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"閉ざされた玄関の暗証番号" 第13話

「お兄ちゃん……本当に、私たち別々に暮らすの?」

「ああ」

勇気の返答はく、迷いがなかった。を追いしたいわけではない。しかし、何の反省も境界線の認識もないまま、再び桜をこのに戻して同居を継続させるという選択肢は、もはやし得なかった。

澄子は信じられないものを見るように息子を凝し、やがて乾いた笑いを漏らした。

「……結局、桜さんに会ってきてこうなったわけね。アメリカで事な仕事をしていた息子が、急に帰ってきたかとえば、母親と妹をから追いすなんて……嫁の言で、母親を捨てるつもり!?」

「桜さんの言葉だけが理由ではありません」

「じゃあ何が理由なのよ!」

「僕自が、これまで族だからと甘やかして見過ごしてきた境界線の問題を、根本からやり直す必があると痛したからです」

澄子は馬鹿にしたようにを鳴らした。

「何を難しく言ってるの? 結局、あの子がお母さんのことを悪く言ったんでしょう!」

「いいえ」

勇気は即座に否定した。

「桜さんは、そんなこと言も言っていません」

「じゃあ何て言ったのよ!」

「『お母さんとあまり酷く喧嘩しないでね』と言っていました」

澄子のが半きになり、言葉が止まった。弓も目を見いて兄を見つめた。

「桜さんは、自分のせいで僕とお母さんの関係が修復能になることを、配していました。

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あんな酷い追いされ方をした張本が、です」

リビングにしんと静まり返った沈黙が落ちた。しかし、澄子はすぐに首を激しく横に振った。

では何とでも言えるわよ!」

勇気はそれ以、桜の弁護をねることはしなかった。何を言っても、今の母には「嫁に操られた息子」としか映らないことが分かっていたからだ。勇気はがった。

「別々に暮らすという結論は、何があっても変えません」

澄子は息子を激しく睨みつけたが、勇気は振り返ることなくリビングをようとした。その背に向けて、澄子の痛な叫びがんだ。

「勇気!」

を止めて振り返ると、澄子の顔には先ほどのりではなく、い絶望とが滲んでいた。

「……あなたのお父さんがくなってから、私があなたたちをどうやって女つで育ててきたか、忘れたの?」

勇気の胸に、鋭い痛みがった。父親が急逝した、母が苦しい計をやりくりし、自分たちの教育費を捻するためにを削って働いてくれたのは紛れもない事実だった。

澄子は涙を浮かべながら訴えかけた。

「あなたが学の、学費がりなくて私がげてお面したのを覚えてないの? 私はね、あなたたちが幸せになってくれれば、それだけでいいとってきてきたのよ。それなのに……し暮らしが良くなって成功したら、母親を追いすっていうの!?」

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勇気は目を閉じ、く息を吐きした。

「お母さんが苦労して僕たちを育ててくれたことには、から謝しています」

澄子の瞳に希望のが宿った。

「分かってくれるなら……こんな酷いこと、しちゃ駄目よ」

かつての勇気なら、ここで毒気を抜かれ、曖昧な妥協を選んでいただろう。母の過の犠牲を持ちされるたびに罪悪に苛まれ、問題を先送りにしてきたのだ。しかし、今回は違った。

勇気はまっすぐに母を見据えた。

「僕がお母さんの苦労に謝し続けることと、お母さんが桜さんを当にから追いしたことは、全く別の問題です」

澄子の表が凍りついた。

「……それを、別々に話すっていうの?」

「はい。そうやって謝と甘えを混同し、境界線を曖昧にしてきたからこそ、ここまで事態を悪化させてしまったんです」

族のことを、どうしてそんなにたく割り切れるのよ! あなたは元々こんなたい子じゃなかった……結婚して、すっかり変わってしまったのね!」

澄子はソファに崩れ落ち、ハンカチで目元を押さえた。

「僕が変わったのではありません。今になってようやく、正しく区別することを覚えただけです。お母さんに謝することと、お母さんの理尽な振るいをすべて受け入れることは、決して同じではないはずです」

静まり返ったリビングに、勇気の静かな言葉だけが響いた。

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