"四十九日の注文票" 第4話
しかし直、千鶴の娘がい病気になった。
県の病院へ期入院することになり、千鶴はをれざるを得なかった。夫はを守ると約束し、借用をくと言ったが、夫の父親が反対した。
「婚した女と緒にをやるなんて、世体が悪い。はで返すから、もう関わるなと言われました」
千鶴は娘の治療を優先し、正式な契約を結ばないまま町をれた。
数に戻った、《おかず処まどか》は商で気のになっていた。夫の隣には、結婚したばかりの私がっていた。
「待ってください。私は、何もりませんでした」
「分かっています」
「名も、夫が私の名からつけたと……」
私の声が震えた。
結婚した頃、私はセンターで調理員をしていた。夫に頼まれて仕事を辞め、したばかりの惣菜を伝うようになった。
夫は「おの料理で町のをばせたい」と言い、私の名をにつけた。
その言葉を私は32、夫婦の始まりとして信じてきた。
「まどかは、もともと娘の名です」
千鶴が言った。
部の音がくなった。
千鶴の娘も、円という名だった。漢字まで同じだった。
「娘は、病院でくなりました。11歳でした」
私は子の背にもたれた。
夫は私をして名をつけたのではない。先にくなった女の名があり、偶然同じ名を持つ私が現れた。
広告
自分の結婚活そのものが、誰かの代わりから始まったようにえた。
「夫と、そういう関係だったんですか」
聞くべきではないといながら、言葉がた。
千鶴は否定しなかった。
「結婚の約束はしていません。でも、互いに特別な気持ちはありました。私が町をれたあと、雄さんから何度かが来ました。娘を失っていた私は、すべて返しました」
夫と私がりったのは、その翌だった。
私には両親がおらず、24歳まで叔母夫婦ので暮らしていた。センターの契約が切れそうになった、配達に来ていた夫からを伝わないかと誘われた。
料理ができ、寄りがく、名が円だった私。
それだけが理由ではないと信じたかった。
「雄さんは、あなたを利用したわけではありません」
千鶴は私の考えを読んだように言った。
「最初に名を聞いた、驚いたとは言っていました。でも、あなたの卵焼きをべて、このとをやりたいとったそうです」
「本から聞きたかったです」
「そうですね」
慰められるほど、苦しくなった。
夫は千鶴へ600万円を返そうとしたが、の経営とのローンで余裕がなかった。それでも毎5万円から10万円を、千鶴が運営する堂へ寄付する形で返済していた。
5から額が急に増えたのは、莉奈の過をったことがきっかけだった。
広告
「莉奈さんに、昔ここへ来ていたことを息子さんへられたくないと頼まれたそうです。その代わりに何かを求めたわけではありません。雄さんは、昔助けられなかった子どもたちを、今度こそ守りたいと言っていました」
私は通帳の写しを確認した。
夫が管理していたの預1,200万円のうち、800万円が《般社団法ひだまり》へ送されている。拓也が借の返済に使ったと言っていた額と同じだった。
「これは借ではないんですね」
「違います。雄さんから預かっているおです」
夫はくなる3か、千鶴へ800万円を送した。しかし寄付ではなく、預かりとして契約を作っていた。
返還を求められるのは、私だけ。
夫がくなったあと、拓也が座を管理しても、このにはをせないようにしていた。
「どうして、直接私に残さなかったんでしょう」
「拓也さんがを売ろうとしていることに、気づいていたからです」
夫は入院、偶然拓也と産会社の会話を聞いた。
息子が自分のにを売るつもりだとったが、すでに贈与の類へ署名したあとだった。夫は「族のために資産を理する」という拓也の説を信じ、を続ける権利は私に残すというも受け取っていた。
そのが、夫のに見当たらなくなった。
「拓也が捨てたということですか」
「分かりません。ただ、雄さんは最まで息子さんを疑い切れなかったのでしょう」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
「もう戻るな」と言った息子へ
嫁・沙耶の涙を信じた息子に「性格の悪い母親」と罵られ、家を追い出された68歳の良子。さらに町中へ“嫁いびり”の噂まで広められてしまう。 だが、親友が録音した証拠から、すべては家と財産を奪うための罠だったと判明。しかも良子には、亡き夫が遺した5億円の土地があった。真実を知った息子夫婦が青ざめた時、母の人生は大逆転する――。親子関係|金銭問題1.7萬字5 0 -
完結第19話
4時20分で止まった遺品
八年間、仕事を辞めて父を介護した浩司。だが遺産の大半は、何もしなかった兄夫婦へ。浩司に残されたのは、ボロ倉庫と古びた腕時計だけだった。 家まで追い出され、嘲笑される中、浩司は倉庫の壁に隠された鉄扉を発見する。時計が示す暗号で金庫を開けた瞬間、父が二十年間守り抜いた百億円超の秘密と、最後の愛が明かされる――。親子関係|金銭問題2.9萬字5 0 -
