"朝5時の鬼電話" 第7話
「……」
「結局、お兄ちゃん専属の政婦でしょ。本妻は私の方がふさわしいの」
その言葉には、輝だけでなく正まで顔を張らせた。
「里、いい加減にしろ!」
正が声を荒らげる。
「向さんに失礼すぎる!」
普段ほとんどらない正が、娘を真正面から叱っている。
だが里は聞かない。
「お父さんは黙ってて!」
「黙れるか!」
私は娘を抱き直した。
こんな所にくいさせたくない。
すると正がくをげた。
「向さん」
「お父さん……」
「里のことは俺が責任を持って病院へ連れていく」
言葉を選ぶように続ける。
「今のところは……これ以事にせず、任せてもらえないだろうか」
私は迷った。
里がしたことはらかに異常だった。
けれど正は現実から逃げず、
「専に診てもらう必がある」
と判断している。
このに任せるなら。
そういかけただった。
「嘘よ!」
今まで呆然としていた京子が、突然叫んだ。
「何で里が病院にくのよ!」
「京子」
「この子は病気なんかじゃない!」
京子は里を見た、私へ線を向けた。
「きっと輝が向さんなんかと結婚したから、里がおかしくなったのよ!」
「……え?」
を疑った。
「向さんと結婚したこと自体が違いだったのよ!」
目のが暗くなる。
私たちは反対を押し切って結婚したわけではない。
結婚の挨拶では、京子自が、
「輝をよろしくお願いします」
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と言ってくれた。
それなのに。
「そうよ」
京子は何か名案をいついたように顔をげた。
「いっそ婚すればいいのよ」
「母さん」
輝の声が変わった。
「輝が実に戻ってきて、また族4で暮らせばいいじゃない」
さらに娘を見る。
「お孫ちゃんも緒に」
私は娘を抱く腕に力が入った。
「向さんはいつまでここにいるの?」
「……」
「お孫ちゃんを置いて帰って。私が育てるわ」
ので何かが切れた。
私たちの娘だ。
夜に何度も起きて授乳して。
輝と交代で抱き。
がれば緒にになり。
たった6かでも、私たちが必に守ってきた子供。
それを、
「置いて帰れ」
だなんて。
「お母さ――」
私が声をげるより、輝の方がかった。
「いい加減にしろ、母さん!」
部が静まり返った。
輝の顔を見て、私でさえ瞬怖くなるほどだった。
「里をかばうだけなら、まだ分かる」
い声で続ける。
「でもそれ以向と娘に何か言ったら」
度言葉を切る。
「里だけじゃない。母さんとも絶縁する」
京子の顔が固まった。
「輝?」
「本気だ」
「何でよ!」
先に叫んだのは里だった。
「何で私とお母さんなの! 縁切るのはその女でしょ!」
「その女って言うな」
「向さんなんて、お兄ちゃんのこと何も分かってないじゃん!」
里は必だった。
「婚旅のだって、国のお集めるの好きなお兄ちゃんに、アメリカの貨を違えて渡してたじゃん!」
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その瞬。
私は息が止まりそうになった。
輝も固まる。
「……待って」
声が震えた。
「何で里ちゃんが、そのことってるの?」
婚旅。
私が輝へ貨を渡した、さな勘違いをした。
夫婦のだけで笑った、ほんの些細な来事。
誰にも話していない。
里は瞬黙り、
あっさり答えた。
「ついてったからに決まってるでしょ」
背をたいものがった。
「……何?」
「あんたがお兄ちゃんに本当にふさわしいのか確認するために、婚旅ずっと監してたの」
私は元が揺れる覚に襲われた。
そういえば。
婚旅へ発するし、里もどこかへ旅すると聞いた記憶がある。
まさか。
きの。
ホテル。
観先。
帰りのまで。
「ずっと?」
輝がかすれた声で聞く。
「うん」
里は当然のように頷いた。
その瞬、輝の顔からりが消えた。
代わりに浮かんだのは、
底怯えたような表だった。
「悪い、里」
「何?」
「それ……気持ち悪すぎて無理だ」
里の顔が崩れた。
「え?」
「今、俺たちに関わらないでくれ」
「何でよ!」
「族だからって許される範囲を、とっくに超えてる」
婚旅まで追跡。
妻になりすまし。
評判を落とす。
アルバムの改ざん。
輝はようやく、
「妹だから」
という最の線さえ切ったのだ。
「こんなに好きなのに!」
里は泣き叫んだ。
「お兄ちゃんのためにずっと頑張ってきたのに!」
「俺は頼んでない!」
輝の声が響く。
「なんで分からないんだよ!」
「向さんのせいよ!」
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