"嘘葬りの豆腐店" 第10話
だが藤は続けた。
「現照です。誰がこれを握って振り回したのか、の問題ですよ。今からでも正直に話せば、状酌量の余はあります。最までしらを切って、指紋の結果がたら、そのは遅れです」
静のが机ので震え始めた。
藤は封筒から、もう1枚のを取りした。
「それから、これ。息子さんの徹也さんがいたものです」
静は震えるでを取った。
そこには、殴りきの文字が並んでいた。
「母親が鉄棒を持ちました。俺は止めましたが、母親がかっとなって……」
それもまた、藤がいた偽物だった。
しかし静には、もう静に見抜く余裕がなかった。
「徹也が……うちの徹也が、これをいたっていうのかい」
藤は何も答えなかった。
その沈黙が、静のを崩した。
を捧げて守り抜いた息子が、自分を売った。
そうった瞬、静の最の糸が切れた。
「うわあああああ」
静は獣のように泣き叫んだ。
「そうだよ。私がやったんだよ。私が、あの女のを鉄棒で殴った」
藤は静かに子へ座り直した。
「何があったんですか」
静は涙と唾をばしながら叫んだ。
「あの女が、徹也を警察に突きすって言ったんだ。ギャンブルの借を返すをせって言っても、絶対に渡さない、んでも渡さないって悪態をついた。徹也のを邪魔しようとしたんだよ」
広告
「それで殴った」
「ああ。かっとなって、そばにあった鉄棒で1発殴った。1発殴っただけで倒れたんだ。あんなにあっけなくかなくなるなんて、わなかった」
静は両で顔を覆い、崩れ落ちるように泣いた。
「徹也……この来損ないの母親が、お1を助けようとしてこんな恐ろしいことをしたのに、おが私を売るなんて」
藤はちがった。
「供述調をまとめます。そのに署名してください」
取調をた藤に、輩刑事が駆け寄った。
「藤さん、さっきの指紋、本当にたんですか?」
藤は首を横に振った。
「ていない。錆がひどすぎて指紋も何も残ってなかった」
輩刑事は目を丸くした。
「じゃあ、徹也が母親を売ったっていう類は……」
「俺が適当にいたものだ」
輩刑事はをけたまま固まった。
藤は窓ののを見つめた。
「錆びた鉄屑はものを言わない。だがはを滑らせる。互いを信じきれない族が、自分たちので崩れただけだ」
6、コンクリートのに閉じ込められていた真実は、ようやくへた。
次に必なのは、何があのの夜に起きたのかを、完全にらかにすることだった。
19911116、茨の空は穴でもいたかのようにをらせていた。
粒がトタン根を叩く音は、鳴をみ込もうとするほど激しかった。豆腐の居では、の匂いを嗅ぎつけて理性を失った徹也が暴れていた。
広告
「、どこに隠した。くせ」
徹也は美の髪を掴み、乱暴に揺さぶった。
美は恐怖で顔を引きつらせながらも、必に徹也のを振り払った。
「だめよ。これは優の学費なの。絶対にだめ。んでも渡さない」
徹也の瞳がぎらぎらとった。
賭で全財産をすり、翌までにを返さなければただでは済まないとに脅されたばかりだった。
「このままだと俺がにそうだってのに、が惜しいのか」
徹也は鳴り、作業靴のまま美の脇腹を蹴りげた。
鈍い音が部に響いた。
美はい鳴をげ、へ崩れ落ちた。脇腹を押さえ、えびのようにを丸める。息をするたびに激しい痛みがった。
それでも徹也は気にしなかった。
タンスの扉をけ、布団を放り投げ、押し入れを荒らしていく。
「くそ、体どこに隠しやがった」
徹也はを見つけられないまま、りに任せて部をた。
「今夜に見つからなかったら、このにをつけてやるからな」
のへ消えていく徹也の背を、美はのから見ていた。
部のに残されたのは、音と彼女の荒い息だけだった。
その、閉まっていたドアが静かにいた。
姑の静が入ってきた。
静はぐちゃぐちゃになった部をたく見回し、に倒れている美のにった。
「優の母親なんだから、げさに痛がるのはやめて起きがりな」
そこには配など欠片もなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 0 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 2 -
完結第13話
消えた母の 10 年地下室
1993 年、お盆の帰省途中で姿を消した若い母親―10 年後、地下室で衝撃の真実が明らかに! 隣に住む親切な青年が、彼女を長年地下室に監禁していた悪夢の物語。 幼い息子だけが地下室に隠れた母と遭遇し、守らなければならない秘密を抱える。 夫の不審な観察、祖母の疑念、犯人の焦り… 積もった疑惑がついに決定的な瞬間を迎える。 10 年間の監禁、脅迫、欺瞞が一気に暴かれる衝撃結末。 失われた家族の絆が、長い悪夢を乗り越えて再びつながるまでの全記録。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
