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"閉ざされた玄関の暗証番号" 第8話

「桜さん? ああ……かけたわよ」

澄子は努めて何気ない調子で答えた。勇気のが止まる。

かけたって……こんな朝くにか?」

「ええ、まあ……昨からよ」

「昨から?」

勇気の表気に張った。

「昨からにいないってことか? どこへったんだ?」

再び、自然なが空いた。

「実でしょうね」

勇気は眉いシワを寄せた。

「『実でしょうね』って……どういうことだ? お母さん、直接桜さんから聞いてないのか?」

澄子の返答のテンポが、先ほどよりもらかに遅くなった。

「どこかへくのに、私にいちいちき先を言わなきゃいけないわけじゃないでしょう?」

勇気の目が鋭さを帯びた。先ほどは「実った」と断定するように言っておきながら、追及されると「正確にはらない」と話を濁している。

「お母さん、何かあったのか?」

「何かって……別に何もないわよ。数、お互いにれていればいいとってね」

勇気はその言葉を聞き逃さなかった。

「お互いにれていればいい?……それ、ただのじゃないだろ。桜さんは誰とれるためにたんだ?」

受話器の向こうが完全に沈黙した。勇気は決して声を荒らげることなく、だが逃げを塞ぐように静かに待った。やがて、澄子がため息混じりにいた。

「勇気、あなたは今、事な仕事でってるんでしょう? したことじゃないんだから、余計な配はしないで自分の仕事に集しなさい」

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勇気はデスクのに広げていたノートパソコンを、バタンと音をててゆっくりと閉じた。

「お母さん」

く、無を言わさぬ声だった。

「桜さんは今、どこにいるんだ?」

「だから、私にも正確な所までは分からないわよ」

勇気の握るスマートフォンに、ぎしりと力がこもった。妻が昨からているのに、同居している母が居所すら把握していない。それにもかかわらず、母はそれを「したことではない」と片付けようとしている。

「桜さんは、なぜたんだ?」

「……ちょっと、言いいになっただけよ」

「どんな言いいだ」

澄子は確な回答を巧みに避けた。

「勇気、お母さんがちゃんとしておくから、あなたは予定通り仕事を終えて帰ってきなさい。いいわね?」

勇気はこれ以、母を話越しに問い詰めても真実を聞きすことはできないと悟った。

「……分かりました」

「そうよ、気にしなくていいの」

通話を切ると、ホテルの客はしんと静まり返った。勇気は即座に桜の番号をもう度呼びしたが、やはりコール音が空しく響くだけだった。勇気はメッセージアプリをき、い文面を打ち込んだ。

『桜、このメッセージを見たらすぐに連絡をくれ。何があった?』

送信したも、勇気は暗い画面を見つめ続けた。母の言葉がつずつ脳裏に蘇る。

『実でしょうね』 『私にも正確な所までは分からないわ』 『ちょっと、言いいになっただけよ』

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点と点が全く繋がらなかった。勇気のる桜は、何の連絡もなしに何を空けるような無責任なではない。そして何より異様だったのは、母が桜の所らないと言いながら、貫して事態を矮化しようとしていた態度だった。

勇気はスマートフォンを操作し、会社の国内統括部で働く信頼の置ける部の番号を探しした。今最優先すべきは、桜の全と所を確認することだった。

夜更けの本へ話をかける。

「夜分遅くにすまない、鈴。至急、確認してほしいことがあるんだ」

の部は、夜の社からの直に緊張した面持ちで応じた。

「はい、社。何でしょうか」

「妻の桜と連絡が取れなくなっている。詳しい事で話すが、彼女の友関係を当たって、今どこにを寄せているか至急調べてくれないか」

「承いたしました。すぐに配いたします」

それからも経たないうちに、部から折り返しの報告が入った。桜の古くからの友である蒼井に連絡がつき、現、桜は蒼井の都内のマンションに滞していることが確認できたという。

勇気はそこでようやく、妻のに最悪の事態が起きていないことを確認し、堵の息を吐いた。しかし、胸のざわめきは消えるどころかまった。実にいるはずだと言っていた母の言葉は完全な虚偽であり、桜がなぜ友に避難しなければならなかったのか、その刻な理由が横たわっていることはだった。

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