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"名札を戻せなかった夏" 第11話

それとも、その名で泣き、働き、し、族を作ったそのものなのか。

美津子も澄も、最まで確な答えをすことはできなかった。

ただ1つだけ、2が同じように認められることがあった。

19

10歳だった2は、親元をれて列に乗った。

、帰るを失った。

そして、それぞれ別の名を胸につけたまま、戦争の終わった本をき始めた。

もし名札を交換していなければ、全く違うになっていた。

もし伯母が寺へ来るに、名札を元へ戻していれば。

もし教師が名を呼んだ、美津子が先にがっていれば。

もし澄が「私は違います」と言っていれば。

もしあの夜、美津子が「、本当のことを言おう」と答えていれば。

どこか1つ違っていたら、2の21しなかった。

けれどには、から選び直せない瞬がある。

そのにはの分からなかったさなが、何も先まで自分を連れていくことがある。

2枚の名札も、そうだった。

ほんの冗談のつもりで交換した。

に戻すつもりだった。

それなのに、その名札は戦争が終わっても2の胸かられなかった。

布そのものは、やがて古くなり、なくなったかもしれない。

けれどそこにかれていた名は残った。

21

ようやく再会した2は、名を元に戻すことを選ばなかった。

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戻せなかったとも言える。

すでに2ろには、それぞれ別のが続いていたからだ。

それでも別れ際、澄が「美津ちゃん」と呼んだだけは、本当の名が戻ってきた。

誰かのものを奪うための名ではない。

戸籍を直すための名でもない。

10歳の頃の友達が、自分を覚えている証として呼んだ名だった。

美津子は、その言を聞いて泣いた。

失ったとっていたものが、完全に消えたわけではなかったからだ。

「私たち、違えたのかな」

の問いに、美津子は「分からない」と答えた。

おそらく、それ以に正しい答えはなかった。

戦争という代は、子どもたちにさえ、にも答えられない選択を迫った。

そして2は、自分たちなりの方法でその先をきた。

正しかったからき延びたのではない。

違っていなかったから幸せになれたのでもない。

ただ、きるしかなかった。

19

で交換された2枚の名札。

そのさな布切れは、2を入れ替えた。

そして21、古い写真によって秘密がらかになったにも、2は元へ戻ることを選ばなかった。

なぜなら、その頃にはもう、借りたはずの名に、自分自があまりにもく根をろしていたからだった。

美津子としてまれた女性。

としてまれた女性。

2は互いの名で母親になり、庭を持ち、きてきた。

それでも2だけはっていた。

自分が誰だったのか。

が誰だったのか。

そして、あのに何を選んだのか。

を取り戻すことはしなかった。

けれど本当の名を忘れることもなかった。

それが、2が21の歳を経てたどり着いた、唯の答えだった。

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