"祖父を迎えた家に福が来た" 第10話
「おじいさん、曜だよ……」
布団のから聞こえる夫のけない声に、私は声を殺して笑った。
お腹にそっとを当てる。
「あなたのひいおじいちゃん、今も元気だよ」
いつかこの子がまれたら、きっと話して聞かせようとう。
あなたがまれてくることを、誰より楽しみに待っていたおじいちゃんがいたんだよ、と。
そしてその頃まで、きっとがには今と変わらず、朝くから祖父のきな声が響いているのだろう。
私はそう信じながら、ゆっくり目を閉じた。
数週、私のお腹はしずつ目つようになっていた。
祖父はそれを見るたびに嬉しそうな顔をする。
「昨よりきくなっとらんか?」
「毎見てるからそうじるだけだよ」
「いや、絶対きくなっとる」
朝のたびに同じことを言うので、匠はとうとう笑いながら、
「おじいさん、毎朝測るつもり?」
と聞いた。
すると祖父は真面目な顔で答えた。
「成を見るのは事じゃろ」
「お腹のからそんな細かく分からないって」
「おはがないのう」
そんなやり取りが、いつのにかがの朝の定番になっていた。
祖父はさらに、ひ孫のために何か残したいと言いした。
「じゃなくてええんじゃ」
ある、祖父は押し入れの奥から古い箱を持ちしてきた。
には黄ばんだ写真や、昔使っていた腕計、若い頃の帳、私の母が子供だった頃の写真などが入っていた。
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「これ、ずっと持ってたの?」
「捨てられんかった」
祖父は枚の写真を取りした。
そこには、まだ若かった祖父と祖母、そして幼い私の母が写っていた。
写真の端はし折れている。
「この子にも、いつか昔のことを話してやりたい」
祖父は私のお腹を見た。
「わしが覚えとるうちにな」
その言い方に、胸がし締めつけられた。
祖父は元気だ。
でも、いつまでも今のままではいられない。
それは分かっている。
だからこそ、今緒にいられるを切にしたいとった。
「じゃあ今からでもいておこうよ」
「何を?」
「おじいちゃんの昔の話」
私はノートを冊持ってきた。
祖父が覚えている族のこと。
若い頃の仕事。
祖母との会い。
母が子供だった頃の話。
しずつき留めていくことにした。
最初は、
「そんなもん、誰が読むんじゃ」
と照れていた祖父も、いざ始めると止まらなくなった。
「昔はこの辺にも田んぼがあってな」
「その話、昨も聞いたよ」
「細かいところが違うんじゃ」
「じゃあ続けて」
匠も横で聞きながら、々質問をする。
私がノートへき込む。
気づけば何ページも埋まっていた。
そのが私は好きだった。
兄夫婦のにいた頃、祖父は自分が邪魔なだとい込んでいた。
今は、自分の記憶を残したいと言う。
自分がきてきたを、次の世代へ渡そうとしている。
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その変化が嬉しかった。
ある晩、私は祖父に聞いた。
「おじいちゃん、今番欲しいものって何?」
祖父はし考えた。
「にも聞いたじゃろ」
「羊羹以で」
「難しいこと言うのう」
しばらく黙った、祖父は静かに言った。
「このままでええ」
「このまま?」
「朝起きて、飯って、散歩して、みんなで話して」
祖父は笑った。
「それが番ええ」
私は返事ができなかった。
3億円を相続したが、最に望んだものがそれだった。
豪華なでもない。
級でもない。
旅でもない。
ただ、して朝を迎えられる。
緒に卓を囲める族。
それだけだった。
私はあらためてった。
は、おがあるから幸せになるわけではない。
誰かに必とされている。
自分がここにいてもいい。
そうえる所があることの方が、ずっときいのかもしれない。
その夜、祖父が部へ戻った。
匠が声で言った。
「おじいさん、最初に来たと全然違うな」
「うん」
「顔がるくなった」
私もそうっていた。
最初はさな物音にも気を遣っていた。
蔵庫をけるだけでも私たちへ確認していた。
今では勝にお茶を入れ、テレビのチャンネルを変え、私たちが寝坊していれば堂々と起こしに来る。
「完全にがだとってるね」
「それでいいんだよ」
匠が笑った。
私も笑った。
翌。
祖父は散歩用にしい靴を買った。
以の靴は底がすり減っていた。
で何も試しながら、