みかん小説
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"ラジオの涙" 第9話

そして何より、戦争の終わったあのに与えられた「」が、今も途切れず続いていることへの謝だった。

8

ラジオから報が流れるたび、正で同じ言葉を繰り返していたのだろう。

が終わった。

族が帰ってきた。

そして自分たちには、またがある。

それからさらにが流れ、健も父がくなった齢を越えた。子は90歳をに静かに息を引き取り、節子も方にむ娘のへ移った。佐藤で古いラジオを守っているのは、いつしか健になっていた。

ある所のから「戦の暮らし」をテーマにした展示へ、昔の活用品を貸してほしいという依頼が届いた。健は最初、アイロンや配袋だけをすつもりだったが、棚ののラジオを見て考えを変えた。

修理をねたラジオは、今もかろうじて音がた。健は父の捜索帳面や、放送局から届いた古いの写しとともに学へ持っていった。ただし、戦争をらない子どもたちに父の話が理解できるのか、もあった。

展示会の、ラジオのにはなほどくの児童が集まった。の箱から声が聞こえることも、周波数をわせるためにつまみをしずつ回すことも、子どもたちには珍しかった。

「テレビみたいに顔は見えないの?」

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「録音して、好きなに聞けないの?」

次々とんでくる質問に、健は笑いながら答えた。

「昔は、流れてくる声をそのに聞くしかなかったんだ。度聞き逃したら、もう度と聞けないこともあった」

すると、ろにいたの女の子が、父の帳面を指さした。

「このは、どうして毎同じ名を捜したの?」

し考え、父の正茂の話をした。戦で別れた友がいたこと。その妹も兄を捜していたこと。お互いがきていたにもかかわらず、すれ違い続けたことを、できるだけ静かな言葉で説した。

話を聞き終えた女の子は、しばらくラジオを見つめていた。

「じゃあ、このラジオは、を捜すためのものだったの?」

「それだけじゃないよ」

は答えた。

「帰ってきたを、毎確かめるためのものでもあったんだ」

女の子にはそのがまだ分からないようだった。それでも、へ帰ったら祖母に昔のことを聞いてみると言った。

展示が終わった、学から1通の作文が届いた。いたのは、ラジオので質問した女の子だった。

『私は毎、学から帰ると「ただいま」と言います。でも、族がいるのは普通だとっていました。昔は帰りたくても帰れないがいたとりました。これからは、お母さんが「おかえり」と言ってくれたら、しだけ事に聞こうといます』

は作文を読み終えると、父のように目を赤くした。

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が何も守った記憶は、戦争をる者がいなくなれば消えてしまうのではないかとっていた。しかし、記憶は来事をそのまま覚えてもらわなければ残らないわけではなかった。

の子どもが「ただいま」と「おかえり」のしだけ考える。それだけでも、父がラジオので流した涙は、次の代へ届いている。

はそのの815族を自宅へ招いた。はすでにくなっていたが、娘と孫が訪ねてきた。茂と正、2族が初めて同じちゃぶ台を囲んだ。

正午には全員で黙祷し、夜の8には古いラジオの源を入れた。雑音がしばらく続いた報の音がゆっくりと部へ響いた。

茂の孫が、格好な組の袋を膝のへ置いた。正の孫は、父が残した帳面をいた。かつて互いの消息をらなかった2つの族が、今は同じ部で同じ音を聞いていた。

は目を閉じ、父が毎晩見ていたものを像した。

の焼けた倉庫。置いてきた友。駅の防空壕跡。玉音放送を囲んだ々。そして、戦の借で笑っていた妻と子どもたち。

父は過だけを見ていたのではない。失われた景と、今そこにある景を、毎晩つにつなぎわせていたのだろう。

放送が終わると、健の孫ががった。

も来ていい?」

は笑って頷いた。

「もちろんだ。帰っておいで」

その言をにした、健はようやく分かった。

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