みかん小説
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"返されなかった合鍵" 第10話

「娘の奈です」

「初めまして」

2げた。

9歳違い。

血のつながりはない。

それでも互いに、相へ父親の痕跡を探しているように見えた。

最初の30分は、気との話しかできなかった。

誰も本題へ入れない。

千鶴が茶を入れ直している、美咲が奈に尋ねた。

野寺さんは、どんなお父さんでしたか」

奈は答えに迷った。

「普通です」

「普通?」

「真面目で、無で、々すごく頑固で。は将の番組を見ながら寝てました」

美咲は笑った。

「私のでは、よくしゃべっていました」

奈の笑顔が消えた。

美咲はそれに気づき、慌てて続けた。

「たぶん、私がずっとしゃべっていたからです。野寺さんは相づちを打っていただけで」

「テープ、聞きました」

千鶴が茶を置きながら言った。

「笑っていましたね」

美咲はうつむいた。

「すみません」

「なぜ謝るんです?」

「私のために、ご族との約束を破ったとりました」

奈がカップを置いた。

「美咲さんのせいじゃないです」

「でも」

「お父さんが決めたことです。美咲さんは子どもだった」

奈の声はかった。

美咲を慰めているというより、父親に責任を返しているようだった。

「私は、あなたに腹がっていないわけじゃありません」

美咲が顔をげた。

千鶴も驚いた。

「会うは、もっと腹がつとっていました。お父さんが私に使わなかったを、あなたには使ったから」

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奈」

千鶴が止めようとしたが、奈は続けた。

「でも、あなたを責めても違うとも分かっています。だから、今はどういう顔をすればいいか分かりません」

美咲はしばらく黙っていた。

「私も分かりません」

それから、美咲はし笑った。

「お父さんみたいだったと、言うべきではなかったですね」

「本当にそうったなら、言っていいです」

「でも傷つけました」

「傷つくことと、聞きたくないことは同じじゃありません」

千鶴は娘の横顔を見た。

いつのに、こんな言葉を言えるになったのだろう。

千鶴がらないで、奈も50きてきた。娘だとうと、いつまでも自分が守る側のようにじるが、奈には母親のらないがある。

昼過ぎ、3で青葉荘へ向かった。

美咲は203号ち止まった。

「覚えています」

すりを触る。

は変わったけど、階段の音は同じです」

鍵を渡すと、美咲自が扉をけた。

へ入る。

赤いランドセルを見ても、すぐにはづかなかった。

机。

ラジカセ。

カセットテープ。

押し入れ。

つずつ目で確かめた。

「もっと広いとっていました」

「子どもの頃の所は、そう見えることがありますね」

千鶴が言うと、美咲は頷いた。

ランドセルをける。

教科箱、連絡帳。

底には、折りで作ったさな犬が入っていた。

「母が作ったんです」

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美咲が笑った。

「犬を飼いたいって言ったら、代わりに」

笑いながら泣いていた。

奈が窓をけた。

が入り、古いカーテンが膨らんだ。

美咲は23本のテープを箱へ入れた。ランドセルも持ち帰ることにしたが、類や教科は処分してほしいと言った。

「全部持っていかなくていいんですか」

千鶴が尋ねる。

「全部残したら、また置き所を作るためにきることになりそうだから」

美咲はい運靴をに取った。

片方しかない。

「もう片方は、履いて逃げたに川へ落としました」

だった。

靴を片方なくし、裸で駅まで歩いた。助けてくれた女性に会うまで、美咲は駅のトイレに隠れていた。

「これを見ると、あのたさまでします」

靴を箱へ戻した。

「これは、捨ててください」

千鶴は頷いた。

、美咲は机の枚の写真を置いた。

夫と娘と3で撮った族写真だった。

野寺さんに、見せるつもりで持ってきました」

雅夫はもういない。

美咲はしばらく写真を見たあと、千鶴へ差しした。

「お仏壇に置いてもらえますか」

奈が先に答えた。

「置きましょう」

千鶴は娘を見た。

奈は写真の女を見ていた。美咲によく似た15歳の娘だった。

帰りので、美咲は窓のを眺めていた。

「母の墓へこうといます」

所は分かるんですか」

野寺さんの類にありました」

緒にきましょうか」

千鶴が尋ねると、美咲は首を振った。

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