みかん小説
本棚

"閉ざされた玄関の暗証番号" 第4話

「体調が悪いって言うからね、実で数ゆっくり休んできたらどうかって提案したのよ。そしたら、どうして自分がていかなきゃいけないのかって急に言い返されてね」

弓は母の言葉を聞き、それから青い顔の桜を見つめた。にそれまでどのようなやり取りがあったのか、弓には正確には分からなかった。ただ、母のからた「体調が悪いから実で休む」という言葉だけを聞けば、数を置くことの方がな解決策のようにえたのだった。弓はにした買い物袋をソファの脇に置き、当たりのように言った。

「お義姉さん、数に帰るのもいいんじゃない? その方が体も休まるでしょうし」

桜の表が完全に凍りついた。

「私、実に帰る気はありません」

弓はそれ以何も言えず、気まずそうに線を逸らした。桜もまた、最初から事の顛末を弓に説し直す気力は残っていなかった。すでに澄子には何度も自分の志を伝えていたが、何つ届かなかったからだ。桜はこれ以言葉を交わすことを諦め、踵を返して階の寝へとがっていった。

に入ると、桜はベッドの端に力なく腰をろした。のせいで界が微かに揺れる。瞼を閉じ、浅い呼吸を繰り返していると、廊の向こうからづいてくる音が聞こえた。

広告

ではない。つの音だった。

音は桜の寝で止まり、ノックもなしにドアが勢いよくかれた。

桜が驚いて目をけると、そこには澄子と、その背つ弓の姿があった。

「お義母さん……?」

澄子は桜の問いかけには切答えず、寝の奥にあるウォークインクローゼットへとまっすぐ向かった。弓も戸惑いながら母のに続いて入っていく。桜はふらつく体を押してがった。

「今……何をなさっているんですか?」

澄子はクローゼットの隅に置かれていた型のスーツケースを引きずりすと、寝のフローリングのに広げた。具が擦れい、ガチャリとい音が響く。澄子は再びクローゼットへ入り、ハンガーに掛かっていた桜のブラウスやワンピースを掴みすと、次々にスーツケースへ放り込み始めた。弓もまた、促されるようにドレッサーのると、桜の化粧やポーチをさなバッグに詰め始めた。

桜は目ので繰り広げられる景を、信じられないいで見つめていた。自分の私に無断で押し入られ、自分の荷物を勝にまとめられているという事実が、現実のものとして処理しきれなかった。

「おとも、体何をなさっているんですか!」

弓のがびくりと止まった。しかし、澄子だけは平然とした顔でもう着のカーディガンをクローゼットから取りした。

広告

「見れば分かるでしょう?」

「どうして……どうして私の荷物を勝に触るのですか!」

澄子はく畳みながら、を交えずに言った。

「数に帰るなら、着替えが必でしょう」

「私はかないと言いましたよね!」

桜の声が震えた。澄子のがわずかに止まったが、すぐに線を逸らし、再びを詰め始めた。

「今、お互いに顔をわせていたって、いい話になんてならないわよ」

「だからと言って、私の部に勝に入って荷物をまとめる権利がどこにあるんですか!」

弓が気まずそうにドレッサーからを引っ込め、分けバッグを置いた。

「お義姉さん、母はただ、数お互いにれてやそうって言ってるだけなのよ……」

桜は弓を鋭く見据えた。

「弓さん、私があなたたちに荷造りをお願いしましたか?」

弓はごもり、線をに落とした。桜は澄子の方へと歩み寄り、スーツケースのちはだかった。

「私の持ち物に触らないでください!」

スーツケースのには、すでに数分の類と着、タオルが無造作に放り込まれていた。桜は膝をつき、それらのつずつ取りしてへ戻し始めた。

「桜さん」

澄子がく、威圧な声で呼んだ。桜のが止まる。澄子はまるで、分からずの子供を諭すような、恩着せがましい調で言った。

「あなた、今まともに体もかせないじゃないの。

自分じゃ準備もできないでしょうから、私たちが代わりに伝ってあげてるのよ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: