3か、代会の考えはまったく違うところから始まっていた。
その頃、代会は67歳だった。にわたり品会社を率い、夫をくしたも会社を守り続けてきた。
もともと継者として期待していたのは男夫婦だった。
男の健はすでに会社の第線からし距を置いていたが、妻の彩佳は経営や宣伝に関がく、会のでも領よく振るっていた。華やかな付きいにも慣れ、SNSを使った宣伝にも詳しかった。
代会は、そんな彩佳なら会社をしい代へ引っ張っていけるかもしれないと考えていた。
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方、次男の幸介は絵を描くことを仕事にしており、会社経営にはほとんど関わろうとしなかった。
その妻ユナは、経営とはさらに縁い女性だった。倒産した漢方薬局のに育ったというだけで、代会は結婚当初から良い印象を持っていなかった。
「うちの柄とはわない」
幸介が初めてユナを連れてきた、代会は本をにしてそう言った。
結婚にも最まで反対した。
結局、幸介は母親の反対を押し切って結婚した。そのも代会の態度は変わらず、ユナを嫁というより、どこか気に入らない客のように扱うの方がかった。
だからこそ代会は、会社を継ぐのは彩佳だとっていた。
その考えを瞬で壊したのは、自分の誕を祝う事会が終わった夜のことだった。
客を見送り、のが静かになった、代会は1で庭へた。し照ったをやしたかった。
仕えてきた使用の田が、しれてろを歩いていた。
庭の片隅まで来た、代会はを止めた。
「その利子だけで、にいくらになるとってるんだ」
男の健の声だった。
苛ちが混じっていた。
田がの気配をらせようとすると、代会は指を唇に当てた。
その向こうから、彩佳の声が聞こえた。
「どうせ会社はお兄さんのものになるんでしょう。
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男が継ぐのが当たりなのに、何をそんなに気にしているの」
「でも今はまだ母さんの会社だ」
「だからこそよ」
彩佳はし声を落とした。
「お母様、これから先どれだけきられるかしら」
代会の表が止まった。
「今のうちにその分を担保にして、もうし引っ張ってくればいいじゃない」
健はすぐには返事をしなかった。
やがて、苦しそうな声が聞こえた。
「そんな簡単な話じゃない」
「都を見てよ。どうせで全部お兄さんのものになるんだから、しくらい借りしたって同じでしょう」
2の音がざかっていった。
代会はそのにったまま、しばらくけなかった。
会社をとしてしか見ていなかったことも堪えた。
だが、それ以に胸へ突き刺さったのは、彩佳の言だった。
――お母様、これから先どれだけきられるかしら。
自分の残りの寿命を、すでに財産へ換算している。
あれほどがり、次の世代を任せようとしていた嫁が、自分をきたではなく、相続までのとして見ていた。
「会……」
田がさく呼びかけた。
代会は片をげて止めた。
「何も言わなくていい」
その夜、自へ戻っても眠れなかった。
井を見つめるたび、庭で聞いた声が蘇った。
翌朝、代会は会社の法律顧問を務めてきた渡辺弁護士へ話をかけた。
「渡辺先、1つお願いがあります」
「お申し付けください」
代会はし息をえた。