"ラジオの涙" 第10話
父がいをかけて守ろうとしたのは、古いラジオでも、戦友との約束だけでもなかった。
誰かが帰ってこられる所を残すことだった。
戦争の記憶は、惨さを語るだけでは次の世代へ届かないことがある。しかし、族の「おかえり」を切にすること、無事に夜を迎えられたに謝すること、帰れなかったにも同じ常があったと像することなら、代が変わっても伝えられる。
に健は、ラジオと父の帳面を域の資料館へ寄贈した。展示札には、父の名や軍歴をきくかず、ただつのい文章を添えてもらった。
『このラジオので、ある父親は毎晩、族が無事に帰ったことを確かめていました』
展示を訪れた々は、傷のついた製ラジオのでを止めた。そこから正の声が聞こえるわけではない。茂の名を呼ぶ放送も、もう流れてはいない。
それでも午8になると、資料館の職員は度だけラジオの報を再現した音声を流した。
い報が館内へ響く。
その音を聞いたのには、自分の父や母をいす者がいた。戦争から帰った祖父が何も語らなかった理由を、初めて考える者もいた。そしてへ帰ったら、誰かに「ただいま」と言おうとう者もいた。
古いラジオがつないだのは、過のしみだけではなかった。
帰りを待つのと、帰ることのできる常。そして、もまた切なの声を聞けるかもしれないという、さな希望だった。
正が最期までにできなかった謝は、今もラジオの静かな箱のに残っている。
今も族が帰ってきた。
今も誰かと同じ卓を囲めた。
そしても、帰る所がある。
それこそが、戦争の終わったから正が守り続けた、何よりも切な平の形だった。
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