みかん小説
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"0円の注文帳" 第7話

失敗してほしくないから。

彩ががった。

「やっぱり言わなきゃよかった」

「彩」

「おばあちゃんには話せたのに」

直子は顔をげた。

「どういうこと?」

彩はしまったという顔をした。

「おばあちゃんに何を話してたの?」

彩は学4の頃、就職活がうまくいかず、に乗ると息苦しくなる期があった。

直子はらなかった。

「どうして言わなかったの?」

「お母さんに言ったら、『休んだら余計戻れなくなる』って言われるとったから」

否定できなかった。

彩は誰にも言わず、若葉台の祖母のへ通っていた。

枝は詳しく聞かなかった。

の奥へ座らせ。

噌汁をした。

「おばあちゃん、何て言ったとう?」

直子は首を振った。

「『辞めても続けてもどっちでもいい。ただ、怖くて仕方ないの答えを決めなくていい』って」

直子は黙った。

母は。

孫には来ていた。

を勝に決めず。

待つことが。

「ずるいね」

直子はさく言った。

「何が?」

「私には来なかったくせに」

彩は答えなかった。

その夜。

直子は母を許さなくてもいいのだと、初めてった。

母にも事があった。

怖かった。

苦しかった。

それでも。

直子のを勝に決めた。

その事実は消えない。

理解することと。

許すことは。

同じではなかった。

直子は再び若葉台へ戻った。

を完全に空にする、注文帳だけは捨てずに残そうとっていた。

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平成3の帳面を閉じようとした

何気なく翌の113を見た。

そこに。

奇妙な記録があった。

《直子 1 0円》

直子は眉を寄せた。

そのの113

直子はもうにいなかった。

結婚だったが、横浜で働き始めていた。

同じ

《直子 1 0円》

さらに翌

同じ。

直子はで帳面をめくった。

母は毎113になると、

《直子 1 0円》

いている。

20

「何これ……」

へ来た隆子に聞くと、彼女はし笑った。

「まだ続けてたんだ」

ってるの?」

「毎、直子ちゃんの好きだった弁当をつ作ってた」

「私、ここにいないのに?」

「だから誰かにあげるんだよ」

そのがない客。

暮らしの老

帰りの子ども。

誰も来なければ、自分でべた。

「何のがあるの?」

隆子は肩をすくめた。

「本に聞けばよかったね」

直子は注文帳を見る。

《直子 0円》

自分のための弁当。

でも。

自分には届かない。

母らしいとった。

言えばいいのに。

謝ればいいのに。

会いに来ればいいのに。

全部来ず。

代わりに弁当を作る。

「本当に馬鹿」

直子は呟いた。

隆子も、

「うん」

と言った。

そのの夕方。

シャッターを半分閉めかけたところへ、の女性が駆け込んできた。

40代半ば。

「すみません、ここ、こもれび弁当ですよね」

直子が母はくなったと伝えると、女性はそのげた。

野美咲といいます」

直子は名を聞いてすぐ分かった。

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6号棟504号

あの夜。

母が連れした久美子の9歳の娘だった。

44歳。

美咲は千葉で介護施設の栄養士をしていた。

母・久美子は8に病気でくなったという。

「母から、このの話を何度も聞きました」

あの夜。

母と弟は震えていた。

子どもだった美咲には、なぜ夜るのか理解できなかった。

ただ。

枝が唐揚げ弁当を渡し、

「今はちょっと

と言ったことだけ覚えている。

「私、本当にだとったんです」

美咲は笑った。

「弟なんて、んでました」

保護先へ着いたあと。

久美子は何もべられなかった。

美咲と弟だけが弁当をべた。

「母はで言ってました。あの弁当がなかったら、子どもを連れて逃げる勇気が途でなくなってたかもしれないって」

直子は母のことを聞きながら、複雑な気持ちになった。

美咲にとって枝は。

を救っただった。

直子にとっては。

つの扉を閉じただった。

同じ

どちらも本当だった。

「母は完璧なじゃなかったですよ」

直子が言うと、美咲は驚いた。

「私はずっと、そういうだとってました」

「違います」

直子はし笑った。

のことは助けるのに、自分の族のことになると、すごくだった」

美咲も笑った。

「そういう、いますね」

帰り際。

美咲は5万円の入った封筒をした。

「母から預かってました。

枝さんに返してほしいって」

久美子は活をて直した、何度かを返そうとした。

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