"「田舎者」と見下した婚約者を実家へ招いたら、態度が一変した" 第5話
「美容……?」
お母さんがわずかに反応したのを見逃さず、私はとっておきの報をにした。
「それに、裏で松茸がたくさん採れるんです。松茸がべ放題ですよ!」
「ま、松茸べ放題!?」
『松茸べ放題』という言葉を聞いた瞬、お母さんの目のが変わり、あれほど渋っていたのが嘘のように、んで実への訪問を承諾してくれた。
アパートへ戻ったそのの夜、私はすぐにの実へ話をかけた。受話器の向こうの母に事を話すと、母は弾んだ声で歓迎してくれた。
『まあ、婚約者さんを連れてきてくれるの? それは本当に楽しみねえ!』
母の隣で話を聞いていた父も、受話器を奪い取るようにして声をげていた。
『何!? お相のお母様は会社を経営されている女社さんなのか? 失礼のないように、しっかり準備をしておもてなししないとな!』
両親の温かい反応に、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「お母さん、私も楽しみにしてるね。おもてなし、よろしくお願いします」
話を切り、未来の夫となる希さんと、美や級品に並々ならぬこだわりのあるお母さんのために、実へ最のおもてなしの準備をお願いした。
しかし、実へ発するの夜のことだった。
私の部で荷造りを伝っていた希さんが、ふとを止めて私に尋ねてきた。
広告
「ねえ、まゆちゃんの実って、具体にどんなところなの?」
「どんなって……ごく普通の田舎のだよ?」
私が当たりのように答えると、希さんは眉にい皺を寄せ、あからさまに嫌悪を滲ませた声で吐き捨てた。
「俺、田舎って本当に苦なんだよな」
その骨な言いに、私は胸を突かれたようにショックを受けた。まれ育った故郷のことをそんなに言われるなんていもしなかった。
「移も便だしさ、買い物する所もなさそうだし。絶対にみたいとはわないね」
たく言い放つ彼に対し、私は返す言葉が見つからなかった。希さんって、こんなにのまれ故郷を平気で馬鹿にするようなだっただろうか。会社で見せていた優しさとは違う面を目の当たりにして、私は傷つき、ここ数ずっとに引っかかっていた違をい切ってにしてみることにした。
「ねえ、希さん……なんか最、変だよ」
「何が?」
「私がお母さんの実に挨拶にってから、あなたの態度がたいというか、すごく厳しくなった気がするの。気になる発言も増えたし……」
私の言葉を聞いた瞬、希さんはげさにわざとらしいため息をつき、私をややかに見ろした。
「はあ……君には本当に呆れたよ。俺は婚約者として、自分の率直な見を言っただけだろ?」
広告
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」
わず反射に謝ってしまった私に、希さんはさらに追い打ちをかけるように言った。
「妻になるなら、夫になる俺の考えをもっとく理解するべきだろ? これだから田舎者はどうしようもないな」
「……っ」
気分を悪くさせてしまった、私の言い方が悪かったのだろうか。そう自分を責めつつも、胸ののモヤモヤは消えなかった。田舎者云々と、夫への理解に何の関係があるのだろう。
しかし、はいよいよ発のだ。
(きっと、私が初めての挨拶で緊張していたのと同じように、希さんも私の実にくのが緊張しているだけなんだわ。きっとそうに違いない)
私は自分にそう言い聞かせ、無理やりを打ち消した。
丈夫。すでに実には連絡して万全のを打ってある。私の両親はとても優しくて温かいたちだし、実に来ればきっと居が良くて、帰りたくなくなるくらい気に入ってくれるはずだ。彼とお母さんが抱いている田舎の悪いイメージを、今回のおもてなしですべて塗り替えてもらおう。私はそうに誓った。
発のの朝、京駅の幹線ホームには、グリーンのチケットをにした私たちの姿があった。もちろん、お母さんと希さんのためにグリーンを配した。
しかし、乗して席に着くなり、お母さんは窓のを眺めながら満そうにぶつぶつと独り言をこぼし始めた。
「はあ……松茸に釣られて騙されたわ。
広告
おすすめ作品
-
完結第6話
帰宅した夜、夫の嘘を知った
里帰り出産を終え、生後2ヶ月の息子を抱いてようやく自宅へ戻った美咲。夫・直人との3人暮らしが始まると思っていたその夜、隣人が突然玄関を叩いた。「毎晩毎晩、夜中までいい加減にしてください」。さらに「ご主人には前にも2回注意しました」と告げられ、美咲は耳を疑う。この2ヶ月、美咲は一度も家に帰っていない。では、隣人が何度も見かけた“妻らしき女性”は誰だったのか。問い詰められた直人は「会社の後輩が1度泊まっただけ」と説明するが、翌朝、隣人の証言によってその嘘も崩れ始める。出産のため家を離れていた2ヶ月間、自分の家庭で何が起きていたのか――美咲は静かに真実を確かめ始める。嫁姑|夫婦|不倫8.8千字5 1 -
完結第13話
判を押さなかった妻
