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"「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体" 第10話

柴田の決定言が、静まり返ったフロアにたく響いた。

「う、嘘だろ……由……お、俺をしてるって……俺と結婚したいって、毎晩あんなに……」

震える声で尋ねる拓也。全てがバレたと悟った由は、数秒ブルブルと震えていたが、やがてプツンと何かの糸が切れたように、狂ったような笑いをげ始めた。

「あーっはっはっは! バカね! 当たりじゃない!」

は先ほどまでの憐なの仮面を完全に脱ぎ捨て、いつくばる拓也を、ゴミでも見るような目で見ろした。

歳にもなって、お腹もてきて髪もくなってきた冴えないおじさんを、代の私が本気でするわけないでしょう!? 気持ち悪い! 私はね、章くんと遊ぶためのおが必だったの! あなたはただの歩くATM、都のいい判子係だったのよ!」

からす、も蓋もない残酷な言葉。

「章くんと笑い転げてたわよ。『あのおっさん、自分がモテると勘違いしててウケる』ってね! 会社のを横領できたのも、あなたが私にデレデレで、類の確認もせずにポンポン判子を押してくれたおかげよ! 本当にバッカみたい!」

「お、女狐……! 俺はおのために、美桜を追いしてまで……!」

拓也の目から、ボロボロと粒の涙がこぼれ落ちた。

エリート社員としての位、社からの信頼、莫な財産、そして若くて美しい妻という完璧な未来――その全てがただのだった。

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最初から自分は、弟と悪女ので踊らされていた、滑稽なピエロに過ぎなかったのだ。

周囲を取り囲む部たちからは、容赦のない嘲笑と侮蔑の線が突き刺さる。

「なんて無惨な男だ……」

「自分の弟に寝取られて、おまけに犯罪の片棒を担がされるなんて……」

「自業自得ね」

私は醜く罵りう拓也と由、そして慌てふためく章の姿を、ただややかな目で見ろしていた。言も発することなく、ただ絶対な沈黙を貫く私のは、フロアので誰よりもきく、そして恐ろしく映っていたに違いない。

何もかもを失い、完全に絶望の底に突き落とされた拓也。彼はふと顔をげ、静かに佇む私を見た。その瞬、彼の濁った瞳に、すがりつくようなが宿った。

「み、美桜……!」

拓也はいつくばるようにして私に寄り、そのみすぼらしいで私のスラックスの裾をきつく握りしめた。

「俺が悪かった! 俺が違っていたんだ! 俺はあの女に騙されて、どうかしていたんだよ! なあ、美桜は条グループの令嬢なんだろう!? おの力で、この倒産危も横領も、なかったことにしてくれ!」

と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必に命乞いをする元夫。

緒にいたじゃないか! 俺の仕事のために裏でずっと支えてくれてたんだろう!? それは俺をしていたからだろう!? なあ、もう度やり直そう! 俺はおだけをするから! だから助けてくれ!」

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フロアに響き渡る、れで無惨な拓也の叫び声。

私はすがりつく彼のを振り払うこともしなかった。ただ、酷な氷の彫刻のように彼を見ろし、ゆっくりといた。

「拓也、あなたはまだ何も分かっていないのね」

私のあまりにもたい声に、拓也のきがピタリと止まった。

「あの婚届。あなたが昨、勝ち誇った顔でサインしたあのが、あなたにどれほどの獄をもたらすのか。その真実を、今から教えてあげるわ」

獄って……どういうことだ……!? 俺はただ、おと縁を切るためのにサインしただけで……切れにマンションの賃だって払ってやったじゃないか!」

際悪く喚き散らす拓也。だがその、この極限の静寂と緊張をぶち壊すように、甲い声ががった。

「ふざけんな! 俺には関係ねえ! 勝にやってろ!」

突然叫び声をげたのは、弟の章だった。彼は自分がただのづるの横領犯の共犯として巻き込まれたことをようやく理解し、顔を真っ青にしてエレベーターへと駆けしたのだ。

「ちょっと、章くん! どこくのよ、私を置いてかないでよ!」

が泣き叫びながらを追う。さっきまで私を「貧乏臭いおばさん」と見していた威勢の良さはどこへやら、ヒールのかかとを引っ掛けて無様にいずりながら、章のにすがりついた。

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