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"赤ん坊を背負った応募者" 第6話

あの頑固な目つきである。

当な扱いを受けても決してげなかった、あの力差し。

ゴツゴツしたで図面を抱きしめ、膝をつきながらも折れなかったあの気骨。

それは違いなく、き夫の顔であった。

文子の目のに、25の記憶が激しい波のように押し寄せてきた。

いくら押し返しても、いくら壁を築いても、止めることのできない記憶であった。

25、文子が31歳だったのことだ。

建設のである建設は、すでに業界で注目される堅建設会社として急成していた。

文子は昼夜を問わず受注を取りにっていた。

夫は才能あふれる首席建築として、会社の設計を統括していた。

息子の勇気は、まだ5歳になったばかりの無邪気な子供であった。

会社がきくなるにつれて、忙しい々が続いた。

しかし退社に、族3卓を囲む夕があった。

それだけは、世界で番温かいであった。

そののことである。

夫は5歳の息子の勇気を連れて、夫の実に向かった。

文子は締め切りのプロジェクトのため、京に残らなければならなかった。

夫は話の向こうで笑いながら言った。

配するな」

夫の優しい声がに残っている。

「勇気を連れて無事にってくるよ。君は仕事を終えたらゆっくり休んで」

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それが夫の最の声であった。

その夜、豪った。

空が裂けるような鳴と稲妻が、を揺るがした。

夫が運転していた乗用が、の急カーブでガードレールを突き破った。

そして、崖のへ転落したのである。

警察から文子に話があったのは、夜を過ぎた頃であった。

「佐藤さんのご族の方ですか?」

警察の声は淡であった。

「今すぐ来てください。事故です」

その言で、文子の世界は崩れ落ちた。

文子はに打たれながら、事故現へと駆けつけた。

崖の沼のに、無残にひしゃげたが発見された。

そので、夫はすでにたくなっていた。

夫は全血まみれであった。

しかし、夫の両腕は部座席に向かって伸びていた。

の瞬まで、子供をかばおうとしていたのである。

しかし、部座席に座っているはずの5歳の息子、勇気は内のどこにもいなかった。

チャイルドシートがへこんだまま、空っぽになっていた。

すぐに救助隊が投入された。

崖のの渓と急流を、何も昼夜を問わず捜索した。

ヘリコプターまで員された。

しかし、息子の痕跡はどこにも見つからなかった。

警察は事故の衝撃でに投げされたと推定した。

そして、子供が増した急流に流されたのだろうと結論づけた。

遺体もないまま、空の棺で葬儀を執りわなければならなかった。

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夫の棺の隣に置かれた、息子のさな空の棺。

文子はそのでひざまずき、嗚咽した。

い菊のに流れ落ちる涙が、乾くはなかった。

そしてその、夫の遺体を収容する際、文子はもうつの衝撃に直面しなければならなかった。

夫のの薬指が空っぽだったのである。

結婚するに、世界に2つだけ特注した指輪があった。

縁に沿って独特のギザギザ模様が精巧に彫られた、のペアリングである。

2だけの永の約束が刻まれたその指輪が、夫の指から跡形もなく消えていた。

文子は事故現を何回も探し回り、指輪を探した。

沼を掘り返した。

急流が過ぎった底を、で探った。

膝がすりむけるほど、いずり回った。

しかし、ついに見つからなかった。

警察は、転落事故のきな衝撃で失われたのだろうと事件を終結させた。

文子はその説を受け入れるしかなかった。

しかし胸の片隅では、何か解けない結び目が固く締め付けられていた。

息子も指輪も、何の痕跡もなく消えてしまったことがどうしても納得できなかったのである。

文子は窓から線をした。

文子はで涙を拭うと、机に戻った。

机のには、優が置いていった図面が置かれていた。

文子は子に座り、震えるで図面を1枚1枚広げ始めた。

の応募者たちが持ってくる洗練されたコンピューターグラフィックスの図面とは全く違った。

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