"四十九日の注文票" 第2話
黒写真ので、夫の雄はいつものように元だけで笑っている。
「あなたは、何をしたの」
返事の代わりに、くなった線のが落ちた。
夫をくしたしみよりも、夫に何かを隠されていたことへの怖さが膨らんでいった。私は32、同じ厨にち、同じで眠り、同じ息子を育ててきた。
それなのに、夫が最に何を守ろうとしたのか、何つらなかった。
その夜、帳簿を探すために夫の机をけた。
引きしの奥には何もなかったが、底板がわずかに浮いていた。持ちげると、古い注文票が1枚と、さな鍵がてきた。
注文票には、5の付がかれていた。
《弁当120。毎第2曜。代は受け取らないこと》
届け先の欄には、《ひだまり子ども堂 榊原千鶴》とあった。
私はその名をらなかった。
から毎120もの弁当がていたなら、らないはずがない。それでも記憶にはなく、帳簿にもそんな売は載っていなかった。
注文票の裏には、夫の字でい言葉が残されていた。
《を失ったは、このを訪ねろ。円には、まだ言えない》
円とは、私の名だった。
夫がぬまで私に言えなかったことを、見らぬ女性には伝えていた。
私は注文票を握ったまま、もできずに朝を迎えた。
翌朝、産会社の担当者がへ来た。
30代ほどの男性で、名刺には《都都発 事業推部 島俊介》とかれていた。
広告
拓也と莉奈も同席し、島は私へくをげたあと、すでに決まった予定を確認するように説を始めた。
「解体の調査がありますので、来末までにお荷物を運びしていただければといます」
「私は、売却に同していません」
そう伝えると、島は拓也を見た。
「建物の所者である息子さんからは、居されているお母さまにもご解いただいていると伺いました」
「昨、初めて聞きました」
島の表が変わった。
拓也は慌ててを挟んだ。
「母さん、昨ちゃんと説しただろう。になってるだけなんです」
「説されたことと、同したことは違います」
私が言うと、莉奈がため息をついた。
「お義母さん、ここで揉めたら違約がかかるんですよ。拓也さんだけでなく、私たちの子どもの活にも響するんです」
学の孫娘、結のことを持ちされると、私は言葉に詰まった。
拓也は昔から、私が孫にいことをっている。運会や誕には必ず顔をし、部活の征費がりないと聞けば、の売からこっそり渡したこともあった。
それを利用されていると分かっても、結に罪はなかった。
私は、そのでは退類に署名しなかった。
「夫の座と借の記録を、先に見せてください。それを確認するまで何も決めません」
広告
島は無理に署名を求めず、調査程を延期すると言った。ところが拓也は担当者を見送ったあと、私を厨へ連れていった。
「何がしたいんだよ。父さんが残した借を、俺が理してやったんだぞ」
「誰から、いくら借りたの?」
「の運転資で800万円。父さんのりいからだよ」
「そんな借があるなら、私はっているはずでしょう」
夫と私は、仕入れや費について毎話しっていた。経理を担当していたのは夫だったが、きな支があれば必ず伝えてくれた。
なくとも、私にはそう見えていた。
「父さんが母さんに配をかけたくなかったんだろ」
拓也は、説に困るたびに同じ言葉を使った。
そのの午、私はを閉め、注文票にかれた所を訪ねた。
《ひだまり子ども堂》は、で40分ほどれた町の古い公民館でかれていた。曜ではなかったため入は閉まっていたが、掲示板には次回催をらせるが貼られていた。
代表者の名は、確かに榊原千鶴だった。
掲示板にかれた番号へ話すると、1ほどで60代半の女性がやって来た。く切った髪に紺のエプロンを着け、私の顔を見るなりを止めた。
「雄さんの奥さんですか」
なぜ分かったのかと尋ねると、千鶴は困ったように笑った。
「写真を見せてもらったことがあります。
ご主から、奥さんは自分より料理がうまいと何度も聞きました」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
「もう戻るな」と言った息子へ
嫁・沙耶の涙を信じた息子に「性格の悪い母親」と罵られ、家を追い出された68歳の良子。さらに町中へ“嫁いびり”の噂まで広められてしまう。 だが、親友が録音した証拠から、すべては家と財産を奪うための罠だったと判明。しかも良子には、亡き夫が遺した5億円の土地があった。真実を知った息子夫婦が青ざめた時、母の人生は大逆転する――。親子関係|金銭問題1.7萬字5 0 -
完結第19話
4時20分で止まった遺品
八年間、仕事を辞めて父を介護した浩司。だが遺産の大半は、何もしなかった兄夫婦へ。浩司に残されたのは、ボロ倉庫と古びた腕時計だけだった。 家まで追い出され、嘲笑される中、浩司は倉庫の壁に隠された鉄扉を発見する。時計が示す暗号で金庫を開けた瞬間、父が二十年間守り抜いた百億円超の秘密と、最後の愛が明かされる――。親子関係|金銭問題2.9萬字5 0 -
