みかん小説
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"温泉旅行を贈った夫の本当の目的" 第18話

「博幸! おという男は、どこまでの恥を晒せば気が済むんだ!」

玄関で兄が博幸の胸ぐらを掴み、容赦なく声を浴びせた。

「恵美子さんが、どれだけうちののために尽くしてくれたか、おは忘れたのか! おだった頃、母さんの内障の術代を用ててくれたのも、うちの息子の学祝いを包んでくれたのも、全部恵美子さんの医療事務の料からだったんだぞ!」

「兄貴……頼む、晩だけでいいから泊まらせてくれ……くところがないんだ……」

「ふざけるな! 帝都建材からうちの親父の代からの付きいだった取引まで切られそうになっているんだぞ! お劣な浮気と横領のせいで、族全員がを塗られたんだ! おのような恩らずのクズ、うちの敷歩も入れるな!」

「母さん! 母さんからも何か言ってくれ!」

博幸さんがすがるように叫ぶと、老いた母親は顔を覆い、震える声で絞りした。

「……博幸。恵美子さんに座して、許してもらいなさい。それができないなら、私におという息子はいません……」

バタン! とい引き戸が閉ざされ、内側から厳に鍵がかけられた。

親族からも完全に絶縁され、社会信用も族の絆もすべて焼き尽くされた博幸さんは、持ちの数万円を握りしめ、線沿いに佇む築造ボロアパートのへと流れ着いた。

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畳半の畳は湿気で波打ち、壁はタバコのヤニで黄く変し、井の隅からは漏りの雫がトタン根を叩くな音が響いていた。

具は何もない。え切った板のに敷かれたいせんべい布団のに、博幸さんは膝を抱えて丸まった。

気も通っていない暗い部で、博幸さんはコンビニで買った半額シールの貼られたたいおにぎりをに運んだ。パサついた米粒が喉を通らず、涙がポロポロとこぼれ落ちて飯を濡らした。

かつて、仕事から帰れば必ず用されていた、湯気のつ炊きたてのご飯、季節の野菜を使った優しい付けの煮物、ピカピカに磨きげられた呂、糊のきいた清潔なシーツ――。

それらすべてが、恵美子というの女性が、を削るような労働と無償の献によって作りしてくれていた「奇跡の楽園」だったのだ。

「恵美子……恵美子……俺が悪かった……戻ってきてくれ……」

でどれほど叫ぼうとも、答える者は誰もいない。ただたい枯らしが、隙となって彼の痩せ細った体を容赦なく痛めつけるだけだった。

。霞が関にある公証役の相談に、私と志乃さん、そして憔悴しきって別のように痩せ細った博幸さんの姿があった。

かつての等なスーツは見るもなく、シワだらけの物のを包んだ博幸さんは、私の顔を見ることすらできず、終始さく震えながらうつむいていた。

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公証が、がった「付契約公正証」を厳格な調で読みげる。

婚の

をもって、婚姻関係を完全に解消する。

財産分与:

自宅産(・建物)の所権はすべて恵美子の単独帰属とし、博幸は切の財産分与請求権を放棄する。

貞慰謝料:

博幸は恵美子に対し、精神苦痛に対する損害賠償として百万円の支払義務を認める。

債務の清算:

に恵美子がて替えた両ローン残債、および活費の正流用分計百万円の返還義務を認める。

制執認諾条項:

員の支払いを回でも怠った、直ちに与、将来の、そのの財産に対して裁判なしで制執(差し押さえ)を受けることを受託する。

「……以の内容で相違ありませんか、博幸さん」

公証の問いかけに、博幸さんは枯れ果てた声で「……はい」とだけ答えた。

震えるで実印を握り、契約に押印する博幸さん。その印は、かつて彼が私のを奪おうと企てていた「実印」のみそのものだった。

続きがすべて完し、公証役のロビーに、博幸さんが私のに膝から崩れ落ちた。

「恵美子……頼む。慰謝料の支払いをし待ってくれないか……? 今の俺には雇いのバイト代しかなくて、毎賃を払うのもやっとの活なんだ……」

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