みかん小説
本棚

"帰りたくない少女と赤い車" 第8話

彼女の体内では、アドレナリンとが入り混じっている。

胸の奥で、臓がバクバクと激しく鼓しているのが自分でも分かった。

自分のしている尾という為が、常軌を逸していることは理解している。

あるいは、保育士としての越えてはいけない線を越えているかもしれない。

しかし、胸の奥で鳴り響く警鐘が、彼女を引き返すことを決して許さなかったのだ。

運転しながら、リンはエプロンのポケットにあるスマートフォンにを伸ばした。

彼女は片で画面のロックを解除する。

なくとも、自分が急にいなくなったことを、保育園の誰かに伝えておくべきだと考えたのだ。

リンは方のから絶対に目をさず、探りで縮ダイヤルを押した。

数回のコールの、ガチャリと話が繋がった。

「はい。保育園です」

スピーカー越しに話にたのは、先ほどぬいぐるみを渡してくれたのとは別の保育士だった。

「お疲れ様です。勇気です」

リンは努めて静な、何でもないような常の声を装った。

しの、園を空けることだけ伝えておこうとって」

リンは方の赤いを見つめながら、言葉を続ける。

「子供の忘れ物があったから、今から届けてくるね」

「あ、そうなの」

同僚はし驚いた様子だったが、特にく気にするでもなかった。

広告

解。こっちは問題ないから、気をつけてね」

「ありがとう」と言って、リンは通話を切った。

なくとも誰かが自分のを把握しているという事実に、リンはさな堵を覚えた。

彼女はスマートフォンを助席に放り投げ、再び方に識を集させた。

る匠のが、徐々にスピードをげていることに気がついた。

最初は見失わないように、リンもアクセルを踏んでペースをわせようとした。

しかし、ふと自分のスピードメーターに目をやって、彼女はハッと息をんだ。

匠の赤いは、らかにこのの法定速度をきく超えてっていたのである。

なぜ子供を乗せているのに、あんな無謀なスピードをすのか。

リンの胃の奥の嫌な覚が、さらにまっていくのをじた。

運転しながら、リンのを今の午来事が次々と巡っていく。

保育園の滑り台ので、帰るのを激しく嫌がったメイの姿。

『おとは違う』という、子供らしからぬ謎めいた言葉。

そして今目ので繰り広げられている、匠の異常なまでの無謀な運転。

その全ての素が、つの吉な絵をリンのに描きしていた。

もしかしたら、庭で何か緊急事態があったのかもしれない。

リンは、なるべく最悪の事態を考えないように理由を探した。

広告

それとも、母親がしいパートを始めたことで、庭の活リズムが狂ってしまったのか。

匠は慣れないお迎えのストレスで、ただイライラしているだけなのかもしれない。

リンは目のの状況を、なんとかに解釈しようと努めた。

しかし、どう考えても何かが決定違っているという覚を拭いることはできない。

むにつれて、周囲の町の景は次第に変化していった。

賑やかな通りから、静かで通りのないへと入っていく。

リンは法定速度をきちんと守って運転していたため、匠のとはかなり距いてしまっていた。

彼女はハンドルを握るくなるほど、力く握りしめている。

くに見える赤いテールランプを絶対に見失わないよう、目を凝らして運転を続けた。

やがて、窓のの景がさらにきく変わり始めた。

王子の郊に入ると、建ち並ぶ宅はまばらになっていく。

代わりに、鬱蒼とした々の塊や自然の景が目つようになってきた。

リンは普段、都部と自然が隣りうこの域の美しい景を気に入っていた。

にドライブに来ることもある所だ。

しかし今は、匠のを追ってこの半ば田舎のような景の奥くへむにつれ、印象が全く違っていた。

両側から迫り来る暗い森が、平なものからで恐ろしいものへと変わっていくのをじた。

々のを縫うように続き、カーブがくなっていく。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: