みかん小説
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"温泉旅行を贈った夫の本当の目的" 第8話

『恵美子、女も自分のたなきゃいけない。もし結婚活で何か辛いことがあっても、このがあればおきていけるからな』

の父が、痩せ細ったで私のを握りしめながら遺してくれた最の遺産。

それを――この男は、倫相の贅沢と逃のために、騙し取ろうとしていたのだ。

許さない。

絶対に、何があっても許さない。

私ので、これまでの度も経験したことのない、絶対零度の徹な炎が燃え盛った。激しいりは、もはやな混乱を通り越し、氷のように澄み渡った考へと変換されていく。

(博幸さん、あなたは私を『法律も登記も分からない無な女』だと言ったわね)

私はで、ややかに呟いた。

医療事務という仕事を、この男はただの「受付のおばさん」程度にしかっていなかったのだ。

医療事務とは、国の法律、労働省の複雑怪奇な省令、保険医療関の厳格なコンプライアンス、そして民法・医師法・個報保護法が交錯する最線で、円の正も許されずに類を精査し続ける「類と法律のスペシャリスト」だ。

カルテの示請求、遺産相続に伴う診断の法続き、成見制度の適用、自賠責保険や労災の過失割計算――私は、弁護士や司法士、保険会社の調査員たちと対等以に渡りってきたのだ。

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がどのようなで私を騙そうとしているのか、そのの法な穴が、私ので瞬に何通りも浮き彫りになっていった。

「さあさおり、昼飯のに、階の寝であいつの通帳と実印の隠し所をもう度確認しておこう。あのタンスの引きしの奥にあるはずだ」

「うん! くあのおばさんの痕跡、全部消しちゃおう!」

品な音が、ミシミシと階段をっていく音が響いた。

チャンスは今しかない。私は勝から音もなくれ、庭の奥へとめた。

裏庭の隅、錆びついたスチール製の物置のを潜めた。

ここは博幸さんが額なゴルフバッグや釣り具、見栄のためだけに買い揃えたアウトドア用品を詰め込んでいる所だ。物置の壁にを寄せると、け放たれた階の寝の窓から、の声がに取るように響いてきた。

私はハンドバッグの内ポケットから、予備として持ち歩いていた仕事用のICレコーダーを取りした。病院の会議の議事録作成や、患者からの悪質なクレーム対応の証拠保全のために、常に充を欠かさず携帯していた医療事務の必須装備だ。

親指で、静かに録音ボタンをスライドさせる。

赤いさなLEDランプが点灯し、無なカウントが始まった。

『あったわよ博幸! これでしょ、定期預の証! ……うわっ、本当に千万円く貯まってるじゃない!』

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『ハハハ、見ろ! あいつが、爪にを灯すようにして貯め込んだだ。俺の料から引きされたことにして、全部俺の座に移し替えてやる』

『実印は? 印鑑証のカードはどこ?』

『ベッドの庫だ。暗証番号はあいつの母親の命だよ。本当に単純な女さ、何から何まで読みやすい』

『最ね! これで私たちのハワイ移計画は完璧! あのおばさん、温泉から帰ってきたらどんな顔するかしらね? 「博幸さん、通帳がないの」なんて泣きついてきたら、笑いを堪えるのに必になっちゃうわ!』

『そのは優しく抱きしめてやるさ。「丈夫だよ恵美子、俺が守ってやるから」ってな。そう言えばあいつはコロッと騙されて、名義変更の類にもホイホイ実印を押す。まさに最のATM、掃除付きの無料政婦だよ』

劣な哄笑が、階の窓からの青空へと吐きされていく。

ICレコーダーの液晶画面で、録音レベルのバーが激しくしている。

音質は完璧だった。の名倫の事実、財産の横領計画、の詐取図、そして私に対する悪質な欺罔為の数々が、法廷で発で通用するレベルの瞭さで、デジタルデータとして刻み込まれていく。

私は物置のたい鉄板に背を預けながら、静かに息をえた。

頬を伝っていた汗は引き、の震えは完全に止まっていた。

の神経が、末の膨なレセプト点検をでやり遂げるのように、研ぎ澄まされた集力で満たされていく。

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