みかん小説
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"温泉旅行を贈った夫の本当の目的" 第5話

していた。信じていた。器用で、で、それでも族のためにで戦ってくれているのだと信じ、どんな理尽な仕打ちにも耐えてきた。そのすべてが、この男にとっては「を巻きげ、事を押し付けるための都のいい奴隷」を繋ぎ止めておくための、周到な計算と演技に過ぎなかった。

(……そう。そういうことだったのね、博幸さん)

私ので、何かが音をてて完全に破断した。

、私を縛り続けていた「良妻賢母」という名の呪縛の鎖が、々に砕け散った瞬だった。

私は呼吸の音てず、静かにを引き、玄関へと戻った。震えるでドアノブを回し、音もなくへと滑りる。カチャリと静かに扉を閉めた、私の瞳からは切のが消え失せていた。

残されたのは、氷のように研ぎ澄まされた、絶対零度の殺にも似た復讐の炎だけだった。

玄関の扉を音もなく閉めた私は、の裏の覚を失ったまま、憑かれたようにを歩いた。

から追いかけてくるものは何もないはずなのに、まるで底なし沼から伸びる無数の黒い首を掴まれているかのような悪寒が消えない。曲がり角をつ曲がり、自宅から区画ほどれた古い児童公園へと転がり込むようにを踏み入れた。

の平の午

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錆びついたブランコが寒に揺れてキィ、キィと頼りない鳴をげているだけで、つもない。私は凍てついた製のベンチに、崩れ落ちるように腰をろした。

ボストンバッグを膝のに抱え込み、両で顔を覆う。指先が氷のようにたく、どれほど息を吹きかけても覚が戻らない。胸の奥底を万力でギリギリと締めげられているような激痛がり、荒い呼吸を繰り返しながら、私は虚ろな目で鉛の空を見げた。

閉じた瞼の裏に、馬灯のように鮮な記憶の奔流が押し寄せてきた。

。昭の終わり、歳そこそこだった私は、のような純のウェディングドレスにを包み、教会で博幸さんと永を誓いった。

「恵美子、俺はまだのしがない営業マンだけど、おを絶対に幸せにする。で温かい庭を作ろう」

あのの彼の目には、確かに誠実なが宿っていたはずだった。

結婚当には、何つ贅沢なものはなかった。呂なしアパート。は隙が吹き込み、つのさな油ストーブに寄り添ってを取った。博幸さんの取り料はわずか数万円。賃と費を払えば、元にはほとんど残らない。

それでも私は、満など言もにしなかった。

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彼が職の営業マンとして胸を張れるよう、私は総病院の医療事務として正社員の席を守り抜き、にして働いた。

私の朝は、毎朝から始まった。

え切った台所にち、夫のために栄養バランスを考えたねの弁当を作り、朝噌汁の汁を鰹節から丁寧にとる。洗濯度回して干し終え、部の隅々まで雑巾がけをしてから、自分の支度をえて自転らせ、病院の医事課へと向かう。

病院での仕事は、息つく暇もない激務だった。

から平成への移期、のカルテときのレセプト(診療報酬)が主流だった代。度の複雑極まりない診療報酬改定のたびに、何千ページにも及ぶ分い保険点数表を暗記する勢いで読み込み、円の計算ミスも許されない過酷な点検作業に追われた。

末から初旬にかけてのレセプト請求期は、連夜までの残業が当たりだった。数字がわなければ徹夜で卓を叩き、翌朝そのまま窓って、痛みやから苛つ患者たちの厳しい言葉を笑顔で受け止め、医師や護師の理尽な求にもげ続けた。

それでも私は、音を吐かなかった。

「私が頑張れば、博幸さんがして仕事に打ち込める。が豊かになる」

夜遅く、疲労困憊で帰宅した彼のために温かい呂を用し、湯気のつ夕を並べると、博幸さんは満そうに微笑み、私の背を優しく撫でてくれたものだった。

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