"一つの証拠が暴いた8年間の嘘" 第5話
そして、震えるか細い声で呟いたのだ。
『え……? あ、あの……でも、ごめんなさい……!』
美咲はそれだけ言い残すと、子を引いてちがり、振り返ることもなくにをびしていってしまった。 夜のへと消えていく彼女の背を、俺はただ呆然と見送るしかなかった。
テーブルのに残されたデザートのアイスクリームは、の経過とともにぐったりと溶け崩れていた。スプーンですくってに運んだその甘さは、喉が焼けるほどに苦かった。
失恋の痛からち直るもなく、その数、俺は司から突然の辞令を言い渡された。 き先は、インドの現法支社。期は未定。 現の発拠点で刻なが発しており、誰でもいいからすぐにべるを探しているという、事実の厄介払いのような辞令だった。
本に留まる理由を失っていた俺は、つ返事でその辞令を承諾し、逃げるように本をれた。 美咲とはそれっきり、連絡を取ることもなく、あっというにの歳が流れていったのだ。
――そんな過の記憶をぼんやりとい返していると、応接の扉のから、控えめだが苛ちの混ざったノックの音が響いた。
「失礼します」
扉がき、待スペースで待ちくたびれた財が、嫌そうな顔を隠そうともせずに入ってきた。
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美咲さんは素く目元の涙を指先で拭い、いつもの凛とした姿勢に戻ると、静かに席を指差した。
「どうぞ、お座りください」
俺もさく頷き、元の席へと腰をろした。 財は怪訝そうに俺と美咲さんの顔を見比べながら、無理やり営業用の笑みを作ってをいた。
「お待たせいたしました。それで、先ほどのお話ですが……」
美咲さんは背筋をまっすぐに伸ばし、財の目を真っ直ぐに見据えて告げた。
「改めまして、本のご提案ですが……向きに検討させていただきます」
「本当ですか!?」
財の顔が瞬で歓に歪んだ。しかし、美咲さんは髪を入れずに言葉を続けた。
「ただし、条件があります。今回のプロジェクトの担当者を、すべて朝倉さんにしてください」
「……は?」
財は抜けな声を漏らし、を疑うように美咲さんを凝した。
「な、何を仰っているんですか!? 彼は発部ので営業の経験なんてありませんし、そもそも卒でした仕事もできない男ですよ!?」
美咲さんは氷のようにたい線で財を瞥した。
「先ほどお話しした通りです。朝倉さんの受け答えは非常に誠実で、丁寧です。が社のシステム発のパートナーには、辺だけの先ではなく、彼のように信頼できる物こそが相応しいと判断いたしました」
「そ、そんな……! 営業の窓は私が――」
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「社内にも、しいが必ですよね?」
美咲さんはそう言って話を完全に打ち切った。 財はぐうの音もず、屈辱に唇を噛み締めて黙り込んだ。テーブルので固く握りしめられた彼の拳が、りと屈辱で刻みに震えているのを、俺は見逃さなかった。
美咲さんは俺の方へと向き直り、ふっと柔らかく微笑んだ。 その瞳は確かに、に途切れてしまった、あの夜の続きへと繋がっていた。
富士ホールディングスとの型契約が正式に成した、俺は本へ帰国して以来、初めての底から確かな達成を覚えていた。 忘れていた、胸の奥が静かにじんわりと温かくなるような覚だった。
社用を駐に戻し、発部のオフィスへ戻ると、フロア内の空気がなぜか異様なざわめきに包まれていた。 自席に座っていた同僚たちが斉に顔をげ、俺がフロアにを踏み入れた瞬、割れんばかりの拍が巻き起こった。
「朝倉さん! 富士ホールディングスとの契約成、おめでとうございます!」 「あの難攻落の案件を落とすなんて、さすがっすね! 発だけじゃなくて営業スキルまであるなんて凄すぎますよ!」
輩社員たちが駆け寄ってきて、々に称賛の言葉をかけてくれる。俺は照れくささにを掻きながら、さく礼を述べた。
「ありがとう。でも、俺の力じゃないよ。みんなが作ってくれた基礎があったから――」
俺がデスクへ向かおうとした、そのだった。
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