"退職届を出した夫が、最後の会議で暴いた妻社長の嘘" 第8話
彼女は信じられないという声で聞き返した。
「自分が何を言っているか分かっているの? 私を破滅させるつもり?」
私は首を横に振った。
「先の段では、もみ消せないことがあると分からせたいだけだ」
美穂は乾いた声で笑った。
「狂っているわ」
私は彼女の言葉を否定しなかった。
「そうかもしれないな」
美穂は父親が会議で自分の副社昇を発表するのだと訴えた。
私は彼女の名を呼び、言葉を止めた。
「美穂」
美穂は話の向こうで黙った。
私は結婚してからの3をい返し、問いかけた。
「昔、君は私を何と呼んでいた? 今は営業マネージャーとしか呼ばない。もう1度、名を呼んでみろ」
美穂は何も言えなかった。
私は返事を待ったが、聞こえてきたのはい呼吸だけだった。
私の胸に残っていたものも、そこで途切れた。
私はUSBメモリをに取り、予定を告げた。
「今15、どおりにく。録音も見積も、接続記録も全部持っていく」
美穂は私を止めようとした。
私はそのに言葉を続けた。
「お父さんへ先に話してもいい。事部に私を解雇させても構わない。だが私はもう退職届をしている。今の君には、私を止められない」
美穂はい息を吐き、最に尋ねた。
「本当に、そこまでするの? 私をんでいるの?」
私はすぐに答えた。
「んではいない。君には説する義務がある」
広告
通話が切れ、い子音が残った。
私は画面を伏せ、会議へ持っていく資料の理を始めた。
パソコンのフォルダーへ、音声、見積、雇用契約、接続記録の4つを並べた。
フォルダー名は「審査会議」とした。
社から、会議の始刻を尋ねる連絡が来た。
私が15だと答えると、彼は自分も席すると告げた。
社は、田へ直接確認したいことがあると言った。
私以にも、説を求めているがいたのだ。
私はジャケットを羽織り、所の印刷へ向かった。
会社へ向かうので曲がり、朝からいているへ入った。
主へUSBメモリを渡し、4つの資料を3部ずつ印刷するよう頼んだ。
主はUSBメモリをパソコンへ挿し、ファイル名と印刷部数を1つずつ確認した。
プリンターからがてくると、主は内容を見てを止めた。
私はてきたを順番どおりにね、角をそろえていった。
彼はたばこを元からし、私を振り返った。
「これは証拠か?」
私はカウンターへを置いた。
「会議で使います。1部は役員会、1部は会、残りは私の控えです」
主は3部を封筒へ入れ、私へ差しした。
婚協議も見えたらしく、彼は袋からをすに声を落とした。
「控えは、自分でしっかり持っておいた方がいい。気をつけてな」
私は礼を言い、480円を支払ってをた。
広告
自宅へ戻り、封筒へ「役員会」「鈴会」といた。
資料の順番が3部とも同じであることを確かめてから、それぞれの封を閉じた。
3つ目には何も記さず、鞄の内ポケットへ入れた。
封筒をしまい終えた、社から話が入った。
私は机に残った資料を押さえながら応答した。
社は、午240分頃に会社の入へ着くと告げた。
続いて、同者が1いると付け加えた。
私はスマートフォンを持ち直し、相の名を尋ねた。
「どなたですか?」
社は、元の類を確認するようにくを置いた。
「企画部の田部だ。田がした見積の控えを持っている」
私は3つの封筒へ目を移した。
田は社の案件だけでなく、田部の部署にもシステムの名義で見積をしていた。
田部は当から自然さをじ、受け取った類を残していたという。
私は入で待つと伝え、社が通話を切るのを待ってからスマートフォンを置いた。
資料を理した、私はクラウドに残っている別の音声を見つけた。
録音は、田が入社して2週目のものだった。
田は、職の続きが残っているため、履歴の勤務期と事実がわないと美穂へ相談していた。
彼は事審査を先に通してほしいと頼んだ。
美穂は期のずれを確認することもなく答えた。
「分かったわ。渡辺部へ、直接承認するように言うわ」
から調べると、田の職の職は、履歴と1か半ずれていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
10年契約の果てに消えた夫
10年前。 事故で妻と娘を失ったタケシの前に、謎のシステムが現れた。 「別の世界で10年間、ユキとその娘に寄り添えば、失った家族を復活させる」 愛する家族を取り戻すため、タケシは契約を受け入れた。 そして彼は、ユキと幼いヒメのために、すべてを捧げる10年間を過ごした。 しかしユキが愛していたのは、タケシではなく、かつて自分たちを捨てた初恋の相手・シャオだった。 タケシは夫ではなく、都合のいい存在として扱われ続ける。 残り7日で任務が終わる日。 シャオが戻ってきたことで、タケシの最後の居場所は完全に奪われた。 そして彼は、10年間守り続けた家族からも、最後まで信じてもらえなかった。 やがて任務を終えたタケシは、すべてを捨てて元の世界へ帰る。 数年後、真実を知ったユキとヒメは、初めて彼がどれほど傷ついていたのかを理解する。 だが――。 もう彼の隣には、二度と離したくない本当の家族がいた。 10年間の犠牲は愛だったのか。 それとも、ただ失った家族を取り戻すための契約だったのか。修羅場1.9萬字5 0 -
完結第16話
閉ざされた玄関の暗証番号