マカオに消えた花嫁
2010年4月、マカオへ新婚旅行に訪れた日本人夫婦・田中浩司と山田愛子は、ホテルに荷物を残したまま忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、観光地の監視カメラに映った2人の姿。部屋に争った形跡はなく、財布も荷物もそのまま。誘拐か、事故か、それとも自ら消えたのか――事件は真相不明のまま、12年という歳月に埋もれていった。 しかし2022年、1人の女子大生がSNSで見つけた写真が、凍りついた時間を動かす。 マカオの街で中国人女性と寄り添う中年男性。その顔は、12年前に失踪したはずの夫・田中浩司に酷似していた。 では、彼と一緒に消えた妻・愛子はどこへ行ったのか。 幸せな新婚旅行の裏で、あの夜、本当は何が起きていたのか。 SNSに映った“夫の顔”が、12年間隠されてきた衝撃の真実を暴き出す。ミステリー|真実|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
消えた23人の観光団
2025年9月29日、福岡に約2700人の団体観光客が一斉に降り立った。 その日を境に、日本各地で不可解な失踪が相次ぎ始める。タクシー運転手、配達員、宿泊施設の関係者――いずれも夜、一人で行動することの多い男性たちだった。 やがて糸島の海岸で発見された身体の一部が、事件の扉を開く。 捜査を進める刑事・鈴木健二は、失踪した観光客、黒いワゴン車、古い倉庫、医療機器販売会社、そして横浜港へ向かう冷凍コンテナという、ばらばらに見えた点を追い始める。 これは単なる失踪事件ではない。 観光の人波に紛れ、日本の空き倉庫や港を利用して動いていた国際犯罪組織。その裏には、人間を“商品”のように扱う恐ろしい取引が隠されていた。 救える命はまだ残っているのか。 そして、海へ消えた男と「王」と呼ばれる人物の正体とは――。 福岡から始まった小さな違和感は、やがて日本全体を揺るがす闇へとつながっていく。ミステリー|真相2.0萬字5 0 -
完結第13話
24年目の手紙
1978年、神戸の坂の町で、12歳の少年・健二が自宅前から忽然と姿を消した。 母・よし子が最後に見たのは、新しく買ってあげた真っ白なスニーカーを履き、嬉しそうに坂道を駆け下りていく息子の後ろ姿だった。 学校にも行かず、家にも戻らなかった健二。近所の証言では、彼は知らない男と笑いながらバスに乗っていたという。警察は「家出」と見なしたが、よし子だけは信じなかった。 息子は必ず帰ってくる。 そう信じて、よし子は24年間、古い家を離れず、毎年6月になると玄関に新しい白いスニーカーを置き続けた。 そして2002年の夏、アメリカから一通の書留が届く。 差出人の名前は――高橋健二。 そこに記されていたのは、24年前のあの日、少年を連れ去った人物の名前と、母が知らなかった残酷な真実だった。ミステリー|真実2.0萬字5 0 -
完結第11話
湖底の白衣
1973年12月、東京で小さなクリニックを営む女医・田中恵美子が突然姿を消した。 患者から深く信頼され、無断で仕事を休むことなど一度もなかった彼女は、その日もいつも通り診察をしていた。ところが午後3時、恵美子は「急な往診に行ってきます」と看護師に告げ、水色のトヨタ・コロナに乗ってクリニックを出たまま戻らなかった。 しかし後に分かったのは、その往診依頼が存在しなかったという事実だった。 部屋に争った跡はなく、生活用品もそのまま。だが、失踪前の彼女には深夜の電話、大きな現金の引き出し、そして誰にも言えない異変があった。 事件か、失踪か、それとも別の理由があったのか。 答えのないまま21年が過ぎた1994年、神奈川県の芦ノ湖で潜水していたダイバーが、湖底に沈む古い車を発見する。 引き上げられた車は、21年前に田中恵美子が乗って消えたトヨタ・コロナだった。 だが車内に、彼女の姿はなかった。 湖底から現れた車、医学書の間に残された手紙、そして失踪直前に彼女が隠していた本当の苦しみ。 誰からも信頼された女医は、あの日なぜ東京を離れ、遠い湖へ向かったのか――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 0