"帰れなかった15歳" 第11話
「23経っても、怖かったんです」
千代子は美津子をへ入れた。
居には子どもの写真が飾られていた。
ほどの娘と、学の息子。
千代子は湯呑みを置いたが、自分ではもまなかった。
「あの、私が佐ちゃんの袖を掴んだから」
最初の言葉がそれだった。
「私があの子を巻き込んだんです」
「違います」
「違わない」
千代子は首を振った。
島縫製所へ着いた、佐子はすぐに帰ろうとした。
だが主は、野駅まで送ると言いながら、翌まで待てと言った。
翌になると「担当者が来ない」。
さらに翌は「会社が休みだ」。
そうして数が過ぎた。
佐子は何度もへようとした。
しかし女たちは、と寮のある敷から自由にることを許されていなかった。
「私たち、怖くて何も言えなかった」
千代子は膝を見つめた。
「でも佐ちゃんだけは、ずっとってた」
ある夜、佐子は千代子へ言った。
「の朝、緒によう」
裏の鍵がくを調べていた。
へ品物を運ぶが来る午5なら、がく。
2で逃げるつもりだった。
しかし千代子は直になって怖くなった。
「帰っても、私の居所なんてないってった」
母は再婚している。
弟たちにはしい父親がいる。
自分が戻れば迷惑を掛ける。
だから千代子はけないと言った。
「佐ちゃん、らなかった」
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千代子の目から涙が落ちた。
「じゃあ私も残るって言ったんです」
「どうして……」
「千代ちゃんを1にできないからって」
美津子は何も言えなかった。
事の夜も、佐子は千代子を先に逃がした。
翌朝、千代子が佐子について尋ねると、主から「んだ」と聞かされた。
「私、それを信じました」
事から数、女たちは別のへ移された。
千代子は区の縫製へ送られ、そこで5働いた。
18歳を過ぎてからしずつ自由になり、やがて別の会社へ移った。
結婚し、子どももまれた。
「でも、忘れたはなかった」
毎になると、あのの列をいした。
もし自分が佐子の袖を掴まなければ。
もしあの朝、緒に逃げていれば。
そう考え続けた。
「じゃあ、どうして今になってを?」
美津子が尋ねた。
千代子は古い聞の切り抜きをした。
昭58の初め、集団就職を振り返るさな記事が掲載されていた。
当の写真とともに、元就職者たちのいが紹介されている。
そのに美津子の名と、亜精密業の名があった。
「さんなら、まだ会社にいるって分かったから」
「それだけですか」
千代子は首を振った。
「もう1つあります」
数か、千代子は偶然、昔の同僚だった女性と再会した。
その女性から、信じられない話を聞いた。
「あの事で怪した子は、んでなかったらしいよ」
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病院へ運ばれた。
しばらく入院していた。
そんな噂を、当働いていたから聞いたという。
「それで私、初めてったんです」
千代子は美津子を見た。
「もしかしたら佐ちゃんは、どこかできてるんじゃないかって」
しかし自分で確かめる勇気はなかった。
もしきていたら、何と謝ればいいのか分からない。
もしくなっていたら、23逃げ続けた自分を許せない。
それで匿名のを送った。
「ごめんなさい」
千代子はをげた。
美津子はしばらく黙っていた。
そして鞄から、施設で撮られた集写真の複写をした。
「顔をげてください」
千代子がゆっくり顔をげる。
写真を見る。
その瞬、息が止まった。
「佐ちゃん……」
両で元を覆う。
「きてるんです」
美津子が言った。
「なくとも昭55までは」
千代子は声をげて泣いた。
38歳の母親ではなく、あの列ので佐子の袖を掴んだ15歳の女へ戻ったように泣き続けた。
埼玉県部にあった縫製所は、すでに閉鎖されていた。
美津子と千代子は、そこから佐子の取りを追った。
元経営者。
所の商。
緒に働いていた女性。
しずつ聞き込みを続ける。
佐子は昭41から10く、その縫製所で働いていた。
皆から「ちゃん」と呼ばれ、数はないが働き者だったという。
「あのは、自分の料をほとんど使わなかったね」
元同僚が話した。
「何か買いたい物があるんですかって聞いたら、いつか族を探すために必だからって」
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