"夫の顔と20年目の罪" 第10話
は美しかった。
空は広かった。
朝は眩しく、夜景は宝のようだった。
けれど同に、見たくなかったものもたくさん見えた。
の表の裏にある嘘。
作り笑い。
隠しきれない欲。
信じていたの裏切り。
私はを取り戻したのに、々、暗のにいた頃よりも苦しくじることがあった。
そんな、浩司は無理にづいてこなかった。
彼は何度も謝罪した。
「俺は、君を騙した。許されるとはっていない」
そう言って、距を置いた。
私が会いたいと言っただけ会い、話したいと言っただけ話してくれた。
私はしずつ、彼と向きうようになった。
最初は責めた。
どうして最初に本当のことを言ってくれなかったのか。
どうして結婚を止められなかったのか。
どうして私の気持ちをりながら、嘘を続けたのか。
浩司は言い訳をしなかった。
「怖かったんだ」
ある、彼はそう言った。
「君に本当のことを言えば、君はもっと傷つくとった。自分が君を傷つけた現実を見るのも怖かった」
「それは優しさじゃないわ」
私は言った。
「あなたが怖かっただけでしょう」
浩司は頷いた。
「その通りだ」
その正直さに、私はしだけ救われた。
彼は完璧なではない。
私を騙した側にいた。
それでも、なくとも今は逃げなかった。
自分のさを認め、私のりもしみも受け止めようとしていた。
広告
半が過ぎた頃、私は自分の気持ちに気づいた。
私はやはり、浩司をしていた。
それは20のいだけではなかった。
結婚、私にカレーを作ってくれた。
毎を贈ってくれた。
触れることを許してくれた。
言葉なでも、私の活を静かに支えてくれた。
そして、私にを戻してくれた。
その全てが、浩司だった。
私はある、彼に会いにった。
桜田病院はしい体制になっていた。医師たちの推薦を受け、浩司は理事に就任していた。若すぎるのではないかという声もあったが、彼は真面目に病院をて直そうとしていた。
理事を訪ねると、浩司は驚いたようにちがった。
「はるか」
私は彼のにった。
「あなたに、聞きたいことがあるの」
「何?」
「20、あなたがくれたガーベラの言葉。希望よね」
浩司は静かに頷いた。
「そうだよ」
「私にとって、あなたはずっと希望だった。けれど同に、あなたは私を騙したでもある」
彼は目を伏せた。
「分かっている」
「だから、簡単には信じない。すぐに全部許せるわけでもない」
「うん」
「それでも……」
私は息を吸った。
「これからのあなたを見ていきたい」
浩司が顔をげた。
「見えるようになったこの目で、あなたがどんななのか、もう度確かめたい」
彼の目が揺れた。
私はさく笑った。
「それでもいい?」
浩司はしばらく何も言わなかった。
広告
そして、ゆっくり頷いた。
「ありがとう」
その半、私は改めて桜田浩司と結婚した。
今度は誰かに決められた結婚ではない。
叔父の都でも、義両親の欲でもない。
私自が選んだ結婚だった。
もちろん、騙された信が完全に消えたわけではない。
ふとしたにになることもある。
本当に信じていいのかと、胸が痛む夜もある。
けれど、そのたびに浩司は逃げずに向きってくれた。
「になったら、何度でも聞いていい」
彼はそう言った。
「俺はもう、君に隠しごとをしない」
その言葉を、私はすぐに信じ切ることはできなかった。
けれど、彼のを見ていくことならできるとった。
そんなある、浩司が私に相談を持ちかけてきた。
「期入院の患者さんたちのために、病院でピアノコンサートをきたいんだ」
彼はし緊張した顔で私を見た。
「はるかに弾いてもらえないかな」
私は驚いた。
「私が?」
「君の音は、に希望を届けられる」
その言葉に、胸がくなった。
い、私はピアノを弾いてきた。
母をって。
父に支えられて。
暗ので、自分を失わないために。
けれど、ここしばらくは々なことがありすぎて、まともにピアノに触れていなかった。
「く弾けるか分からないわ」
「いかどうかじゃない。君の音を届けてほしいんだ」
浩司の願いに、私は頷いた。
イベントホールで催されたピアノコンサートの。
私は久しぶりに台にった。
客席には、子の患者、点滴をつけた子ども、く入院している齢者たちがいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
余命半年からの再出発
余命を告げられた日、夫は離婚届を置き、息子も「必要なことがあったら連絡して」と距離を置いた。 58歳の桐谷佳代子は、病気だけでなく、33年間築いてきた家族まで同時に失った。 誰もいない台所で一人分の味噌汁を作りながら、絶望の中にいた佳代子だったが、病院で出会った人々との縁をきっかけに、少しずつ自分の人生を取り戻していく。 治療、離婚、家を失う危機。 それでも彼女は、針と糸を手に取り、病気と向き合う人のための帽子作りを始める。 家族に必要とされることでしか自分の価値を感じられなかった女性が、人生のどん底から見つけた本当の生き方とは――。人生逆転|夫婦|第二の人生2.0萬字5 3 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 9 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 0 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 0 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第13話
名刺一枚の逆転縁談
美容師として働く藤井まなみは、恋人・桜庭優馬からプロポーズを受け、結婚を決意する。 しかし、優馬の両親は最初からまなみを見下していた。服装、髪色、職業、そして実家のことまで決めつけ、「うちの息子とは釣り合わない」と一方的に別れを迫ってくる。 迎えた両家顔合わせの日。 港区のタワーマンション暮らしを誇る優馬の父は、まなみの父が「スーパーで働いている」と聞いた途端、露骨に笑った。 「スーパー勤めのお父さんでは、家柄がねぇ」 その場で結婚をなかったことにしようとする桜庭家。まなみは悔しさに言葉を失うが、父は最後まで穏やかな表情を崩さなかった。 そして静かに、1枚の名刺を差し出す。 それを受け取った瞬間、優馬の父の顔色が変わった。 見下していた“スーパー勤めの父”の本当の正体とは。 家柄や肩書きで人を判断した家族が、たった1枚の名刺で言葉を失う――痛快な逆転劇。人生逆転|裡の顔2.0萬字5 1 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 0 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 2