みかん小説
本棚

"余命半年からの再出発" 第13話

佳代子は結婚5目の、そのマフラーを編んだ。

翔太が幼く、夜泣きをする期だった。寝かしつけたあと、数段ずつ編んだ。

端の幅が揃わず、途で毛糸のし変わっている。

は、毎そのマフラーを使った。

も持っていたらしい。

佳代子は、捨てるか迷った。

へ返すことも考えた。

最終に、ほどくことにした。

針ずつ糸をす。

33に自分が作った形が、ゆっくり消えていく。

全部ほどくと、毛糸は癖がつき、まっすぐではなかった。湯へ通し、乾かしても、さな波が残った。

佳代子はその糸を使い、2つのさな子を作った。

つは紺のまま。

もうつには、しいい糸を混ぜた。

を捨てたわけではない。

元へ戻したわけでもない。

形を変え、今必とするのために使った。

その子を注文したのは、く連れ添った夫をくし、自分も治療を始めるという72歳の女性だった。

商品と緒に、佳代子はさなカードを入れた。

《無理にくならなくても丈夫です。つらいは休みながら、お使いください》

自分にも向けた言葉だった。

佳代子は今も、ではない。

検査のは眠れない。

して泣くもある。

翔太から連絡がなければ、になる。

姉と言い争えば、また関係が壊れるのではないかと怖くなる。

それでも以とは違う。

広告

怖いは、怖いと言える。

分からないは聞く。

助けてほしいは頼む。

そして、誰かがいないからという理由で、自分の治療や暮らしを諦めない。

夕方、佳代子はの作業を終え、台所へった。

分の噌汁を作る。

病気を告げられたには、2分の鍋をに泣いた。

今は最初から分だけを作る。

し寂しい。

に、ちょうどいいともう。

事を終えたあと、活費との売をノートへ記録した。来の病院代、材料費、費。以は誠に任せていた数字を、今は自分で確認する。

作業部には、発送する子が3つ並んでいる。

赤。

い桜

どれも、病気を隠すためだけの子ではない。

そのがそのらしい顔で、病院のるための子だった。

佳代子は窓をけた。

の夜の匂いが入ってくる。

まで、治ることだけが成だとっていた。

病気が消えれば元の自分へ戻れる。

族が戻れば、以活を取り戻せる。

けれど佳代子は、もう元へ戻りたいとはわなかった。

の自分は、誰かに必とされることでしか、自分の価値を確かめられなかった。夫の事を作り、息子の相談を聞き、えることで、自分がここにいていい理由を作っていた。

今は違う。

誰かに必とされないも、きていていい。

何も作れないも、休んでいい。

広告

治療がで泣くも、んでいないわけではない。

自分のためにきることは、族を捨てることではなかった。自分を族の最尾へ置かないことだった。

机ののスマートフォンが鳴った。

翔太からだった。

《来週そっちにく。何かべたい物ある?》

佳代子はし考えた。

《駅のクリームパン》

すぐに返事が来た。

《あれ普通のじゃない?》

佳代子は笑った。

《普通だからいいの》

送信したあと、窓のを見た。

くのかりがつき、の女性が歩いている。犬を連れた老が通り、所の子どもの笑い声が聞こえた。

何の記でもない夜だった。

佳代子はく息を吸った。

の桜を見られる保証はない。

それでも、来の予定をてていい。

再発しない保証はない。

それでも、しい布を注文していい。

族がいつまでもそばにいる保証はない。

それでも、会いたいには会いたいと言っていい。

佳代子は、作る子の型を机へ置いた。

今度の注文は、鮮やかな緑だった。

依頼者からのメモには、

《退院したら、この子をかぶってで旅きたい》

かれている。

佳代子は鉛で、型の周囲をなぞった。

度途切れた線も、別の所から引き直せる。

歪んだ布も、裁ち方を変えればしい形になる。

も同じだと簡単には言えない。

失った物は戻らず、傷は残る。

それでも、残ったをどんな形にするかは、まだ決められる。

佳代子は裁ち鋏をいた。

そして、自分のために始めたしいを、ゆっくり切りしていった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: