"朝5時の鬼電話" 第12話
もちろんに帰れば、事も育児も以と同じようにしてくれる。
ある朝。
私はいつものように5に起きた。
キッチンでコロッケのごしらえを確認し、お弁当箱へおかずを詰める。
半。
同じ朝5。
義母から鬼のような話がかかってきた。
『息子と0歳児を放置して朝帰り?』
『いいご分ね』
『このアバズレ』
あのは、何を言われているのかさえ分からなかった。
それがまさか、
私と同じを着た義妹が何度も夜を歩き、周囲へそうわせていたからだったとは。
今でも々いす。
もし京子が話してこなかったら。
もし輝が違を覚えなかったら。
私はいつまで、
「夜遊びする非常識な母親」
という噂をらずに暮らしていただろう。
そう考えると、し怖くなる。
「向」
玄関から輝の声がした。
「そろそろくよ」
「待って」
私はお弁当袋を持っていった。
「はい」
「ありがとう」
輝が受け取る。
「今の夕飯、作りコロッケだから」
その瞬。
輝の顔が、子供みたいにるくなった。
「マジ?」
「マジ」
「よし」
なぜか拳を握る。
「絶対定で帰る」
「仕事はちゃんとしてきてね」
「もちろん」
靴を履き、私を見る。
「ってきます」
「ってらっしゃい」
輝がた。
寝から娘の声がした。
「起きたかな」
私は娘のところへ向かった。
ベビーベッドを覗き込むと、娘がをばたつかせながらこちらを見ている。
広告
「おはよう」
抱きげる。
さな体は、以よりしくなっていた。
窓のは、もうるい。
らないへ引っ越し。
輝の職も変わった。
親戚との関係も変わった。
は、これからどうなるのかで仕方がなかった。
けれど今。
監されているかもしれないと怯えることはない。
スーパーで周囲の線を気にする必もない。
娘と散歩へける。
母と買い物へける。
輝は毎帰ってくる。
族3で夕を囲む。
それで分だった。
そのの夕方。
玄関がいた。
「ただいま!」
いつもよりしい。
「本当に定だったの?」
「言っただろ」
輝は娘を抱きげる。
「ただいまー」
娘が嬉しそうに笑う。
私は揚げたてのコロッケを皿へ並べた。
「洗ってきて」
「はい」
「娘も先にお願い」
「任せろ」
キッチンから、2の声を聞く。
特別なことは何もない。
豪華でもない。
ただの平の夕。
それでも私は、その普通のがどれほど切なのかっていた。
結婚とは、誰かを所することではない。
族だからといって、何をしても許されるわけでもない。
相を事にするというのは、自分のい通りにすることではなく、そのが選んだを尊することなのだとう。
里がいつか、そのことに気づくかどうかは分からない。
京子が現実を受け入れられるが来るのかも分からない。
広告
けれど、それはもう私たち夫婦が背負う問題ではない。
私が守りたいものは、ここにある。
「向」
「何?」
輝が卓から呼ぶ。
「やっぱりこのコロッケ、最」
私はわず笑った。
「また独り占めしたいとか言わないでよ」
「族3ならいいんだよ」
「娘がべられるようになったら、輝の分減るよ」
「それは困るな」
真剣な顔をするので、また笑ってしまう。
娘もは分からないまま、緒になって声をげた。
あの。
朝5の話から始まった騒は、私たちの活をきく変えた。
む町も。
職も。
親戚との距も。
けれど失ったものばかりではない。
むしろ私は、輝がどれだけ自分と娘を事にしてくれているのか、以よりくることができた。
輝もまた、
「族を守る」
という言葉の本当のを考えたのだとう。
今夜も娘を寝かしつけた、の弁当のごしらえをする。
の朝も、たぶん5に起きる。
キッチンへき、輝の弁当を作る。
けれど今度は、スマートフォンが震えても以ほど怯えないだろう。
私にはっているからだ。
誰かが勝に作った噂より。
誰かの歪んだ執着より。
毎積みねてきた族のの方が、ずっとい。
そして何より。
どんなことが起きても、私と輝はきちんと向きって話しい、娘を守るために同じ方向を向ける。
それさえ分かっていれば、もう丈夫だ。
「向、コロッケおかわり」
「はいはい」
「個」
「個」
「何で?」
「のお弁当用」
「俺の弁当?」
「そう」
輝はすぐ笑った。
「じゃあする」
私は皿に残った最のコロッケを保容器へ入れた。
の朝。
またいつものが始まる。
今度こそ、誰にも邪魔されない。
私たち族の、穏やかな毎が。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
消えた実印
嫁が実印を隠した本当の理由。 姑が泥棒だと思った相手は、家を守るために動いていた。 70歳の誕生日を前に、仏壇から消えた大切な実印。 前日に家へ来ていたのは、長男の嫁・香織だけだった。 家の売却を調べていた嫁。 勝手に印鑑を持ち出した嫁。 文江は、すべてを裏切りだと思っていた。 しかし、弁護士から届いた一通の書類によって、隠されていた真実が明らかになる。 母の家を売ろうとしていた本当の人物は誰なのか。 そして、嫁が命をかけて守ろうとしていたものとは――。嫁姑|親不孝2.3萬字5 0 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 0 -
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 0 -
完結第13話
冷えた雑煮の逆転正月
