"0円の注文帳" 第5話
母は、その入になっていた。
帳面のに松岡という名字があった。
《松岡物 30万円》
その横。
《預かり》
「30万……?」
直子は借用をいした。
300万円ではない。
さらにページをめくる。
数ヶ。
《松岡 追加70》
《匿名 50》
《枝 128》
数字が並ぶ。
計すると。
300万円を超えた。
直子は胸がたくなった。
《枝 128》
母が直子のために貯めたと、ほぼ同じだった。
やはり。
母は。
娘の学費を、この「こもれび箱」へ入れていた。
直子はその夜、隆子のへ押しかけた。
注文帳をテーブルへ置き、
「128って、私の学のおでしょう」
と聞いた。
隆子は否定しなかった。
「そうだとう」
直子はに血がるのをじた。
「じゃあ結局同じじゃない」
「何が?」
「お父さんが辞退届をしたとしても、お母さんは私のために貯めたおを別のに使った。だから私に京へくなって言ったんでしょう」
隆子は黙っていた。
「助けなら何してもいいの? 娘のまで使って?」
「直子ちゃん」
「私、30ずっとお母さんを悪くってた。でもさっきまでは、もしかしたら全部誤解だったのかとってた」
直子の声が震えた。
「違ったじゃない」
母は善だった。
困っている女性を逃がした。
町のを助けた。
のないへ弁当を渡した。
だから何なのだ。
直子には関係ない。
に優しくするために、自分の娘から奪っていい理由にはならない。
「私だって、あのの娘だったんだよ」
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隆子はしばらく何も言わなかった。
やがて、
「その通りだとう」
と答えた。
直子は顔をげた。
慰められるとっていた。
母にも事があった。
仕方なかった。
そう言われるとった。
違った。
「枝さんは違えたよ」
隆子は静かに言った。
「なくとも私は、そうってる」
直子は言葉を失った。
隆子によれば、当「こもれび箱」にはまとまったが必だった。
久美子親子を逃がしたことをきっかけに、同じような事を抱える女性が何もへ相談に来るようになった。
な宿泊費。
引っ越し代。
子どもの学用品。
額でも、すぐ必になるがかった。
その頃、母は自分の貯から128万円を入れた。
「止めなかったの?」
「止めた」
隆子は答えた。
「私は『直子ちゃんのだろ』って言ったよ」
母は、
《京へく話はなくなった》
と答えた。
父が辞退届をしただった。
母は学へ続きを戻せないか頼んでいたが、元と同じ条件では無理だと分かった。
追加で100万円以必になる。
「姉ちゃん、もう無理だってったんだろうね」
直子は唇を噛んだ。
「だから、私に聞かずに使った」
「そう」
「それでを助けた」
「そう」
「派ね」
吐き捨てるように言うと、隆子は首を振った。
「派じゃない」
直子が見る。
「枝さんも悔してた」
隆子は続けた。
「何回も言ってたよ。のの子どもを守って、自分の娘から事なものを取ったって」
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「だったら返してくれればよかったでしょう」
「は返せても、20歳は返せないからね」
その言葉に、直子は何も言えなかった。
その夜。
直子は久しぶりに母を憎んだ。
真実をれば母を理解できるとっていた。
しかし。
ればるほど。
母は単純な善でも悪でもなくなっていった。
数、叔母の節子が若葉台へやってきた。の準備も兼ねていたが、直子が話で「専学のことを全部りたい」と言ったため、古い箱をつ持ってきた。
「これ、姉ちゃんから預かってた」
には父・茂の遺品が入っていた。
茂は直子が23歳の、仕事帰りの交通事故でくなった。
父とは専学の件のも普通に話していた。
なぜなら直子は、辞退届をしたのが父だとらなかったからだ。
箱のから、
《直子へ》
とかれた封筒がてきた。
父の字だった。
には便箋が2枚入っている。
付は事故の3ヶ。
《直子へ。いつか話さなければならないとっている》
直子のが止まった。
《京の学を断ったのは母さんじゃない。俺だ》
父は、自分が正しいとっていたといている。
娘が京へれば危ない。
族かられる。
料理など元で覚えれば分。
すべて「娘のため」だとっていた。
しかし直子が結婚してをたあと、父は考えが変わった。
《結局、おは自分のを選んだ。
俺が止めても止めなくても、子どもは親のものではなかった》
そして最。
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