"嘘葬りの豆腐店" 第2話
く刈りげた髪、だぶついたジャンパー、無表な目つき。彼らは先に目もくれず、のまま豆腐へ踏み込んでいった。
「おい、全部引きずりせ。さっさと片付けろ」
先につ男の鳴り声に、先で餌をついばんでいた鳩たちが斉にびった。
豆の甘い匂いが残る内は、瞬で修羅に変わった。
作業を掃除していた静は、にしていた雑巾をに叩きつけた。
「あんたたち、体誰だい。のにでがり込んで、何の真似だ」
ゴム袋をはめたまま、静は男たちのにちはだかった。
老いても、その目つきは鋭かった。40以、商で商売を続けてきた女の迫力があった。普通の相なら、そのだけで怯んだかもしれない。
しかし、取のリーダーらしき男は、瞬きもしなかった。
男は懐から分い類の束を取りし、静の胸元へ乱暴に突きつけた。
「裁判所から来ました。制執です」
乾いた声が内に響いた。
静は類を奪うように受け取り、目をらせた。次の瞬、に投げ捨てる。
「制執? 何の冗談だい。ここは私のだよ。私のなんだよ」
リーダーはに落ちた類には見向きもせず、部たちに顎で図した。
「作業始。邪魔するなら引きずりせ」
男たちは奥の居へ踏み込んだ。すぐにタンスの扉がけられる音、皿が割れる音、布団がへ落ちる音が響いた。
広告
活の匂いが染み込んだ財具が、容赦なくのだらけの面へ放りされていく。
「やめな、このろくでなしども。罰がるよ」
静は男の腕にすがりついて抵抗した。
しかし、屈な男たちの力にかなうはずもなかった。彼女はだらけの面に膝をつき、声を枯らして叫んだ。
そのに、リーダーがしゃがみ込んだ。
男はい笑みを浮かべ、い声で言った。
「ばあさん、悔しかったら息子さんに文句を言いな。徹也さんがこのの権利を担保にして、からをつまんでたこと、まさからなかったのか」
静の声がぴたりと止まった。
彼女の瞳が震でも起きたように揺れた。血の気が引いた顔で、静はゆっくりと首を向ける。
「徹也が……徹也がやったって?」
静の線の先、部の隅に徹也がいた。
38歳の男が、壁に背をぴったりつけ、震えていた。髭も剃らず、目は泳ぎ、まるで追い詰められた鼠のようだった。
「徹也、これはどういうことだい。あんた、本当に権利を持ちしたのかい」
静の声は震えていた。
徹也は俯いたまま、をぱくぱくさせるだけだった。
リーダーが、たくとどめを刺した。
「ギャンブルの借だけで2000万円超えです。利子をわせりゃ3000万円ですよ」
その言葉に、静の膝から力が抜けた。
40、毎豆腐を作り続け、ただ1息子だけを頼りにきてきた。
広告
その息子がの権利を盗みし、ギャンブルで全てを吹きばしたという事実が、彼女のでは受け止めきれなかった。
「どうして……どうしてあんたが私にこんな仕打ちを」
静はのに座り込んだまま、呆然とのを見つめていた。
その、の裏からい械音が聞こえた。
巨なショベルカーが、狭いをこじけるように入ってきていた。ろからやってきた債権者が、リーダーにを振って叫んだ。
「おい、裏に古いボイラーがあるだろう。あれから先にぶっ壊せ。駐のスペースにするんだ」
ボイラー。
その言葉を聞いた瞬、静の目がかっと見かれた。
魂が戻ったように、彼女はガバッとちがった。
「だめだ。あの部だけは絶対にだめだ」
静は裏へり、ショベルカーのに両を広げてちはだかった。
運転が慌ててブレーキを踏む。
「ばあさん、にてえのか。どけよ」
しかし静は歩も引かなかった。
「絶対にだめだって言ってるだろう。あそこは呪われた部なんだよ。触ったらただじゃ済まないよ」
騒ぎを聞きつけ、商の主たちが1、また1と集まり始めた。巻きに見つめる々のに、穏なざわめきが広がる。
債権者は舌打ちし、男たちに図した。
「呪いだと? 馬鹿馬鹿しい。さっさと引きずりして壊せ」
男2が静にづき、両腕を掴んだ。
静は必にをよじった。
「しな、この悪党ども。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 0 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 2 -
完結第13話
消えた母の 10 年地下室
1993 年、お盆の帰省途中で姿を消した若い母親―10 年後、地下室で衝撃の真実が明らかに! 隣に住む親切な青年が、彼女を長年地下室に監禁していた悪夢の物語。 幼い息子だけが地下室に隠れた母と遭遇し、守らなければならない秘密を抱える。 夫の不審な観察、祖母の疑念、犯人の焦り… 積もった疑惑がついに決定的な瞬間を迎える。 10 年間の監禁、脅迫、欺瞞が一気に暴かれる衝撃結末。 失われた家族の絆が、長い悪夢を乗り越えて再びつながるまでの全記録。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
