みかん小説
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"0円の注文帳" 第11話

彩の表し沈んだ。

直子は続けた。

「でも、それは私の怖さでしょう」

娘が顔をげた。

「私が怖いから、あなたにやめろって言うのは違う。30、うちの族がそれをやったから」

が静かになった。

直子は母の通帳をバッグへ入れた。

128万4,600円。

瞬だけ。

このを彩へ渡せばいいのではないかとった。

の初期費用に使わせればいい。

母が自分へ返したを。

孫のに繋げれば。

話としては綺麗かもしれない。

けれど。

直子はやめた。

それを決めるのも。

また違う。

このは。

母が直子へ返しただ。

彩のかすためのではない。

「彩」

「何?」

「今は決めなくていいんじゃない」

直子は言った。

「航平君とも、もう回ちゃんと話して。それでもでやりたいなら、そのまた聞く」

「反対しない?」

「反対するかもしれないよ」

彩がし笑った。

「するんだ」

「母親だからね。でも、反対したからって決めるのは私じゃない」

彩はしばらく母を見ていた。

やがて、

「分かった」

と答えた。

637分。

直子は最気を消した。

母が43っていた厨が暗くなる。

彩とて、シャッターをゆっくりろした。

まで閉じる直

直子はをもう度見た。

母を許せたか。

そう聞かれたら。

まだ分からない。

でも。

もうつだけ分かったことがある。

母のを理解するために。

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母を正しいにする必はなかった。

違えた母のままで。

好きになってもいい。

腹をてたままでも。

懐かしくっていい。

シャッターが完全に閉じた。

褪せた「こもれび弁当」の文字が、最に直子の目のさへりてきた。

「お母さん」

隣にいた彩が振り返る。

「何?」

直子はシャッターを見たまま、さく言った。

「何でもない」

そのは。

母へ言わなくてもいいことがあるのだと。

初めてえた。

を閉めてから4ヶ、直子は55歳で再び学になった。

京にある調理専が社会向けにいている半の夜講座だった。週に2回、仕事を午3がり、横浜からへ乗って包丁技術や、惣菜の商品発について学ぶ。

若い学ばかりではなかった。

40代で介護施設の厨へ転職したい女性。

に蕎麦きたいという62歳の男性。

子育てを終えて菓子作りを学び直している58歳の女性。

の教齢を見回した、直子はし笑った。

20歳の自分が像していた「京の調理学」とは、ずいぶん違う。

それでも。

に袖を通した瞬

胸の奥に、説しにくいものが込みげた。

30

度閉じた扉。

本当は。

同じ扉をけ直す必はなかった。

別の入から入ればよかったのだ。

母が返した128万4,600円は、すべて学費へ使ったわけではない。

講座代と具代だけをそこからした。

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残りはそのまま座へ残した。

何に使うか。

まだ決めていない。

母が最に、

《あなたが決めて》

と返してくれたものを。

急いで使う必はないとった。

ある

講座を終えて駅へ向かっていると、彩から話が来た。

「お母さん、今丈夫?」

「授業終わったところ」

「包丁で指切ってない?」

「子どもじゃないんだから」

「この切ったって言ってたじゃん」

直子は笑った。

母娘の会話は、以よりしだけ増えていた。

何でも話す親子になったわけではない。

見がぶつかることもある。

むしろ。

直子が彩の話を最まで聞こうとするようになってから、以ならみ込んでいた本音まで娘がにするようになったため、喧嘩は増えたかもしれない。

「それで何?」

直子が尋ねる。

話の向こうで、彩がし息を吐いた。

「航平、くことにした」

直子は歩く速度を落とした。

「そう」

「うん」

は?」

「結婚、回やめる」

その声は落ち着いていた。

泣いている様子はない。

だが。

簡単に決めたわけではないことは分かった。

航平は阪でしい部署を任されることになった。

彩は京でを続けたい。

どちらかがを諦めれば緒にいられる。

で何度も話した結果。

今は。

どちらも諦めないことにした。

「別れるわけじゃないんだけどね」

?」

応。でも、続くかどうかは分からない」

直子は瞬。

言いたくなった。

29歳なのに。

結婚を延ばして丈夫なの。

そんな定なことで。

く付きった相を失って悔しないの。

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