"追放母の25億売却" 第10話
彼はテーブルへ突っ伏し、子供のように泣いた。里奈も顔を覆い、肩を震わせた。
はそんな2を静かな目で見つめていた。
「もういいのよ」
自分のご飯をひとべてから、穏やかに続けた。
「これが、私たち3でべる最の事になるから」
声は優しかったが、取り消すことのできない決が込められていた。
りや憎しみは、もうのにはなかった。ただ、息子との縁を自分ので断ち切らなければならない、いしみだけが残っていた。
事とも呼べないが終わると、は静かに席をった。
「もうくわ」
健太が慌ててを追った。
「どこへくんだ、母さん」
「崎へ帰るのよ。私の本当のに」
は振り返らず、玄関へ向かった。にしているのは、さなボストンバッグだけだった。
扉へをかけたところで、度だけ息子を振り返る。
瞳には涙が浮かんでいた。
「元気でね、健太」
最に母親としての優しい笑みを浮かべた。しかしその笑顔は、あまりにも儚く、しかった。
扉が閉まり、の姿が見えなくなる。
健太は玄関へ崩れ落ちた。
母がにしていたのは、崎へ帰るための片切符だった。その切符が、度と元へ戻ることのない決別をしていると、健太には痛いほど分かっていた。
崎へ向かう列の窓から、京の並みが猛烈な速さでざかっていった。
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は流れていく景を、何も考えずに眺めていた。
すべてを終わらせた堵と、の奥底に残る寂しさが、静かに混じりっている。
息子をしていなかったわけではない。今でも、健太がまれたのことを鮮に覚えている。
さな指での指を握った温かさ。初めて母さんと呼んだ声。をして眠れなかった夜も、学格を緒にんだ朝も、何1つ忘れてはいない。
それでも、しているからこそれなければならなかった。
自分が与え続ける限り、健太は本当ので自分のでつことができない。母親の犠牲を当然だとい、の尊厳を見失ったままきていくことになる。
崎駅へりつと、懐かしい潮のりが全を包んだ。
「ああ、帰ってきた」
自分の居所へ、本当に帰ってきたのだとった。
坂のある町をゆっくり歩く。すれ違う々が交わす温かな崎の言葉が、によかった。
自宅の古い戸をけると、そこにはが止まったような穏やかな常があった。えられたさな、縁側から見える庭、仏壇に置かれた優の写真。
は仏壇のへ座り、線をげた。
「ただいま、あなた。全部、終わらせてきましたよ」
写真のの優は、昔と変わらない優しい顔で笑っていた。
はく息を吐いた。京で過ごした数が、い悪のようにじられた。
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翌から、の常は再び始まった。
朝に起き、公民館やさな事務所を回って清掃をする。汗を流して働くことは、彼女にとって苦痛ではなかった。
自分がきていることを実できる、切なだった。
同僚たちは京から戻ったを温かく迎えた。
「息子さんは元気だったね?」
何気なく尋ねられると、は穏やかに微笑んだ。
「ええ。あの子は、これから自分のを歩いていくとよ」
その言葉に嘘はなかった。
健太は今、自分の力でまいを探し、自分の収入に見った活を築かなければならない。苦しいになるかもしれないが、それは彼が本当ので自するために必なだった。
数週、子からきな封筒が届いた。
には財団が正式に認され、活を始したことをらせる類と、第1期の奨学たちから届いたの写しが入っていた。
「おかげで学へ学するを諦めずに済みました」
「いつか自分も、誰かを助けられるになりたいです」
拙い文字で綴られた謝の言葉を、は1枚ずつ切に読んだ。頬を伝った涙は、しみから流れたものではなかった。
涯をかけて築き、息子へ残そうとしていた財産が、未来ある子供たちのへつながっている。その事実が、のを温かな満で満たした。
おとは、本来こうして使うものだったのかもしれない。
自分が苦労して得たものを、謝も尊敬も持たない者へ残すのではなく、学びたいと願う子供たちへ託す。
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