マカオに消えた花嫁
2010年4月、マカオへ新婚旅行に訪れた日本人夫婦・田中浩司と山田愛子は、ホテルに荷物を残したまま忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、観光地の監視カメラに映った2人の姿。部屋に争った形跡はなく、財布も荷物もそのまま。誘拐か、事故か、それとも自ら消えたのか――事件は真相不明のまま、12年という歳月に埋もれていった。 しかし2022年、1人の女子大生がSNSで見つけた写真が、凍りついた時間を動かす。 マカオの街で中国人女性と寄り添う中年男性。その顔は、12年前に失踪したはずの夫・田中浩司に酷似していた。 では、彼と一緒に消えた妻・愛子はどこへ行ったのか。 幸せな新婚旅行の裏で、あの夜、本当は何が起きていたのか。 SNSに映った“夫の顔”が、12年間隠されてきた衝撃の真実を暴き出す。ミステリー|真実|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
消えた23人の観光団
2025年9月29日、福岡に約2700人の団体観光客が一斉に降り立った。 その日を境に、日本各地で不可解な失踪が相次ぎ始める。タクシー運転手、配達員、宿泊施設の関係者――いずれも夜、一人で行動することの多い男性たちだった。 やがて糸島の海岸で発見された身体の一部が、事件の扉を開く。 捜査を進める刑事・鈴木健二は、失踪した観光客、黒いワゴン車、古い倉庫、医療機器販売会社、そして横浜港へ向かう冷凍コンテナという、ばらばらに見えた点を追い始める。 これは単なる失踪事件ではない。 観光の人波に紛れ、日本の空き倉庫や港を利用して動いていた国際犯罪組織。その裏には、人間を“商品”のように扱う恐ろしい取引が隠されていた。 救える命はまだ残っているのか。 そして、海へ消えた男と「王」と呼ばれる人物の正体とは――。 福岡から始まった小さな違和感は、やがて日本全体を揺るがす闇へとつながっていく。ミステリー|真相2.0萬字5 0 -
完結第13話
24年目の手紙
1978年、神戸の坂の町で、12歳の少年・健二が自宅前から忽然と姿を消した。 母・よし子が最後に見たのは、新しく買ってあげた真っ白なスニーカーを履き、嬉しそうに坂道を駆け下りていく息子の後ろ姿だった。 学校にも行かず、家にも戻らなかった健二。近所の証言では、彼は知らない男と笑いながらバスに乗っていたという。警察は「家出」と見なしたが、よし子だけは信じなかった。 息子は必ず帰ってくる。 そう信じて、よし子は24年間、古い家を離れず、毎年6月になると玄関に新しい白いスニーカーを置き続けた。 そして2002年の夏、アメリカから一通の書留が届く。 差出人の名前は――高橋健二。 そこに記されていたのは、24年前のあの日、少年を連れ去った人物の名前と、母が知らなかった残酷な真実だった。ミステリー|真実2.0萬字5 0 -
完結第11話
湖底の白衣
1973年12月、東京で小さなクリニックを営む女医・田中恵美子が突然姿を消した。 患者から深く信頼され、無断で仕事を休むことなど一度もなかった彼女は、その日もいつも通り診察をしていた。ところが午後3時、恵美子は「急な往診に行ってきます」と看護師に告げ、水色のトヨタ・コロナに乗ってクリニックを出たまま戻らなかった。 しかし後に分かったのは、その往診依頼が存在しなかったという事実だった。 部屋に争った跡はなく、生活用品もそのまま。だが、失踪前の彼女には深夜の電話、大きな現金の引き出し、そして誰にも言えない異変があった。 事件か、失踪か、それとも別の理由があったのか。 答えのないまま21年が過ぎた1994年、神奈川県の芦ノ湖で潜水していたダイバーが、湖底に沈む古い車を発見する。 引き上げられた車は、21年前に田中恵美子が乗って消えたトヨタ・コロナだった。 だが車内に、彼女の姿はなかった。 湖底から現れた車、医学書の間に残された手紙、そして失踪直前に彼女が隠していた本当の苦しみ。 誰からも信頼された女医は、あの日なぜ東京を離れ、遠い湖へ向かったのか――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 0