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"清掃員が書いた設計図" 第7話

もいなかった。

だから諦めるか、自分で理解するか。

2つしかなかった。

「社

「ん?」

「私、ここに来られてよかったです」

夫は何も言わなかった。

しばらくしてがる。

「俺もだよ」

それだけ言って事務へ戻った。

灯の

ゆいはもう度ボールペンを握った。

数式がページを埋める。

今回だけは、誰にも笑わせない。

このの技術が悪かったのではない。

それを、数字で証するために。

納品当

朝からには緊張が漂っていた。

完成した部品はすべて検査を終えている。

品質には問題ない。

むしろ元請けから示された求値を回る精度がていた。

それでも、夫は落ち着かなかった。

10

の狭いへ黒いセダンが2台入ってきた。

台ではない。

からりてきた岡部のろに、スーツ姿の男性が2続いた。

は技術本部

もうは常務取締役だった。

従業員の顔が張る。

「そこまで来るのか……」

岡部の図は分かりやすかった。

請けの失敗を経営陣ので確認させる。

そしてそので契約終と違約請求を確定する。

処刑。

そんな言葉が似う雰囲気だった。

岡部はへ入るなり、夫へ言った。

「では、納品物を見せてください」

よりも余裕のある顔だった。

夫は作業台へ歩く。

い布で包んだ部品をつ取りした。

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「こちらです」

岡部が受け取る。

鏡をした。

表。

裏。

いつも亀裂がていた部分。

見る。

もう度見る。

岡部の指が止まった。

「……」

「どうしました?」

常務が尋ねた。

「いえ」

岡部は部品を技術本部へ渡した。

「確認してください」

技術本部は無言で受け取った。

鏡。

測定器。

寸法。

表面粗さ。

複数の項目を確認していく。

次第に表が変わった。

「岡部君」

「はい」

「これ……」

もう度測る。

「研究所の試作品より精度がいぞ」

の空気が変わった。

岡部がすぐ否定する。

「そんなはずはありません」

「数値を見ろ」

本部が測定結果を見せる。

求値を分満たしてる」

常務も部品をに取った。

良は?」

「確認できません」

夫のが震えた。

従業員たちは、互いに顔を見わせた。

ゆいだけはれた所にっていた。

腕には古いノートを抱えている。

岡部は部品を睨んだ。

「加条件を勝に変えたんでしょう」

夫が答えようとする。

その

「岡部部

静かな声がした。

全員が振り向く。

ゆいだった。

「何だ?」

岡部の表に、以と同じ軽蔑が浮かんだ。

「清掃員は黙っていてください。今は技術の話をしているんです」

従業員の顔が曇った。

数週なら、誰もその言葉に違を抱かなかったかもしれない。

今は違った。

ゆいがこの部品を完成させたことを、全員がっている。

ゆいはた。

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「その技術の話をしたいんです」

「君が?」

岡部が笑う。

卒の清掃員が、何を話すんです?」

ゆいは答えなかった。

壁際に置かれたホワイトボードへ歩いた。

マーカーを取る。

そして振り返る。

1か

誰にも名を呼ばれず、雑巾を握っていた女。

その目には、もう怯えがなかった。

「御社の設計図にある応力計算」

ゆいは言った。

「根本から違っています」

岡部の笑みが消えた。

「今から、それを証します」

最初の式をいた瞬

技術本部の顔が変わった。

ゆいが使ったのは、単純な膨張の式ではなかった。

素材の相変態領域における非線形膨張を扱う微分方程式。

温度変化だけでなく、と材料組織の変化まで変数へ組み込んでいる。

マーカーがる。

には、その音しか聞こえない。

夫や職たちには、式のまでは分からなかった。

だが、元請け企業の技術本部には分かった。

「……まさか」

さく呟く。

岡部が横を見る。

「本部?」

返事はない。

ゆいは続ける。

まず、元の設計モデル。

次に実際の材料特性。

両者にじる誤差。

その誤差が相変態温度域で急激に拡すること。

最終に部品内部へどれほどの残留応力が発するか。

ひとつずつ数値を示した。

「この条件では」

ゆいが式の部を丸で囲む。

処理に許容応力を超えます」

次の式。

「そして、この領域の応力集率は御社資料の定値をきく回ります」

岡部の腕組みがゆっくり解けた。

「そんな……」

「だから」

ゆいはさらに式をく。

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