65歳の佳代は、38年間連れ添った夫・修司から突然、離婚届と一枚の写真を差し出される。 写真に写っていたのは、10歳になる男の子。夫が11年前から外で関係を続けていた女性との子どもだった。 「離婚して、残りの人生は好きに生きたい」 そう言いながら修司は、離婚後も佳代に家に残り、食事や洗濯、薬の管理まで続けるよう当然のように求めてくる。 しかし佳代は、すぐには判を押さなかった。 悲しくて離婚できなかったわけではない。夫が隠してきた金の流れ、削られていた義母の施設費、そして“新しい人生”の裏にある都合のいい計画を、すべて明らかにするためだった。 38年間尽くしてきた妻が、最後に守ろうとしたものとは――。人生逆転|夫婦|熟年離婚1.9萬字5 74 -
完結第13話
消された母の名前
父の三回忌を終えた夜、53歳の里美は、認知症の兆しがある母・清子から、突然知らない名前で呼ばれる。 「直子、今度こそ逃げないで」 直子とは誰なのか。なぜ母は、娘である自分を妹の名で呼んだのか。 不審に思った里美が戸籍や父の遺した書類を調べ始めると、自分の出生届に残された不自然な訂正、20年以上続いていた謎の送金、そして施設で暮らす一人の女性の存在が浮かび上がる。 母が53年間守り続けたものは、愛だったのか、嘘だったのか。 隠された12通の手紙と、海辺の古い写真が、里美の知らなかった「本当の家族」を少しずつ明らかにしていく――。人生逆転|第二の人生|親子関係2.0萬字5 44 -
完結第10話
「俺の子じゃない」と言った夫へ、99.999%の鑑定結果を見せた日
命懸けで娘を産んだサツキに、夫・慶一が放ったのは「俺の子じゃない。DNA鑑定しろ」という非情な一言。さらに義母と義妹まで押しかけ、浮気女と決めつけ300万円の慰謝料を要求する。 しかしサツキは静かに一枚のDNA鑑定書を差し出した。 親子関係99.999%――そして次に彼女がテーブルへ並べたのは、夫が決して知られたくなかった“大量の写真”だった。 本当に裏切っていたのは、一体誰なのか――。人生逆転|真実1.6萬字5 74 -
完結第20話
温泉旅行を贈った夫の本当の目的
結婚32年、家族のために働き続けた恵美子。ある日、夫から突然贈られた高級温泉旅行に喜ぶが、忘れたスマホを取りに戻ったことで、夫と若い愛人の恐ろしい本音を聞いてしまう。 「退職金も土地も奪って、最後は追い出せばいい」 しかし二人は知らなかった。 “何も知らない従順な妻”と見下した恵美子が、32年間の医療事務経験で培った知識と証拠収集力を武器に、すでに完璧な反撃を始めていたことを――。 愛も金も家も失うのは、一体誰なのか。夫婦|修羅場3.0萬字5 312 -
完結第19話
「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体
「孤児院育ちの貧乏女」と蔑まれ、15年連れ添った夫・拓也に愛人と共に追い出された美桜。だが彼らは知らなかった――彼女の正体が、日本最大級の九条財閥の令嬢であることを。 離婚届に判を押した翌朝、500億円の契約解除、横領、裏切り、そして恐るべき犯罪計画まで次々と発覚。勝ち組を気取っていた夫たちの人生は、一夜にして崩壊する。 最後に笑うのは誰なのか――壮絶な逆転復讐劇が始まる。夫婦|不倫2.9萬字5 407 -
完結第13話
エレベーターの7時間
5月7日。 東京の大型デパートで突然の停電が発生した。 妊娠6か月の雪は、8人の乗客とともにエレベーターへ閉じ込められる。 救助が来るまでの7時間、彼女は自分の命よりも先に、高齢者や子供たちを守り続けた。 しかし、扉が開いた瞬間―― 救助隊長である夫・明が最初に抱き上げたのは、妻ではなく元恋人の桜だった。 「私と赤ちゃんは、もう彼を待たない」 意識を失う直前、雪が救助隊員へ託した結婚指輪と最後の言葉。 その日から、夫婦の関係は完全に崩れ始める。 なぜ明は、命の危険にある妊娠中の妻より、別の女性を選んだのか。 そして、10年間信じ続けていた桜との“過去”には、誰も知らない秘密が隠されていた。 救助記録と証言が明らかにした真実。 それは、雪が失ったのは夫だけではなく―― 自分を守るはずだった家族そのものだった。夫婦2.0萬字5 154 -
完結第14話
一杯の鍋が変えた人生
柏優太は、職場でのパワハラが原因で心を壊し、半年間ほとんど誰とも話さず部屋に閉じこもっていた。 そんなある日、隣に引っ越してきた母子3人の姿を見かける。 「何も買えなくてごめんね」と泣く母親と、空腹を我慢する子供たち。 過去に大切な友人を救えなかった後悔を抱えていた優太は、思わず声をかける。 「よかったら……うちで鍋しませんか」 一杯の鍋をきっかけに、孤独だった男と傷ついた母子の人生が少しずつ変わり始める。 しかし、温かな時間の裏には、母親が隠していた過去と、子供たちを取り戻そうとする元夫の存在があった。 誰かを救おうとした優太が、実は自分自身も救われていた――。 小さな優しさから始まった、再生と家族の物語。人生逆転|第二の人生|親子関係2.2萬字5 293 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 292