"団地に残された17通" 第1話
「藤本さんには、今末で契約を終していただきます」
青葉台団の集会所でそう告げられた、藤本志津は、自分が呼ばれた理由をようやく理解した。机の向こうには管理会社の担当者・と、自治会の森正、副会の浦美が並んでいた。
志津は61歳だった。13から管理会社のパート従業員として、平の午5から830分まで、6棟ある団の共用廊や階段、ごみ集積所を清掃してきた。
美が透なファイルから3枚のをした。表題は《清掃業務と民のプライバシーに関する望》で、48世帯のうち31世帯の署名が付いていた。
「藤本さんが、ごみ袋のを確認している。郵便受けのにくち、民の郵便物を見ている。勤務にも団へ来て、子どもや齢者のを確認しているという見がています」
「ごみ袋をけたことはありません。袋から瓶が突きしていたや、が散らばったに触れただけです」
志津が説すると、は元の類へ線を落とした。清掃記録にはきな苦も事故もなく、勤務態度は毎《良好》と評価されていた。
郵便受けについても、を掃くためにを通っていただけだった。ただし志津には、契約にないことまでしていた自覚があった。
5号棟にむ82歳の川昭から頼まれ、午7半を過ぎても聞が残っていれば声をかけていた。
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3、川が部で倒れた、聞が2分たまっていることに気づき、管理会社へ連絡したことがきっかけだった。
勤務を終えたあとも、志津は々団へ戻った。自宅が徒歩10分ほどの所にあり、夕方の散歩で団の壇や公園を通るのが習慣になっていたからである。
そこでで遊んでいる子どもや、い買い物袋を持った齢者を見れば、声をかけた。民から謝されることもあったが、自分の活を見られているようで落ち着かないとじるもいた。
「善だったことは分かります。しかし、清掃業務と個な見守りが混ざっています」
は慎に言葉を選んだ。
「先、で勤務の訪問や民への声かけを控えるようお願いしました。それでも3号棟のお子さんへ、庭のことを尋ねたというしい苦がありました」
2週、志津は夕方6を過ぎても公園に残っていた学5の浦凛に声をかけた。凛は母親と喧嘩をし、部へ帰りたくないと話した。
志津は美へ話したが、つながらなかった。凛が3号棟へ戻るまで、しれたベンチで待っていた。
「暗くなってもだったので、放っておけませんでした」
「学か警察へ連絡すべきでした」
美の声は静だった。
「娘は、庭の事を聞かれて怖かったと言っています。
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藤本さんに悪がなくても、親のらないところで子どもへ接触するのは困ります」
志津には反論したいことがあった。しかし凛本が怖かったと言ったのなら、自分の善だけを正しいとは言い切れなかった。
「今、勤務には団へ入りません。それでも契約を切るのですか」
は答えるに、森を見た。森は自治会を10以務めてきたが、志津と目をわせようとしなかった。
「今回の契約は度末までです。会社としては、次度の更をわないと判断しました」
解雇ではなく、雇用契約の更止だった。志津は1ごとの期契約を13回更していたが、次の契約を約束する面はない。
それでも、く更されてきた仕事が、分な聞き取りもないまま終わることには納得できなかった。
「署名した31世帯は、私を辞めさせてほしいといたのですか」
「望は、勤務内容を見直してほしいというものです」
美が答えた。
「では、なぜ契約終の根拠になるんですか」
「民のがきいことを示しています」
31世帯が何を説され、どの質問に署名したのか、志津にはらされなかった。署名者の名も個報を理由に見せてもらえなかった。
から渡された《雇用契約終のおらせ》には、《民との信頼関係を維持することが困難になったため》とだけかれていた。
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