完結第13話
不在着信93件の朝
息子夫婦の豪邸ローンを、5年間毎月24万円も肩代わりしてきたみつ子と正人。だが返ってきたのは感謝ではなく、「黙って金だけ払え」という侮辱だった。 ついに二人は支援を完全停止。翌朝、スマホには93件もの着信が――。親をATM扱いした息子夫婦に、想像もしなかった代償が襲いかかる。夫婦|親子関係2.0萬字5 7 -
完結第12話
団地に残された17通
毎朝5時、誰よりも早く団地へ来て、廊下も階段もごみ集積所も黙って掃除してきた61歳の藤本志津江。 13年間続けてきた仕事は、ある日突然、31世帯の署名によって終わりを告げられる。理由は「住民の生活をのぞいている」「勤務時間外に声をかけすぎる」というものだった。 志津江は反論しながらも、自分の善意が誰かにとっては重荷になっていたことを知る。 そして契約終了が決まった直後、清掃用具庫から見つかったのは、長年誰にも届かなかった17通の手紙だった。 その中には、15年前に団地で起きた火災と、当時責任を負わされた元管理人、そして亡くなった女性が残したはずの言葉が含まれていた。 志津江は本当に住民を見張っていたのか。 17通の手紙は、なぜ用具庫に残されていたのか。 そして、団地が長年隠してきた火災の真相とは――。因果応報|人生逆転|真実1.8萬字5 20 -
完結第19話
赤ん坊を背負った応募者
東京・丸の内、大和建設の公開採用面接。 30歳の優人は、1歳の息子を背負い、破れた靴と古い鞄で会場に現れた。 「妻が救急搬送され、子供を預ける場所がありませんでした」 人事部長は彼を追い出そうとする。 その瞬間、鞄から徹夜で描いた設計図が床へ散らばった。 そして偶然通りかかった“鉄の女”と呼ばれる会長・北川文子が、優人の顔を見て凍りつく。 25年前に亡くした夫と、あまりにも似ていたのだ。 さらに翌日の特別面接。 文子は優人の指にある古びた銀の指輪を見て、震える声で尋ねた。 「その指輪……どこで手に入れたの?」 それは25年前、事故現場から消えた“世界に2つしかない指輪”だった――。因果応報|人生逆転2.8萬字5 61 -
完結第13話
判を押さなかった妻
65歳の佳代は、38年間連れ添った夫・修司から突然、離婚届と一枚の写真を差し出される。 写真に写っていたのは、10歳になる男の子。夫が11年前から外で関係を続けていた女性との子どもだった。 「離婚して、残りの人生は好きに生きたい」 そう言いながら修司は、離婚後も佳代に家に残り、食事や洗濯、薬の管理まで続けるよう当然のように求めてくる。 しかし佳代は、すぐには判を押さなかった。 悲しくて離婚できなかったわけではない。夫が隠してきた金の流れ、削られていた義母の施設費、そして“新しい人生”の裏にある都合のいい計画を、すべて明らかにするためだった。 38年間尽くしてきた妻が、最後に守ろうとしたものとは――。人生逆転|夫婦|熟年離婚1.9萬字5 1461 -
完結第13話
消された母の名前
父の三回忌を終えた夜、53歳の里美は、認知症の兆しがある母・清子から、突然知らない名前で呼ばれる。 「直子、今度こそ逃げないで」 直子とは誰なのか。なぜ母は、娘である自分を妹の名で呼んだのか。 不審に思った里美が戸籍や父の遺した書類を調べ始めると、自分の出生届に残された不自然な訂正、20年以上続いていた謎の送金、そして施設で暮らす一人の女性の存在が浮かび上がる。 母が53年間守り続けたものは、愛だったのか、嘘だったのか。 隠された12通の手紙と、海辺の古い写真が、里美の知らなかった「本当の家族」を少しずつ明らかにしていく――。人生逆転|第二の人生|親子関係2.0萬字5 155 -
完結第13話
「田舎者」と見下した婚約者を実家へ招いたら、態度が一変した
地味で素朴なまゆは、恋人・光希から突然プロポーズされる。 しかし彼と女社長の母は、結婚相手を「家政婦」として値踏みし、田舎育ちのまゆを見下していた。そんな二人を実家へ招待すると、専属運転手、大豪邸、ワインセラー、ヘリポートまで現れ態度が一変。 だが、本当の審査はここからだった――。人生逆転|夫婦1.9萬字5 421 -
完結第10話
「俺の子じゃない」と言った夫へ、99.999%の鑑定結果を見せた日
命懸けで娘を産んだサツキに、夫・慶一が放ったのは「俺の子じゃない。DNA鑑定しろ」という非情な一言。さらに義母と義妹まで押しかけ、浮気女と決めつけ300万円の慰謝料を要求する。 しかしサツキは静かに一枚のDNA鑑定書を差し出した。 親子関係99.999%――そして次に彼女がテーブルへ並べたのは、夫が決して知られたくなかった“大量の写真”だった。 本当に裏切っていたのは、一体誰なのか――。人生逆転|真実1.6萬字5 620