元日の夜、シンガポール出張から1日早く帰国した佐藤健一は、実家の食卓に妻・弓の席だけがないことに気づく。 暖かい居間では、母と弟が豪華なおせちを囲んで笑っていた。だが弓は、冷え切った台所の隅で、たった1人、冷たい雑煮をすすっていた。 15年間、夫の不在中に何が起きていたのか。 赤切れた手、擦り切れたカーディガン、使わせてもらえないお湯。そして、父が遺したはずの3000万円の預金に残されていた、不可解な出金記録。 健一は怒りを飲み込み、その場では何も言わなかった。 翌朝、妻を呼び出した彼は、ついに決断する。 だが金庫を開けた時、そこにあったのは消えた遺産だけではなかった。弓の名前が書かれた、覚えのない離婚届。そして母と弟が隠していた、さらに深い裏切りの証拠。 元日の冷たい台所から始まった夫婦の反撃は、やがて家族の嘘を一つずつ暴いていく――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 8 -
完結第12話
午前3時の離婚届
午前3時17分。夫・俊介は帰ってこなかった。 その夜、日本へ戻ってきていたのは、夫の“初恋の女性”だと思っていた田中雪。彼女のSNSには、高層ホテルの夜景、二つのワイングラス、そして私が夫に贈ったはずの腕時計が写っていた。 3年間、木村家の嫁として髪も服も仕事も変え、良い妻になろうとしてきた私。けれど夫が本当に優しくしていた相手は、私ではなかったのかもしれない。 そう思った朝、私は義母に離婚届を差し出し、1億2000万円を受け取って家を出た。 だが数日後、夫は離婚届を握りしめ、泣きながら私を捜し始める。 初恋の女性、隠された写真、失くしたはずのブレスレット。 私たちの結婚は、本当に嘘から始まっていたのか――。嫁姑|不倫1.8萬字5 8 -
完結第14話
身代わり妻の逆転帰還
夫の代わりに罪を被り、2年間刑務所で耐え続けた佐藤由美。 亡き父が残した会社を守るため、そして夫・健一を信じるために、彼女はすべてを背負った。だが出所の日、ようやく帰った家で待っていたのは、姑の平手打ちと、夫から投げつけられた離婚届、そして若い愛人の勝ち誇った笑みだった。 「前科者のくせに、まだうちの息子と暮らす気なの?」 すべてを失ったように見えた由美は、泣き崩れることなく、ただ一本の電話をかける。 刑務所で出会った一人の女性。亡き父が残していた最後の言葉。仏壇の下に隠されたUSBメモリ。 2年前の事件は、本当に由美の罪だったのか。 翌日から、夫と愛人、そして由美を切り捨てた家族の嘘が、静かに崩れ始める――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 0 -
完結第10話
捨てられた妻の逆転相続
十年間、義母の介護を一人で背負い続けた妻・恵子。 しかし、四十九日の法要が終わった直後、夫から告げられたのは「もう君の役目は終わった」という冷たい離婚宣告だった。 家族のために尽くしてきた年月を、ただの「役目」としか見ていなかった夫と息子。 何も言い返さず家を出た恵子だったが、翌日、誰も知らなかった一通の封筒が加納家で見つかる。 そこに記されていた亡き義母の最後の意思が、家族の運命を大きく変えていく――。嫁姑|夫婦|介護1.4萬字5 707 -
完結第11話
私を変えた元嫁
老舗和菓子店「宮本屋」を守ってきた宮本美津江は、一人息子の結婚相手・梨奈を初めて見た時、心の中でこう思った。 「この子なら、教えれば変えられる」 靴の揃え方、挨拶、お辞儀、言葉遣い、店での立ち居振る舞い。美津江はかつて自分が姑に教え込まれたように、嫁である梨奈を“宮本屋にふさわしい人”へ育てようとした。 最初は頼りなかった梨奈も、やがて店の顔となり、若女将として客に愛される存在になっていく。売上も伸び、雑誌やテレビにも取り上げられ、美津江は誇らしげに言った。 「この子は、私が育てたのよ」 けれどその言葉は、少しずつ梨奈の心を傷つけていた。 そんな中、息子・拓海の裏切りが発覚する。梨奈は家を出て、宮本屋を去る決意をするが、美津江が最初に心配したのは、嫁の心ではなく店の未来だった。 梨奈は本当に、美津江に育てられただけの嫁だったのか。 そして、宮本屋に残された美津江は、梨奈のいない店で初めて、自分が何を奪い、何を見落としてきたのかを知る。 嫁を変えようとした姑と、自分の人生を取り戻そうとした元嫁。 これは、家族でも他人でもない二人の女性が、衝突の末にもう一度向き合っていく物語。嫁姑|第二の人生1.6萬字5 274 -
完結第11話
捨てた料理の代償
義母・美智子と同居しながら、穏やかに暮らしていた奈々子。 ところが、お盆になると義妹の杏奈夫婦が突然帰省してくる。連絡もなく家へ上がり込み、食事を当然のように食べ、手伝いもせず、さらには義母へ金まで借りようとする二人。注意されるたび、杏奈は奈々子を「他人」扱いし、実家を乗っ取った嫁のように責め続けていた。 そして迎えたお盆の夕食。 食卓に並んだ料理を見た杏奈は、皆の前で言い放つ。 「他人が作った食事なんて、汚くて食べられない」 さらに翔太まで調子に乗り、料理を捨てようとする。 しかし、その料理には杏奈夫婦が知らない“ある秘密”があった。 閉じられていた和室の襖が開いた瞬間、杏奈の顔色は一変する。 翌朝、この家を出ていくことになったのは、「他人」と呼ばれた奈々子ではなかった――。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 6262 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 1389