完結第13話
不在着信93件の朝
息子夫婦の豪邸ローンを、5年間毎月24万円も肩代わりしてきたみつ子と正人。だが返ってきたのは感謝ではなく、「黙って金だけ払え」という侮辱だった。 ついに二人は支援を完全停止。翌朝、スマホには93件もの着信が――。親をATM扱いした息子夫婦に、想像もしなかった代償が襲いかかる。夫婦|親子関係2.0萬字5 7 -
完結第12話
団地に残された17通
毎朝5時、誰よりも早く団地へ来て、廊下も階段もごみ集積所も黙って掃除してきた61歳の藤本志津江。 13年間続けてきた仕事は、ある日突然、31世帯の署名によって終わりを告げられる。理由は「住民の生活をのぞいている」「勤務時間外に声をかけすぎる」というものだった。 志津江は反論しながらも、自分の善意が誰かにとっては重荷になっていたことを知る。 そして契約終了が決まった直後、清掃用具庫から見つかったのは、長年誰にも届かなかった17通の手紙だった。 その中には、15年前に団地で起きた火災と、当時責任を負わされた元管理人、そして亡くなった女性が残したはずの言葉が含まれていた。 志津江は本当に住民を見張っていたのか。 17通の手紙は、なぜ用具庫に残されていたのか。 そして、団地が長年隠してきた火災の真相とは――。因果応報|人生逆転|真実1.8萬字5 15 -
完結第19話
赤ん坊を背負った応募者
東京・丸の内、大和建設の公開採用面接。 30歳の優人は、1歳の息子を背負い、破れた靴と古い鞄で会場に現れた。 「妻が救急搬送され、子供を預ける場所がありませんでした」 人事部長は彼を追い出そうとする。 その瞬間、鞄から徹夜で描いた設計図が床へ散らばった。 そして偶然通りかかった“鉄の女”と呼ばれる会長・北川文子が、優人の顔を見て凍りつく。 25年前に亡くした夫と、あまりにも似ていたのだ。 さらに翌日の特別面接。 文子は優人の指にある古びた銀の指輪を見て、震える声で尋ねた。 「その指輪……どこで手に入れたの?」 それは25年前、事故現場から消えた“世界に2つしかない指輪”だった――。因果応報|人生逆転2.8萬字5 58 -
完結第13話
判を押さなかった妻
65歳の佳代は、38年間連れ添った夫・修司から突然、離婚届と一枚の写真を差し出される。 写真に写っていたのは、10歳になる男の子。夫が11年前から外で関係を続けていた女性との子どもだった。 「離婚して、残りの人生は好きに生きたい」 そう言いながら修司は、離婚後も佳代に家に残り、食事や洗濯、薬の管理まで続けるよう当然のように求めてくる。 しかし佳代は、すぐには判を押さなかった。 悲しくて離婚できなかったわけではない。夫が隠してきた金の流れ、削られていた義母の施設費、そして“新しい人生”の裏にある都合のいい計画を、すべて明らかにするためだった。 38年間尽くしてきた妻が、最後に守ろうとしたものとは――。人生逆転|夫婦|熟年離婚1.9萬字5 1460 -
完結第13話
消された母の名前
父の三回忌を終えた夜、53歳の里美は、認知症の兆しがある母・清子から、突然知らない名前で呼ばれる。 「直子、今度こそ逃げないで」 直子とは誰なのか。なぜ母は、娘である自分を妹の名で呼んだのか。 不審に思った里美が戸籍や父の遺した書類を調べ始めると、自分の出生届に残された不自然な訂正、20年以上続いていた謎の送金、そして施設で暮らす一人の女性の存在が浮かび上がる。 母が53年間守り続けたものは、愛だったのか、嘘だったのか。 隠された12通の手紙と、海辺の古い写真が、里美の知らなかった「本当の家族」を少しずつ明らかにしていく――。人生逆転|第二の人生|親子関係2.0萬字5 155 -
完結第13話
「田舎者」と見下した婚約者を実家へ招いたら、態度が一変した
地味で素朴なまゆは、恋人・光希から突然プロポーズされる。 しかし彼と女社長の母は、結婚相手を「家政婦」として値踏みし、田舎育ちのまゆを見下していた。そんな二人を実家へ招待すると、専属運転手、大豪邸、ワインセラー、ヘリポートまで現れ態度が一変。 だが、本当の審査はここからだった――。人生逆転|夫婦1.9萬字5 421 -
完結第10話
「俺の子じゃない」と言った夫へ、99.999%の鑑定結果を見せた日
命懸けで娘を産んだサツキに、夫・慶一が放ったのは「俺の子じゃない。DNA鑑定しろ」という非情な一言。さらに義母と義妹まで押しかけ、浮気女と決めつけ300万円の慰謝料を要求する。 しかしサツキは静かに一枚のDNA鑑定書を差し出した。 親子関係99.999%――そして次に彼女がテーブルへ並べたのは、夫が決して知られたくなかった“大量の写真”だった。 本当に裏切っていたのは、一体誰なのか――。人生逆転|真実1.6萬字5 618