"消えた実印" 第14話
「美はってるの?」
「はい。自分に慮しなくていいと言われました」
「なら、私に聞く必ないでしょう」
「聞いてほしかっただけです」
文は湯呑みに茶を注いだ。
胸のどこかがざわついた。
織が別の男性と歩く姿を像すると、息子を裏切られたような気持ちが瞬浮かんだ。
すぐに、自分の考えを恥じた。
織はもう自由である。
達也との結婚を守るために、自分のを止める必はない。
「会えばいいじゃない」
文は言った。
「でも、すぐ結婚する必はないわよ。相の借は最初に調べなさい」
織が吹きした。
「そこですか?」
「番事でしょう」
「分かりました」
「あと、ご両親のこと。お子さんがいるなら、その関係も。おの使い方と、お酒をんだの態度も見なさい」
「いですね」
「嫌なら聞かなければいいの」
織は笑いながら頷いた。
庭では、切られた梅の枝が次々と面へ落ちていた。
文は最初、枝を切ることがを傷つけるとっていた。
だが混みった枝を減らさなければ、内側までが届かない。古い枝を落とすことで、しい芽が育つこともある。
族も同じだ、と簡単に言うつもりはなかった。
はほど素直に伸び直さない。
切った関係が元へ戻るとも限らない。
それでも、形を変えたあとにしか入らないはあるのかもしれない。
作業が終わる頃、梅のは驚くほどさくなっていた。
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「こんなに切ったの?」
文は満を言った。
職は笑った。
「丈夫です。来は、今より良いが咲きますよ」
文は半信半疑で枝を見げた。
織が隣にった。
「来、緒に確認しましょう」
「忘れてたら言って」
「ノートにいておきます」
そのの活メモには、文自がこういた。
《36 梅を剪定。切りすぎに見える。来、本当にが増えるか確認すること》
織はそのに、
《忘れずに見に来ます》
といた。
文が71歳になった、美は第志望の護学へ格した。
格発表の、美から泣きながら話がかかってきた。
「おばあちゃん、受かった」
「本当に?」
「番号、3回見た。お母さんにも見てもらった」
「写真は?」
「撮った」
「番号を違えてない?」
「だから、お母さんにも見てもらったってば」
文は話を切ったあと、仏壇の正雄へ報告した。
美の学費については、奨学、織の収入、文からの援助を組みわせることになった。
文は入学と初度の部を贈った。
全額ではない。
美自にも、借りた奨学をどう返すか考えてもらうためだった。
入学祝いの事会は、文のでいた。
織、由紀、美。
由紀の夫と息子も来た。
達也は呼ばなかった。
美が、まだ父親と会いたくないと言ったからだ。
文はその選択を尊した。
事の途、美が通の封筒をした。
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「お父さんから」
達也から、格祝いとが届いたという。
祝いは1万円だった。
以の達也なら、見栄を張ってきな額を用しようとしたかもしれない。今は毎の返済を続けながら、自分で払える範囲のを送ったのだろう。
「読んだの?」
文が尋ねると、美は頷いた。
「返事は、まだかない」
「それでいいとう」
織も何も言わなかった。
許す期を、周囲が決める必はない。
夕方、皆が帰ったあと、織だけが片づけを伝って残った。
「お義母さん、これ」
織がバッグから、さな箱をした。
にはるい琥珀の実印が入っていた。
半に注文し、貸庫へ入れていた物である。の続きに必となり、そのだけ織が付き添ってしてきた。
「きれいなですね」
「黒いのより見つけやすいでしょう」
「今は、ちゃんと返します」
織は両で差しした。
文も両で受け取った。
最初の実印を織が隠した、2のには疑いしかなかった。
文は嫁を棒だとい、織は姑へ真実を話すことを恐れた。
あの、実印が消えなければ、達也の計画はどこまでんでいただろう。文が何も分からないまま類へ印鑑を押していた能性もある。
「織さん」
文は印鑑を見ながら言った。
「最初の印鑑を持ちしたこと、本当はまだしってるのよ」
織は困ったように笑った。
「はい」
「私の物なんだから、先に言うべきだった」
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