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"「住所は教えない」と言った息子へ" 第8話

「引っ越しました。しいまいは、港区のタワーマンション最階、ペントハウスです。……でも、所は教えないわ」

話の向こうで、息を呑む気配とともに、瞬の完全な静寂が訪れた。 次の瞬、事態を理解したは激しく取り乱し、受話器が割れんばかりの声で叫び散らした。

「は……!? 何言ってんだよ母さん! タワマンのペントハウスだぁ!? ふざけるなよ! 所を教えないってどういうことだよ!」

私はその狼狽する声を最まで聞くこともなく、静かに、そして滑らかに通話終のボタンを押した。

あの、あの、彼が母親である私に対して何のためらいもなく投げつけた酷な言葉――「所は教えないけどね」。 その残酷な言の刃を、私は今、寸分の狂いもなく、完璧な形で彼自の胸元へと突き返したのだ。

それから数、私のスマートフォンは、狂ったように鳴り止むことがなかった。 画面を埋め尽くすからの凄まじい数の着信履歴。留守番話サービスには、完全にパニックに陥り、取り乱した息子の痛な叫び声が何件も録音されていた。

『母さん、頼むよ! お願いだから話にてくれ! なんで急に援助を全部止めたんだよ! 代の両親の介護費用が払えないんだ! もう貯も底をついて限界なんだよ! 宅ローンだって毎万円も残ってるんだ! このままじゃ俺たち、破産してしまうんだよ!』

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かつて母親をたく見し、「づる」と吐き捨てたその同じから、今やプライドもかなぐり捨てた必の懇願が、次から次へと溢れしていた。 私は留守番話から流れるその見苦しい叫びを聞きながらも、指先かすことなく、を揺さぶられることは微もなかった。

やがて、メッセージの声は次第に苛ちと焦りが混ざりった、恫まがいの号へと変わっていった。

『母さん! 俺たち親子だろ!? なんで実の息子を見捨てるんだよ! 所を教えろよ! どこにいるんだ!? 度でいいから直接会って話しおうじゃないか!』

スピーカーから響くその都の良い叫び声を聞きながら、私はたい笑みをさく浮かべた。 私の脳裏に鮮烈に蘇ったのは、かつて息子が友に言い放っていた、あの残酷な言だった。

所を教えない理由? 決まってんだろ、突然来られたら迷惑だからだよ』

彼が自らので放ったその言葉を、私は句違わずにい起こし、今度は私自から、彼に直接告げてやることにした。 私は再びかかってきた着信の通話ボタンを、ゆっくりとタップした。

繋がった瞬の切迫した、すがるような声が受話器越しに響き渡った。

「母さん! やっとてくれた! 今までのことは俺が悪かった、謝るから! だからお願いだ、助けてくれ……!」

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私は極めて静かに、穏やかな調で言葉を紡ぎした。

「あら、何を言っているの? 私はただの『づる』なのでしょう? づるに、切な居の所なんて教えられるはずがないじゃない」

は息を呑み、完全に絶句した。 その凍りついた沈黙を切り裂くように、私はさらに鈴を転がすような軽やかな声で、残酷な事実を突きつけた。

「おが必なら、『本当のお母さん』に頼めばいいじゃないの。あなたがそう呼んで切にしていた、代さんのお母様にね」

その瞬、受話器の向こうから聞こえてきたのは、喉の奥から漏れたような息子の絶望な嗚咽と、いため息であった。 息子は、自らが過に吐き散らしたな言葉の刃が、今や寸分の狂いもなく自分自の喉元に突き刺さっているという事実を、骨の髄まで痛したに違いなかった。

私は何のためらいもなく通話を切り、すぐさま画面で着信拒否の設定をった。 画面に表示された「着信拒否設定完」の文字は、にわたる精神な呪縛と搾取の連鎖から、私が完全に解き放たれたことを告げる、輝かしい勝利の証であった。

そのからの直接の連絡は完全に途絶えた。 しかし、の噂や共通のを通じて、彼らがどれほど惨な困窮に追い込まれているのかが、自然と私のに入ってきた。

代さんの両親の介護費用はだるま式に膨れがり、額な宅ローンの返済は滞り、贅沢昧を極めていた彼らの計は完全に破綻寸に陥っているという。

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