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"一つの証拠が暴いた8年間の嘘" 第2話

「朝倉君、まだそんな初歩なところやってんの? さすが卒だねえ、きが鈍すぎるよ」

から掛けられた粘つくような声に、俺はキーボードを叩く指を止めた。 振り返ると、スーツの胸ポケットに級な万を差した男が、ニヤニヤと悪な笑みを浮かべて見ろしていた。

剛。 俺と同い歳だが、肩きは営業部の主任だ。 学歴もなりも派で、社内でのち回りだけは異常に器用だったが、その内面といえば、常にを蹴落とし、自分をきく見せるための踏み台にすることしか考えていないような男だった。

は俺のデスクのパーテーションに肘を乗せ、見すような線を向けたまま言った。

「頼むよ、朝倉君。売れるもん作ってくれなきゃ、俺がから詰められるんだからさ。そんなスピードじゃ、また誰もきたがらない僻の転勤先に送られちゃうよ?」

俺はその侮辱混じりの言葉を黙って聞き流し、静かにディスプレイへと線を戻した。自分がこの本社に戻ってきた、そして果たすべき責任を、の奥で静かに噛み締めようとしていたからだ。

は何のも表さず、反論すらしてこない俺の態度につまらなそうにを鳴らすと、ふいと興を失ったように背を向けた。そして、フロア内を見回すと、すぐに別のターゲットへとを向けた。

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営業フロアの扉がき、の若営業社員が肩を落として戻ってきたところだった。財はその社員の股でちはだかった。若社員は怯えたようにを竦め、必げた。

「す、すみません……! 先方に資料はお渡しできたんですが、話を聞いてもらえるような隙がまったくなくて……」

どうやら、拓の営業先へ向いたものの、払いにい形で追い返されてしまったようだった。若社員は額にや汗をびっしょりと浮かべ、震える声で言葉を継ぎそうとするが、恐怖のあまり声がずってうまく繋がらない。 目線は泳ぎ、まるでに落とした何かを探すかのように、線を激しく彷徨わせている。 その震える両には、先方に渡したという企画の控えが、握り潰されてくしゃくしゃになっていた。

それを見た財は、わざとらしくきくため息をつき、肩をすくめて見せた。

「なるほどな。まあ、おじゃしょうがねえか。相はあの、業界内で『契約の鬼』と呼ばれてる女、瀬美咲だもんな」

は胸元を正し、勝ち誇ったように周囲の社員たちを見渡した。

「しかも、富士ホールディングスの社令嬢と来たもんだ。あの難攻落の案件の契約を取れる営業なんて、社内広しと言えども、俺くらいしかいないだろうな。

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よし、ここは俺直々にってやるか」

そう言って笑う財の顔には、根拠のない自信と、肥化したが醜く入り混じっていた。 財はくるりと振り返り、再び俺のデスクを指差した。

「ってことで、朝倉君。運転よろしく」

俺は作業の画面を見つめたまま、静かに眉を寄せた。

「え……俺がですか? まだ発作業の途ですが」

「仕事ってのはね、タイミングなの! 卒のプログラマーがいくらコードをこねくり回してたって、売れなきゃ文にもならないの。答えしてる暇があったら、さっさと社用して」

無を言わせぬ調に、俺はさく息を呑み、作業データを保して席をった。

から社用し、都の幹線へとを滑らせる。 した部座席から、ふんぞり返った財の持論が、バックミラー越しに響いてきた。

「いいか、朝倉。鬼だろうが社令嬢だろうがな、結局のところ、女ってのは惚れた男の話なら何でも聞くき物なんだよ。わかるか?」

俺は方のを注したまま、何も答えなかった。財嫌で話を続ける。

「俺がこれまできな契約を何本も取ってこられたのは、そういうことだ。相が女のはな、仕事の商談をしにくんじゃないんだよ。説き落としにくつもりで臨まなきゃダメなんだ。

俺みたいにな」

「……はあ」

気の無い返事を返すのが精杯だった。呆れと虚しさが混ざりい、返す言葉も見つからないまま、内にはい沈黙が流れた。

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