"名札を戻せなかった夏" 第8話
森澄は別の所へ移った。
その記録も残っていた。
教師はもう度写真の裏を見た。
眉にしわを寄せた。
「……逆だわ」
さく呟いた。
隣にいたが聞き返した。
「何がですか?」
教師は答えなかった。
写真に写っている2と、終戦の記録。
何かがい違っている。
教師は古い資料を調べ始めた。
戦争で失われたものもく、記録は完全ではなかった。
それでも残っている資料と自分の記憶を何度も照らしわせた。
そして1つの能性にたどり着いた。
終戦、「桐美津子」として引き取られた女は、本当は森澄だったのではないか。
反対に、「森澄」として残った女こそ桐美津子だったのではないか。
にわかには信じられなかった。
だが写真は、戦争から2をっていた々の記憶を呼び戻した。
何かの関係者へ確認した結果、その疑いはさらにくなった。
教師はい悔を覚えた。
なぜあの気づかなかったのか。
名札だけを見て判断したのか。
子どもの顔をっていたはずなのに。
しかし当の混乱をい返すと、全てを正確に把握することなど難しかったことも分かっていた。
毎のように子どもの族の消息が届き、迎えが来て、記録を作り直し、き先を決めなければならなかった。
それでも教師は放っておけなかった。
2は今、38歳になっている。
広告
すでにそれぞれの庭があるかもしれない。
それでも、このままらないふりをしていいのか。
調査がめられた。
「森澄」として暮らしている女性。
「桐美津子」として潟で育った女性。
2の所が確認された。
連絡を受けた、本当の美津子はしばらく返事ができなかった。
学から古い疎資料について話がある。
昭19の写真が見つかった。
その説だけで、美津子には分かった。
とうとう見つかった。
胸の奥に21しまっていた秘密が、写真1枚によってかれようとしている。
同じ頃、本当の澄も連絡を受けた。
話を切った、しばらくけなかった。
あの、寺のからていった自分。
何も言わずに見送った美津子。
21、避け続けてきたが、向こうから自分たちを迎えに来たようだった。
数か。
2は京で再会することになった。
同じ部に入った、2はすぐに相が分かった。
21も会っていなかった。
10歳だった女は38歳の女性になっている。
顔ちも変わり、髪型も装も、記憶のとは違っていた。
それでも、目見た瞬に分かった。
美津子は入のくでち止まった。
向かい側にいる澄もかなかった。
昔なら、名を呼んですぐづいたかもしれない。
けれど今、何と呼べばいいのか分からなかった。
自分のにいるのは森澄なのか。
広告
桐美津子なのか。
それとも、そのどちらとも簡単には呼べないなのか。
老教師も同席していた。
教師は2を見比べながら、何度もをげた。
「本当に申し訳ありませんでした」
美津子が顔をげた。
「先が謝ることじゃありません」
澄も頷いた。
「私たちが自分で入れ替えたんです」
「でも、私はあなたたちをっていたのに……」
老教師の声が震えた。
「もっとく気づいていれば、こんなことにはならなかった」
2は教師を責めなかった。
あのの本は、何もかもが混乱していた。
が焼けた。
学の記録がなくなった。
親を失った子どもたちが全国にいた。
誰がどこへったのか、親戚でさえ確認できないことがあった。
そして何より、最に本当のことを言わなかったのは2自だった。
教師が席をした、部には2だけが残った。
い沈黙が続いた。
澄が美津子の顔を見た。
「元気だった?」
「うん」
「そう」
それだけの会話で、また言葉が止まった。
聞きたいことはほどあるはずだった。
どこで暮らしていたのか。
どんなと結婚したのか。
子どもは。
幸せだったか。
苦しかったか。
なぜをくれなかったのか。
けれど21というは、い質問では埋められなかった。
やがて澄がさく息を吐いた。
「私、伯母さんので育った」
美津子は頷いた。
「女学にもかせてもらった。
結婚して、今は子どももいる」
「そう」
「伯母さんは……ずっと私を本当の姪だとってた」