みかん小説
本棚

"「住所は教えない」と言った息子へ" 第6話

呼びし音が鳴り響く、私は胸元にを当て、く呼吸をえた。に任せて鳴り散らすつもりは毛なかった。極めて静に、しかし歩も引かない毅然とした態度で、事実だけを突きつけるのだ。

話が繋がり、の気のない「もしもし」という声が聞こえた瞬、私は凛とした声で告げた。

。今からの援助は、すべて打ち切ります。活費の補填も、孫の塾代も、今切支払いません」

受話器の向こうで、数秒の完全な沈黙が流れた。 やがて、事態をみ込めない息子のから、驚愕と苛ちが入り混じった甲い声が返ってきた。

「……は? 母さん、体どういうつもりだよ! 急にそんなこと言われても困るんだよ! 俺たちには助けが必なんだ! 代の両親の介護費用だってこれから本格にかかるし、マイホームの宅ローンだって何千万も残ってるんだぞ!」

受話器越しに伝わってくるその必な叫び声を聞きながらも、私のは氷のように静まり返り、わずかも揺らぐことはなかった。私は静かに、言葉を区切るようにして言い放った。

「あなたは、私のことを『づる』だと言ったわね。私はもう、あなたのづるではありません。あなたの勝な都に応じる義務など、私にはどこにもないのよ」

その瞬は図を突かれたのか激昂し、層声を荒らげて受話器に向かって喚き散らした。

広告

「おい、何を言ってるんだ! 母さん! ふざけるなよ!」

しかし、私はその見苦しい声を静に受け止め、これ以聞く価値もないと判断して、に通話終のボタンを押した。

これまでどれほどを削ってねても、息子が変わることは決してなかった。 だからこそ、相が変わることを期待するのではなく、私自が変わり、この歪んだ関係性を断ち切らなければならないのだという確信が、胸の内で確かな形となって固まっていった。

話を切った、私は斎の庫をけ、自分自の正確な資産状況を改めて詳細に確認し始めた。

勤めげた商社から満期で受け取った退職の残り千万円。現役代から無駄遣いをせず、自分自の名義で堅実に貯め続けてきた預貯千万円。そして何より、に先祖代々のの売却益と事業資として夫が私に遺してくれた、約億円もの固な個資産。

これらを元の通帳で算すれば、総額は千万円にも達していた。 それは、今の老活を何自由なく、極めて豊かに、そしてして過ごすために分すぎるほどの巨額の財産であった。

私は通帳を閉じながら、改めて確な事実に気づかされた。 私には最初から、息子やに依してきる必など何つなかったのだ。

広告

経済にも精神にも、私は完全に独したとして、自らのっていたのである。

そのの夜、私は斎のパソコンを静かにげ、産の専ポータルサイトをいた。 画面をスクロールしていくで、ふと私の目を奪った物件があった。それは、都に聳えつ超層タワーマンションの、最階に位置するペントハウスの紹介ページだった。

から井まで広がる巨なパノラマウィンドウから、都の夜景を望できる息を呑むような絶景。贅を尽くしたのフロア、最級の輸入具で統されたラグジュアリーな内装。それはまるで、自らの尊厳を勝ち取った者だけに許された、空ののような空であった。

、私はすぐさま産会社に連絡を入れ、現での内覧へとを運んだ。

コンシェルジュに案内され、最階のな扉をけて部へとを踏み入れた瞬、目のに広がった圧倒景に、私はわずさく息を呑んだ。 遥かに広がる京の並み。どこまでも続く青空と、平線の彼方まで見渡せるその壮な眺望は、これまでの狭苦しい々のでは決してわったことのない、圧倒な解放と力さを私の全に漲らせてくれた。

ガラス窓のすぐそばにち、さく広がるを見ろしながら、私はの底からこう確信した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: