"団地に残された17通" 第8話
黒田は記憶が混乱していたが、介護職員との常会話ので、何度も同じことを話していた。
「森が帳簿を持ってきた。がたから全部なくなって助かった」
内容をそのまま事実として扱うことはできない。しかし警察が質問方法を変えながら何度か聞くと、黒田は災当夜の面を部分に話した。
午9半頃、集会所ので森と会った。
森は赤い防災着を着て、古い帳簿を抱えていた。管理で資料を確認していたが、芳が来たためへたと話したという。
「を使ったか」と聞かれると、黒田は首をかしげた。
「寒いから、森がストーブをつけたと言っていた」
黒田の供述だけで責任は決められない。
しかし酒の記録、気の報告、美代子の記、佐伯の、芳の残した言葉が、同じ帯を指していた。
管理会社は森へ、民説会への席を求めた。
説会の、森は志津を訪ねてきた。
「あなたがを残さなければ、こんなことにはならなかった」
最初の言葉は、謝罪ではなかった。
志津は玄関ので話を聞いた。
「を保管したことは、私の違いです」
「なら、なぜ警察へ渡した」
「管理会社が渡しました」
「昔のことを今さら調べて、誰が救われるんです。芳さんは戻らない。佐伯さんだって別の町で暮らしている」
広告
「だから、黙ったままでいいんですか」
「あなたには分からない」
森は声を荒らげた。
災当、森にはと学の子どもがいた。勤務先では管理職への昇が決まり、宅ローンも残っていた。
自分が管理へ入ったと話せば、仕事も族も団での活も失うとった。
「ストーブを使ったんですか」
志津が聞くと、森は答えなかった。
「私は、あなたを警察へ連れていくではありません。でも、民へ話すかどうかは、あなたが決めることです」
「話したら、許されるといますか」
「許されないといます」
志津は正直に答えた。
森の顔が歪んだ。
「それなら、話すがない」
「許されるために話すなら、ないかもしれません」
志津は扉を閉めた。
森が何を選ぶかは、もう彼自の問題だった。
民説会には、42が集まった。
管理会社、自治会、消防担当者、佐伯も席した。志津は関係者として呼ばれたが、番ろの席へ座った。
消防担当者は、最初に限界を説した。
「15の現は残っておらず、当回収された気部品も保期を終えています。現点で、災原因をたに断定することはできません」
原調査では、佐伯が持ち込んだストーブと延コード付からした能性がいとされた。この技術な判断自体は取り消されない。
広告
ただし、その器具を最に使用した物が佐伯だったという提には、疑問がじている。
消防は《災調査に関する補充説》を作成し、たに判した証言と資料を付記する方針を示した。
刑事責任の追及ではない。
完全な再調査でもない。
15の結論に、別の能性がしたことを記録するだけだった。
森は方の席に座り、説のも俯いていた。
管理会社から発言を求められると、最初は「記憶が曖昧です」と答えた。
酒の帳簿については、配達を受けたあと自宅へ戻った能性がある。美代子の記は顔を確認していない。黒田の記憶も信用できない。
民からい声ががった。
「また逃げるのか」
「佐伯さんは仕事を失ったんだぞ」
森は唇を結んだ。
管理会社のが、気の報告を読みげた。危険な延コードについて、森自が説を受けていた記録である。
佐伯がちがった。
「私は午6にストーブを抜きました。森さん。あなたは7、私が訪ねた、《あの、管理へ入ったのは自分だけではない》と言いましたね」
森は顔をげた。
「そんなことは言っていない」
「だからをきました。誰が入ったのか、っていることを話してほしいと」
佐伯のはに濡れていなかった。警察が複写した便箋には、《あなたが管理へ入ったことを責めるためではありません。
誰がストーブを使ったのか、事実だけを確認したい》とかれていた。
森は7にも、答えなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
面接官の誤算
夢だった大手企業の最終面接。 24歳の小館達郎は、人事の仕事に憧れ、努力を重ねてようやく最終面接までたどり着いた。だが、中央に座っていた人事部長は、彼の学歴や家庭環境を見下し、面接の途中で冷たく言い放つ。 「低学歴の貧乏人は、面接する必要なし。不採用で決まりだな」 母子家庭で育ち、必死に支えてくれた母への思いまで踏みにじられた達郎。悔しさをこらえながらも、彼はその場で言い返さず、静かに会社を後にした。 しかし1か月後、達郎は再び同じ会社へ呼び出される。 案内されたのは、あの日と同じビルの役員会議室。そこには人事部長の佐野、社長、そして達郎のよく知る一人の男が座っていた。 達郎の姿を見た瞬間、佐野の顔色が変わる。 あの日の「不採用」は、ただの終わりではなかった。 一人の応募者を見下した面接官が、会社全体に隠されていた問題を暴き出すきっかけになる――。真実|修羅場1.8萬字5 3 -
完結第10話
清掃員が書いた設計図
倒産寸前の小さな町工場に、1人の若い清掃員がいた。 佐藤ゆい、21歳。学歴は中卒。従業員たちからは名前で呼ばれることもなく、ただ雑用係として扱われていた。 そんなある日、大企業から依頼された精密部品がすべて不良品となり、工場は2000万円の違約金を突きつけられる。誰もが技術不足だと責められ、工場長の竹夫も廃業を覚悟しかけていた。 その時、ずっと黙っていたゆいが静かに口を開く。 「設計が間違っています」 中卒の清掃員が、大企業の研究所の図面に誤りがあると言い出した――。 誰も信じなかったその言葉が、やがて町工場の運命を大きく変えていく。履歴書には書けなかった彼女の本当の力とは。人生逆転|真相1.4萬字5 0 -
完結第18話
四十九日の注文票
夫の四十九日を終えた夜、59歳の円香は、息子夫婦から突然「明日の朝までに店の鍵を渡してほしい」と告げられる。 夫と32年間守ってきた惣菜店《おかず処まどか》。しかし土地と建物は、知らないうちに息子の名義へ移され、すでに再開発のため売却されようとしていた。 悲しみも癒えないまま、住む場所も店も奪われかける円香。さらに夫が管理していた店の預金も、借金返済に使われたと聞かされる。 そんな夜、夫の机の奥から見つかったのは、古い注文票だった。 《弁当120食。毎月第2土曜日。代金は受け取らないこと》 そこに書かれていたのは、円香の知らない女性の名前。 夫はなぜ、妻に黙って無料の弁当を届けていたのか。 なぜ、その女性を「店を失った時に訪ねろ」と書き残したのか。 追い出されたはずの店の裏で、夫が最後まで隠していた過去と、息子夫婦の本当の目的が少しずつ明らかになっていく――。人生逆転|親子関係2.8萬字5 41 -
完結第19話
赤ん坊を背負った応募者
東京・丸の内、大和建設の公開採用面接。 30歳の優人は、1歳の息子を背負い、破れた靴と古い鞄で会場に現れた。 「妻が救急搬送され、子供を預ける場所がありませんでした」 人事部長は彼を追い出そうとする。 その瞬間、鞄から徹夜で描いた設計図が床へ散らばった。 そして偶然通りかかった“鉄の女”と呼ばれる会長・北川文子が、優人の顔を見て凍りつく。 25年前に亡くした夫と、あまりにも似ていたのだ。 さらに翌日の特別面接。 文子は優人の指にある古びた銀の指輪を見て、震える声で尋ねた。 「その指輪……どこで手に入れたの?」 それは25年前、事故現場から消えた“世界に2つしかない指輪”だった――。因果応報|人生逆転2.8萬字5 68 -
完結第13話
判を押さなかった妻
65歳の佳代は、38年間連れ添った夫・修司から突然、離婚届と一枚の写真を差し出される。 写真に写っていたのは、10歳になる男の子。夫が11年前から外で関係を続けていた女性との子どもだった。 「離婚して、残りの人生は好きに生きたい」 そう言いながら修司は、離婚後も佳代に家に残り、食事や洗濯、薬の管理まで続けるよう当然のように求めてくる。 しかし佳代は、すぐには判を押さなかった。 悲しくて離婚できなかったわけではない。夫が隠してきた金の流れ、削られていた義母の施設費、そして“新しい人生”の裏にある都合のいい計画を、すべて明らかにするためだった。 38年間尽くしてきた妻が、最後に守ろうとしたものとは――。人生逆転|夫婦|熟年離婚1.9萬字5 1475 -
完結第10話
「貧乏な主婦は帰れ」と笑った銀行員――直後、支店長が私を見て凍りついた
祖母の遺産整理のため銀行を訪れた美咲は、質素な服装を理由に「底辺の主婦」と見下され、亡き祖母の通帳まで床へ投げ捨てられる。 だが彼女の本当の正体は、世界的巨大ファンドの資金を動かす天才システム開発者だった。 静かにスマホを操作した瞬間、5秒ごとに10億円が銀行から流出し始め――。ミステリー|真実1.5萬字5 719 -
完結第13話
消された母の名前
父の三回忌を終えた夜、53歳の里美は、認知症の兆しがある母・清子から、突然知らない名前で呼ばれる。 「直子、今度こそ逃げないで」 直子とは誰なのか。なぜ母は、娘である自分を妹の名で呼んだのか。 不審に思った里美が戸籍や父の遺した書類を調べ始めると、自分の出生届に残された不自然な訂正、20年以上続いていた謎の送金、そして施設で暮らす一人の女性の存在が浮かび上がる。 母が53年間守り続けたものは、愛だったのか、嘘だったのか。 隠された12通の手紙と、海辺の古い写真が、里美の知らなかった「本当の家族」を少しずつ明らかにしていく――。人生逆転|第二の人生|親子関係2.0萬字5 157 -
完結第13話
「田舎者」と見下した婚約者を実家へ招いたら、態度が一変した
地味で素朴なまゆは、恋人・光希から突然プロポーズされる。 しかし彼と女社長の母は、結婚相手を「家政婦」として値踏みし、田舎育ちのまゆを見下していた。そんな二人を実家へ招待すると、専属運転手、大豪邸、ワインセラー、ヘリポートまで現れ態度が一変。 だが、本当の審査はここからだった――。人生逆転|夫婦1.9萬字5 423 -
完結第10話
「俺の子じゃない」と言った夫へ、99.999%の鑑定結果を見せた日
命懸けで娘を産んだサツキに、夫・慶一が放ったのは「俺の子じゃない。DNA鑑定しろ」という非情な一言。さらに義母と義妹まで押しかけ、浮気女と決めつけ300万円の慰謝料を要求する。 しかしサツキは静かに一枚のDNA鑑定書を差し出した。 親子関係99.999%――そして次に彼女がテーブルへ並べたのは、夫が決して知られたくなかった“大量の写真”だった。 本当に裏切っていたのは、一体誰なのか――。人生逆転|真実1.6萬字5 661