田園調布の豪邸で暮らす田中勇気と妻・桜。勇気は一人暮らしになった母・澄子を思い、妹の弓とともに同居を始める。しかし、その優しさは次第に家族の境界線を曖昧にしていった。 勇気が海外出張中、桜は高熱で倒れながらも義母の来客対応を強いられる。初めて「できません」と拒んだ彼女に、澄子は怒りを募らせ、桜本人の意思を無視して荷物をまとめ、家から追い出してしまう。 夫に心配をかけまいと黙って耐える桜。しかし異変を感じた勇気は急いで帰国し、隠されていた真実を知る。 妻を守れなかった自分の過ち、そして母が家族への感謝を「支配する権利」と勘違いしていたことに気づいた勇気は、家族の在り方を見直す決断をする。 本当の家族とは何か。愛情と依存の違いを描く、再生と絆の物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4萬字5 10 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 36 -
完結第12話
一万八千円の飯
自分の家族が経営する5つ星ホテルで、何気なく注文した一品の炊き込みご飯。 メニューでは1,800円に見えたはずなのに、会計明細には「18,000円」と記されていた。 帰国したばかりの後継者・小川優馬は、単なる表示ミスだと思い責任者を呼ぶ。だが、レストラン責任者は「社長が承認した価格です」と言い切った。 父が守ってきたホテルで、なぜ一杯のご飯が10倍の値段になっているのか。 優馬が調べ始めると、異常な価格変更、不可解な仕入れ、法人客への不自然な請求、そして継母・里見の影が浮かび上がっていく。 やがてその小さな違和感は、20年前に亡くなった実母・秋子の死、奪われた母方の財産、腹違いの弟の秘密、そして恋人だと思っていた女性の正体へとつながっていく。 始まりは、たった一杯の炊き込みご飯だった。 だが、その18,000円の明細は、運海ホテルに隠された20年越しの闇を開く鍵だった――。因果応報|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 2 -
完結第11話
断髪新郎の逆転婚礼
抗がん剤治療で髪を失った彩佳は、唯一の家族である兄・健太の結婚式に出席することになった。 両親を亡くしてから、兄妹2人で支え合って生きてきた彩佳。兄の幸せを心から願い、母の形見のスカーフを巻いて式場へ向かう。 しかし、兄嫁の母・礼子は、そんな彩佳を見た瞬間、冷たい言葉を投げつけた。 「その頭で親戚席に座る気なの?」 病気の妹は縁起が悪い。式に出るな。兄との縁も切れ――。 追い詰められた彩佳の前に現れた健太は、笑顔のまま静かに言い放つ。 「では、新郎ごと帰りますか?」 その一言で礼子の顔色は変わった。 だが本当の反撃は、披露宴で用意されていた“新郎新婦、最初の共同作業”から始まる。兄弟姉妹|修羅場1.7萬字5 3 -
完結第12話
桜袴の女組長
娘の入学式の日、シングルマザーの水島美咲は、校門の前でボスママ・霧谷礼子に袴を引き裂かれた。 それは、亡き母が一針一針仕立ててくれた大切な形見だった。さらに礼子は、娘の前で父親のいない家庭を嘲り、母の思い出まで踏みにじる。 美咲はただ黙って耐えていた。 娘の晴れの日を壊したくなかったから。 しかし、礼子が最後の一線を越えた時、美咲は静かにスマートフォンを取り出す。 5分後、校門前に次々と黒塗りの車が現れた。 誰も知らなかった。 この“貧しいシングルマザー”と見下された女に、学校中が凍りつくもう一つの顔があることを――。修羅場1.8萬字5 0 -
完結第11話
部外者会長の逆襲
営業部の新年会に、夫と一緒に出席した井上ゆかり。 しかし会場に着くと、用意されているはずの席はなく、課長の獅倉からは笑いながらこう言われた。 「今日は関係者だけで飲もうよ」 部外者扱いされ、夫婦そろって追い出されるように店を出たゆかり。だが店の外には、黒いセダンと秘書が待っていた。 「帰るから、車出して」 「会長、承知しました」 実はゆかりには、会社の誰も知らないもう一つの顔があった。 翌朝、課長から慌てた電話が入る。大型契約が突然保留になり、会社のサーバーからは、ただの嫌がらせでは済まされない重大な痕跡が見つかっていた――。因果応報|修羅場1.6萬字5 2 -
完結第12話
近道看板の逆襲
海の近い小さな村で、家族と農業を営む大平浩。 数年かけて育ててきたトウモロコシ畑が、ある日突然、何者かの車に踏み荒らされていた。畑の入口には、勝手に置かれた「国道への近道」の看板。何度撤去しても、立入禁止の表示を立てても、被害は止まらない。 やがて犯人は、入院中の村長の息子・光だと判明する。 「この村のものは俺のもの」 そう言い放つ光は、畑を道路のように使い続け、ついには浩の娘まで危険な目に遭わせる。警察に訴えても、相手が村長の息子というだけで話は曖昧に流されてしまう。 証拠がなければ、誰も動かない。 そう悟った浩は、畑に防犯カメラを設置し、光が自ら罠にはまる“ある看板”を立てることにした。 家族の畑を踏み荒らした男に待っていた、静かな因果応報とは――。因果応報|修羅場1.8萬字5 0 -
完結第12話
欠陥品と呼ばれた歌姫
13年前、妹・恵は一枚の置き手紙を残し、夫と幼い娘を捨てて姿を消した。 「愛良はいらない。子どもを産めないお姉ちゃんにでもあげれば?」 傷ついた姪を放っておけず、桃江は妹の元夫・高也とともに、愛良を育てる道を選ぶ。血のつながりではなく、毎日の朝食と小さな約束を積み重ねながら、三人は本当の家族になっていった。 それから13年後。 美容室で桃江は、突然失踪したはずの妹と再会する。昔と変わらず、桃江を見下し、愛良を侮辱する恵。 だが直後、桃江を迎えに来た夫と、制服姿の少女を見た瞬間、妹の顔色が変わる。 彼女が捨てたものは、もう二度と取り戻せない場所にあった――。兄弟姉妹|修羅場1.8萬字5 1288