みかん小説
本棚

"車に私の席はなかった" 第8話

そして窓のの暗に目を向けた。

直哉のには乗せてもらえなかったし、焼肉の席にも入れてもらえなかった。

けれど、幹線のこの窓際の席だけは、誰にも奪われない私だけの確かな席だった。

窓ガラスに映る自分の顔は、タクシーので見たよりもしだけ落ち着きを取り戻していた。

もう自分を粗末に扱うたちのために、自分のを削る必はどこにもないのだ。

その、再びスマートフォンが連続してく震え始めた。

画面を見ると、連絡用のアプリに直哉からの通て続けに入ってきていた。

『母さん、族用のカードに何かした?』

にこのカードは使えませんって止められたんだけど、ちょっと話にてよ』

『絵理がレジのでパニックになってる』

私はその焦れったような文字の羅列を読みながら、静かに目を伏せた。

いつも私の財布から当然のように支払われていた、彼らの豪華なの代

利用止にしたカードをして、今頃彼らは員ので顔面を蒼にしていることだろう。

で頼んだべ放題の肉の代すら、自分たちの財布からはそうとしないのだ。

彼らが今じている恐怖は、老いた母親がいなくなったことに対する配ではない。

便利な財布が突然使えなくなったことへの、単なる焦りと保でしかないのだ。

広告

さらに、私の無言に焦ったのか、しいメッセージが画面に浮かびがった。

の朝には施設のも来るんだぞ』

『今どこで何をしてるんだ?』

く通帳と印鑑の所だけを教えてくれ。お願いだから連絡して』

私はその滑稽なまでの本音の連続をにして、議と滴の涙もなかった。

ただ、私が今まで必に守ろうとしてきた族の絆がいかにっぺらいものだったかを悟っただけだ。

彼らは自分の保と欲望のためだけに、母親の尊厳を切り売りしようとしていた。

その事実が、私のにあった最の迷いを鋭い刃物のように断ち切ってくれた。

幹線が静かにし、窓のの景がゆっくりとろへと流れていく。

私はスマートフォンの源ボタンを押しして、完全に画面を真っ黒に消した。

もう彼らの見苦しい言い訳に、いつまでも付きってやる義理はどこにもない。

私は黒くなった画面をバッグの奥底にしまい、子の背もたれにく体を預けた。

になれば、彼らは私が卓に残したあのと空になった部を見つけることになる。

そして、1200万円の続きを依頼した司法士からの連絡も受けるはずだ。

彼らが私から奪おうとしていたものは、そのまま彼らの首を絞めるい鎖に変わるのだ。

広告

暗い窓ガラスの向こうに、京のたいかりがさくざかっていく。

私はようやく、自分のへ帰るための静かで確かなレールのに乗っていた。

幹線の改札を抜けると、の匂いが混じったたいが私の体を包み込んだ。

のタクシー乗りから、私は古びたマンションへと向かった。

夜に到着した部は、んでいなかった気に満ちていた。

気をつけると、畳ほどのにはく埃が積もっていた。

夫と緒に過ごした最の数す。

懐かしくも寂しい匂いがした。

私はキャリーケースを畳のに置き、そのまま力なく座り込んだ。

京のあのてからずっと張り詰めていた糸が、プツリと切れる音がした。

暗くたい部きりになると、急に恐ろしいほどの孤独が押し寄せてきた。

歳にもなって、たったの息子と争うことに何のがあるのだろうか。

私が放さなかった1200万円は、確かに夫が残してくれた切な老だ。

けれど、おを取り戻したところで、私に温かい族が戻ってくるわけではない。

司法士を通して実の息子を追い詰めるなんて、母親としてあまりにも惨めだ。

私はたい畳のを縮め、両で顔を覆った。

音をてずに、次から次へと涙がこぼれ落ちてきた。

全てを諦めてしまおうかと、私のは暗い方へと傾きかけていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: