"一万八千円の飯" 第2話
「お会計は、計64,800円でございます」
魚や老を頼んだことを考えれば、しいがあり得ない額ではない。
優馬はカードをそうとして細へ線を落とした。
その瞬、が止まった。
――特製鮮炊き込みご飯 18,000円。
優馬は細を顔のくまで引き寄せた。
見違いではない。
「……18,000円?」
ゼロが1つかった。
ちろうとしていた員を呼び止める。
「すみません。このご飯、打ち違えてませんか?」
員が戻ってくると、優馬は細の数字を指した。
「メニューでは1,800円だったとうんですが」
女性員の表が、ほんの瞬だけ曇った。
しかしすぐに営業用の笑顔へ戻ると、くをげた。
「お客様、変申し訳ございません。恐れ入りますが、のお客様のご迷惑となりませんよう、個で詳しくご説させていただいてもよろしいでしょうか」
その言葉に、優馬はさな違を覚えた。
単なるレジの入力違いなら、そので確認すれば済む話だ。
それでも葵と美を連れ、案内されるまま個へ移った。
扉が閉まった瞬、女性員の表から笑顔が消えた。
「改めまして、額に違いはございません。こちらの炊き込みご飯は18,000円となっております」
優馬はわず聞き返した。
「18,000円?」
「当の板メニューでございますので」
「メニューをもう度持ってきてもらえますか」
広告
運ばれてきたメニューをき、優馬は先ほど見たページを指した。
「ここです。俺には1,800円に見えたんですが」
「お客様の見違いでございます」
員は淡々と答えた。
「こちらには18,000円と記載されております。文字が々さいため、見づらかったのかもしれません」
優馬はメニューを引き寄せ、顔をづけた。
の細い文字が、の照のに溶け込んでいる。
目を凝らして確認すると――確かにそこには「18,000円」と印刷されていた。
「嘘……」
横から覗き込んだ葵が顔を変えた。
「ご飯1つで18,000円? 何が入ってるの。?」
美も気まずそうに財布へを伸ばした。
「もういいよ。私も頼んだ料理かったし、私がし払うから」
「いや、美さんは気にしなくていい」
優馬にとって、数万円を払うこと自体は問題ではなかった。
問題は、なぜこのホテルで、ご飯杯が18,000円なのかということだった。
彼はイギリスでホテル経営と原価管理を学んでいる。最級の材を使ったとしても、この料理が18,000円になる理由をいつけなかった。
優馬は度呼吸し、女性員を見た。
「責任者を呼んでください」
声を荒らげることはしなかった。
「この価格について、きちんと説してもらいます」
5分ほどして、黒いスーツ姿の男性が個へ現れた。
胸のネームプレートには「レストラン責任者 健」
広告
とある。30代半ほどで、客を見る目にはどこかを値踏みするようなたさがあった。
「責任者のでございます。何か問題がございましたでしょうか」
優馬は細を渡した。
「この炊き込みご飯です。最初にメニューを見た、1,800円だとって注文しました。でも会計では18,000円になっている」
は細を瞥すると、メニューをいた。
「記載の通り18,000円で違いございません」
「どうしてこの額なんですか?」
「最級の産帆、オーガニック卵、厳選されたブランド米を使用しております。板自ら仕げる品であり、この価格は妥当なものです」
優馬は呆れそうになった。
ので原価をざっと計算する。
どれほどく見積もっても、原価が数千円になるとはえない。
「仕入れ伝票を見せてもらえますか」
の眉がわずかにいた。
「何のためでしょう」
「本当に18,000円が妥当なら、原価構成をりたい。それに、俺が1,800円と見違えた理由も確認したい」
はメニューを閉じ、両をろで組んだ。
その態度には、先ほどまでの丁寧さより、らかな苛ちが混じっていた。
「お客様、メニューはホテルで正式に印刷されたものです。価格に疑問がおありでしたら、注文に確認すべきだったのではないでしょうか」
「……」
「注文し、お召しがりになった以、その価格に同されたということです。
べ終えてから額についておっしゃるのは、々筋違いかとじます」
言葉だけなら、理屈が通っているように聞こえる。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 9 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 0 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 0 -
完結第12話
寿司屋で暴かれた嫁
68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。因果応報|相続|親子関係1.7萬字5 0 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第11話
断髪新郎の逆転婚礼
抗がん剤治療で髪を失った彩佳は、唯一の家族である兄・健太の結婚式に出席することになった。 両親を亡くしてから、兄妹2人で支え合って生きてきた彩佳。兄の幸せを心から願い、母の形見のスカーフを巻いて式場へ向かう。 しかし、兄嫁の母・礼子は、そんな彩佳を見た瞬間、冷たい言葉を投げつけた。 「その頭で親戚席に座る気なの?」 病気の妹は縁起が悪い。式に出るな。兄との縁も切れ――。 追い詰められた彩佳の前に現れた健太は、笑顔のまま静かに言い放つ。 「では、新郎ごと帰りますか?」 その一言で礼子の顔色は変わった。 だが本当の反撃は、披露宴で用意されていた“新郎新婦、最初の共同作業”から始まる。兄弟姉妹|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第11話
赤ワインの逆転離婚
因果応報|夫婦1.6萬字5 0 -
完結第12話
桜袴の女組長
娘の入学式の日、シングルマザーの水島美咲は、校門の前でボスママ・霧谷礼子に袴を引き裂かれた。 それは、亡き母が一針一針仕立ててくれた大切な形見だった。さらに礼子は、娘の前で父親のいない家庭を嘲り、母の思い出まで踏みにじる。 美咲はただ黙って耐えていた。 娘の晴れの日を壊したくなかったから。 しかし、礼子が最後の一線を越えた時、美咲は静かにスマートフォンを取り出す。 5分後、校門前に次々と黒塗りの車が現れた。 誰も知らなかった。 この“貧しいシングルマザー”と見下された女に、学校中が凍りつくもう一つの顔があることを――。修羅場1.8萬字5 0 -
完結第15話
水を盗んだ隣人の末路
節約して家族旅行の資金を貯めようとした早紀。しかし届いた水道料金は、なんと15万円――。原因を探ると、隣人が高級盆栽の水やりのため、早紀の家の水道を無断使用していたことが発覚する。 注意しても反省せず、「隣なんだから少しくらいいい」と開き直る隣人。さらに、数千万円相当の盆栽の多くが他人から預かった大切な品だと分かり、事態は思わぬ方向へ進んでいく。 自分の水を守るために取った行動が、やがて隣人の人生と信用を大きく揺るがすことに――。 一滴の水から始まった、ご近所トラブルと家族の絆を描く逆転ストーリー。因果応報|人生逆転2.2萬字5 0