みかん小説
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"温泉旅行を贈った夫の本当の目的" 第6話

「恵美子は本当に頑張りさんだな。おがいてくれて、俺は本当に助かっているよ」

その言だけで、すべての疲労が吹きぶ気がした。その言葉を信じていたからこそ、私は自分の着、本買うことすらし、美容院にく回数を回に減らし、コツコツと貯蓄を増やし続けたのだ。

私の医療事務としてのの総収入は、涯で億数千万円に達していた。

その汗と涙の結晶は、すべて台を支えるために消えていった。

息子の学費用、塾代や仕送り。そして博幸さんが「営業マンは見栄が命だ」と言い張って購入したとローン、額なゴルフの会員権、同僚や取引先との見栄を張ったみ代の補填。すべて私の労働と忍耐が形を変えたものだった。

「恵美子、定を迎えたら、で世界を旅しよう。今まで苦労をかけた分、贅沢をさせてやるからな」

激務で度の貧血を起こし、職の医務で点滴を受けながらカルテをめくったも、腰痛に耐えかねてコルセットを巻きながら窓ち続けたも、私は夫と交わしたその約束だけをの杖にしてきてきた。

それなのに――。

の献の果てに与えられた名が「掃除付きの財布」であり、「畜」であり、「ちょろい女」だったというのか。

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「う……っ、うう……っ」

喉の奥から、絞りすような嗚咽が漏れた。胸が張り裂けそうな屈辱と、自分自の愚かさに対する激しい悔が、え切った体の奥底からマグマのように湧きがってくる。

信じていたの景が、音をてて崩壊していく。しかし、頬を伝おうとした涙は、枯らしに触れた瞬、急速に凍りついていった。

(泣いているじゃない……)

私は両で顔をく拭い、ベンチからすくりとがった。

このまま旅館へ逃げ込み、何もらぬ顔で帰宅して、彼らの敷いた破滅のレールのを歩くなど、絶対に許されない。

もう度、自分自の目とで真実のすべてをに晒さなければならない。私はボストンバッグを公園の植え込みの奥に隠し、音を忍ばせながら、再びへと引き返していった。

を避け、ブロック塀沿いに裏へと回り込んだ。

の午。隣所の主婦たちも買い物に払っているのか、には静寂が漂っていた。私は敷の隙をすり抜け、勝属製ドアのへとを寄せた。

の台所の勝には、部に換気扇のステンレス製ルーバー(鎧戸)が設置されている。私が、魚を焼くたびに油汚れを本歯ブラシで磨きげてきた、あの換気扇だ。そのルーバーの隙から、リビングの様子が恐ろしいほどの々しさでへと漏れていた。

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「――ねえ博幸、この古臭い柄のカーテン、来週には全部ゴミ袋に詰め込んで捨てちゃいましょうよ。趣が悪すぎて、ここに座ってるだけで虫唾がるわ」

さおりの甲い、障りな声が寒を切り裂いた。

「ああ、好きにしていいよ。具も器も、あいつの気配が染み付いているものは全部粗ゴミにそう。恵美子が戻ってくる頃には、このにあの女の居所なんてミリも残っていないからね」

博幸さんの声は、私が度も聞いたことのない、卑劣な全能に満ち溢れていた。

「でも博幸、あのおばさん、本当に定まで働き続けるかしら? 最、肩が痛いだの目がかすむだの、寄り臭い愚痴が増えたって言ってたじゃない」

「辞めさせるわけないだろう。あいつの病院は退職いんだ。も勤めげたんだから、満額で千百万円はらない。それをきっちり吐きさせるまでは、骨の髄まで働いてもらわなきゃ困る」

「キャハッ、鬼畜! でも最! その千百万円が入ったら、約束通りハワイのワイキキが見えるコンドミニアムのにしてくれるんでしょ?」

「もちろんだよ、さおり。あいつの退職は、僕たちが第を優雅に楽しむための軍資だ。あいつには円も渡さないさ」

ルーバーの真で、私は呼吸を止めた。

の血が逆流するような衝撃がる。私の退職――。

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