"帰れなかった15歳" 第5話
話の向こうの声は事務だった。
「れたって、どういうことですか」
「本ので途脱した能性があります」
「そんなはずありません。荷物は持っていたんですか」
「荷物はこちらで預かっています」
トヨは受話器を握り締めた。
「荷物も持たずに、あの子がどこへくんですか。京にはりいなんて1もいません」
相は返事に困り、警察へ届けるとだけ答えた。
話を切ったも、トヨはそのからけなかった。
窓のでは細いがり始めていた。
が来たとっていた町は、その夜だけ再びへ戻ったようにえていた。
佐子が消えてから3、トヨは京へ向かった。
所から旅費を借り、着替えとべ物を呂敷へ詰めた。2の息子を親戚へ預け、夜列のい座席でもできないまま野駅へ着いた。
娘が最にいた所へつと、トヨはのさに言葉を失った。
田舎の駅なら、らないが1歩くだけでも誰かが覚えている。しかしここでは、目のを何百ものが通り過ぎ、振り返る者もいない。
こので、京をらない15歳の娘がたった1になった。
そううだけで元が揺れた。
警察では、の能性について何度も尋ねられた。
庭内に問題はなかったか。
交際していた男性はいなかったか。
京へくことを嫌がっていなかったか。
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「佐子には男のなんていません。する理由もありません」
「しかし、自分から集所をれたという証言があります」
「誰の証言ですか」
「引率者と、同じ列に乗っていた徒です」
トヨはそので亜精密業の女子寮へ向かった。
美津子たちは仕事を始めたばかりだった。慣れない械の音、見らぬたち、狭い寮活。まだ誰も京へ来た実さえ持てずにいた。
美津子はトヨを見ると泣きした。
「おばさん、ごめんなさい。私、佐ちゃんを止められなかった」
「あんたが謝ることじゃない」
トヨは美津子の肩を抱いた。
「何を見たのか、最初から話して」
美津子は列ので起きたことを説した。
野寺千代子という女。
途駅から乗り込んだい腕章の男。
突然き先を変更された4。
そして野駅で、その女たちを佐子が追いかけたこと。
話を聞き終えたトヨは、すぐに警察へ戻った。
「娘は逃げたんじゃありません。野寺千代子という子を追いかけたんです。その子を探してください」
警察が千代子の就職先へ確認すると、な返答が返ってきた。
「野寺千代子という者は、こちらへ来ていません」
採用予定の名簿にも名がないという。
さらに職業定所の資料を調べると、千代子は発直に別の請けへ変更されたことになっていた。
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ところが、そのとして届けられていた所へくと、そこは古い倉庫だった。すでに別の会社が入っており、縫製などした形跡もない。
腕章の男が誰だったのかも分からなかった。
「娘は何か危ないことに巻き込まれたんです」
トヨは何度も訴えた。
しかし当、事件だと断定できる材料はなかった。
佐子自が男たちについて歩いていったように見えたこと。
争った形跡がないこと。
そして方から京へてきた若者が職から逃げたり、別の仕事へ移ったりすることが珍しくなかったこと。
そうした事が、すべて「本の」という言葉で片づけられていった。
トヨは1週、野駅周辺を歩き続けた。
い宿へ泊まり、堂、、商、交番を回る。学の卒業式に撮った佐子の写真を見せ、何度も同じ言葉を繰り返した。
「この子を見ませんでしたか。15歳です。から働きに来たばかりなんです」
ほとんどのは写真を目見るだけで首を振った。
には茶をして話を聞いてくれるもいた。
「お母さん、変だね」
そう言ってくれるだけでもありがたかった。
しかし確かな掛かりはなかった。
旅費が尽き、故郷に残した息子たちのことも配になり、トヨは帰らざるを得なくなった。
そして町へ戻ると、別の苦しみが待っていた。
「京へくのが嫌になって逃げたらしい」
「野駅で男が待っていたんじゃないか」
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