みかん小説
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"赤ん坊を背負った応募者" 第7話

無骨な鉛の線で、気丁寧に描かれたアナログの設計図であった。

所々消しゴムで消した跡がある。

図面の端には徹夜したかのように、コーヒーのシミが広がっていた。

しかし、その無骨な線が描く内容は決して無骨ではなかった。

図面を見ていた文子の目が、次第にきくなっていった。

建物の構造は、が自然に通り抜けるに設計されていた。

激しいを防ぎながらも、には涼しいが建物のを通り抜けるように繊細に計算された構造であった。

そして建物の1階正面には、誰でも入ってきて座って休める広い縁側が描かれていた。

が自然に通り、縁側があってに疲れた々が入ってきて楽に休める館。

文子の両が、図面ので止まった。

指がブルブルと震え始めた。

この哲学を、文子はっていた。

あまりにもよくっていたのである。

昔、夫と緒に建築学だった頃のことだ。

並んでうつ伏せになり、未来を見てな鉛で図面を描いていたあの夜。

世界で々もして休める、温かくて頑丈なを建てよう。

2が交わした、2だけの切な設計哲学であった。

そのの図面を、どの学でもどの教科でも学ぶことのできない2だけの哲学を。

今、目のの30歳の青がそのまま描きしていたのである。

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文子は両を覆った。

指のから、押し殺したうめき声が漏れた。

臓が狂ったように鼓した。

文子は机のの内線話を乱暴にに取った。

ボタンを押す指先に力が入った。

文子が先にいた。

「伊藤

文子は指示をした。

「すぐにあの青に連絡を取って、の午9、会主催の特別2次面接を設定しなさい」

文子はさらに付け加えた。

「赤ん坊同伴も許すると伝えなさい」

受話器の向こうで、伊藤がしばらく言葉を失ったような沈黙が流れた。

が自ら面接を主催するなど、建設の歴史例のないことだったからである。

しかし、伊藤は追加の質問をすることなく答えた。

「承いたしました」

文子は話を切った。

そして、再び図面を広げた。

無骨な鉛の線に沿って、指先がゆっくりといた。

まるで夫のに触れるかのように、慎で切実なつきであった。

方、建設本社をにした優取りは、鉛をぶらげたようにいものであった。

川文子会が図面を受け取ってくれたとはいえ、は拭えない。

面接会に赤ん坊を背負って乱入し、騒ぎを起こした応募者を誰が採用してくれるだろうか。

規則違反で警備員まで呼ばれたのである。

どう考えても、チャンスは潰えたも同然であった。

むごとに、自責のに胸を締め付けられた。

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あの貴な図面を、ただで渡してしまったようなものであった。

おんぶ紐のが、お腹が空いたのかぐずり始めた。

さな拳で、優の背を叩く。

泣きしそうな息子の背を撫でながら、優くうなだれたまま病院へと向かった。

のポケットのには、バス代もギリギリの銭が数枚あるだけであった。

ミルクを買わなければならない。

おむつも切れている。

そのに、妻の滞納した治療費がある。

は借でいっぱいであった。

目のが真っ暗であった。

病院の集治療に着いた優は、ガラス窓の向こうを眺めた。

たい械がぎっしりと取り囲むベッドのに、妻がいる。

い顔をして、かろうじて息をしている妻、美咲の姿が見えた。

には、酸素チューブが繋がれている。

腕に刺さった点滴の管が、しげに揺れていた。

定な拍モニターのピッという音だけが、ガラス窓の向こうから微かに聞こえてきた。

はガラス窓に額をく押し付けた。

そして、声もなくすすり泣いた。

で語りかけた。

「美咲、ごめん」

は涙を流した。

「俺が甲斐ないばかりに、面接のチャンスも掴めず、図面を置いてきてしまった」

ガラス窓にい息がかかる。

涙が顎を伝って、ポタポタと落ちた。

ガラスの向こうの妻は、その鳴き声を聞くことはなかった。

聞けるはずがなかった。

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