みかん小説
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"車に私の席はなかった" 第19話

絵理の父親が経営する桜産の社用に違いない。

から、見慣れたの姿が次々と現れた。

の朝だというのにスーツをきっちりと着込んだ直哉と、ブランド物のコートを羽織った絵理。

そして、青葉病院で暗赤のコートを着ていた絵理の母親と、恰幅の良い父親だ。

彼らは私のむ古いマンションを周囲から見回し、何かを見すようにで笑って歩きした。

やがての廊を歩く複数の音が、私の部づいてきた。

私はちゃぶ台のに正座し、裏側に固定したボイスレコーダーの録音ボタンを静かに押した。

証拠が入った透なファイルは、着物の袖のすぐ横に裏返して置いてある。

ドアの向こうで、慮のない乱暴なノックの音が回響き渡った。

「母さん、けてくれ」

直哉のし苛ったような声が、いドア越しに聞こえてくる。

「約束通りみんなで迎えに来たよ」

私は度だけ呼吸をしてから、静かにがり玄関へと向かった。

彼らが私から全てを奪ったと信じている、その傲な顔を見るために。

玄関の鍵をけると、たいの空気と緒にの敵が崩れ込んできた。

絵理の母親は私の黒い着物姿を見て、瞬だけ驚いたように目を見いた。

しかし、すぐにいつもの見したような笑いを浮かべていた。

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「あら、施設のお迎えが来るからって、わざわざ喪なんか着なくてもいいのに」

その劣な挑発に対して、私は鳴ることも言い返すこともしなかった。

ただ、ひどくたい線で彼女の顔を見つめ返し、静かに部へ促した。

「狭いところですが、どうぞお入りください」

私のその落ち着き払った態度に、直哉はしだけ戸惑ったように線を泳がせた。

は靴を脱ぎ、の匂いを漂わせながら畳のへとがり込んできた。

絵理の父親は部の古さを品定めするように見回し、げさにため息をついた。

「はる子さん、こんな古臭くてカビ臭い部で暮らすなんて無理ですよ」

彼は言った。

「私たちが紹介する派な施設に入れば、毎温かいご飯もるしですからね」

その言葉は、まるで私がすでに何もわからないれな老であるかのような言いだった。

彼らはまだ、自分たちが完全に利なで私を支配していると信じて疑っていない。

これから始まるが、彼らのを根底から覆すことになるとはらずに。

私は全員が部に入ったのを確認すると、静かに襖を閉め、逃げのない密を完成させた。

畳のは、が入ると息が詰まるほど狭くじられた。

私は窓を背にしてちゃぶ台のに正座し、は私の向かい側に窮屈に腰をろした。

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絵理の父親が黒い革の鞄から、仰な付きで数枚の類を取りした。

それは沿いにある級な老ホームのカラーパンフレットだった。

「はる子さん、私たちの顔に免じて、ここはしくサインしてください」

彼は言った。

「費用はこちらでて替えますし、あなたのの回りのお世話も全て施設がやってくれます」

彼はまるで、私に素らしい特権を与えているような恩着せがましい声をした。

ちゃぶ台のに、入所同と黒いボールペンが滑らせるように置かれる。

私はボールペンには触れず、隣でを向いている直哉に静かな線を向けた。

「直哉、あなたも私がこの施設に入るべきだとっているの?」

私が声のトーンを落として問いかけると、直哉は気まずそうに目を逸らした。

「母さん、最物忘れがひどいし、勝に徘徊する癖もあるって絵理が言っていたから」

その言葉を聞いて、私はの奥底がたく凍りつくのをじた。

彼は私が徘徊などしていないことを、同じで暮らしていてっているはずだ。

それなのに妻のついた見え透いた嘘を、自分に都よく信じ込もうとしているのだ。

私が黙っていると、絵理の母親が横から勝ち誇ったような声でを挟んだ。

「直哉さんの言う通りですよ」

彼女は言った。

「あなたにはもう、活する能力がないんです」

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