"残飯の花嫁" 第8話
「今の発言も、婚に同するとして記録してよろしいですか?」
浦が録音を示すと、悦子は瞬言葉を詰まらせた。
「勝にしなさい。うちには何の落ち度もないんだから」
義父の隆は、先ほどから言も発していなかった。
録音ので自分の為に触れられたことが気になっているらしく、額には汗が滲んでいる。
浦が隆へ向き直った。
「霞さんが入浴の浴を覗き、就寝に体へ触れたという話について、改めて伺います」
「らん。こいつが勝に騒いでいるだけだ」
「病院と警察には相談済みです。事聴取を求められた際には、誠実にご対応ください」
隆の顔が変わった。
悦子は夫を庇うのではなく、霞へ責任を押しつけようとした。
「あんたが目を使ったせいでしょう! この棒猫!」
義母がちがって霞へづこうとした瞬、祖母がそのへた。
普段は穏やかで、声を荒らげることのない祖母だった。
「そので、もう霞を呼ばないでください」
静かな声だった。
けれど悦子は、気圧されたようにを止めた。
「この子の両親がいないことを、何度も馬鹿にしたそうですね」
祖母は悦子を真っすぐ見つめた。
「両親がいないから、私たちはこの子を切に育てました。あなたに以の扱いをさせるために育てたのではありません」
広告
「以だなんて、げさな」
「では、あなたがしたことを、自分でも受け入れられるか確かめましょうか」
祖母が叔母へ目配せした。
叔母は廊に置いていた呂敷包みを持ち込み、座卓のへ載せた。
からてきたのは、美しい塗りの箱だった。
悦子は審そうに眉をひそめた。
「何よ、それ」
祖父が蓋へを置いた。
「霞を半しつけてくださったお礼です。そちらのおにうか分かりませんが、皆さんで召しがってください」
悦子は、贈答品だとったらしい。
得げな表を浮かべて蓋をけた。
次の瞬、鳴をげてろへのけぞった。
箱のには、果物の皮や野菜くず、茶殻が隙なく詰められていた。ただしの問題が起きないよう、祖父たちは未使用の野菜くずを撮用に詰めただけで、実際にべさせる図はなかった。
「何なのよ、これは!」
「そちらでは、これがへしてよい事なのでしょう?」
祖父の声はかった。
「霞にはべさせられて、自分たちにはされたくない。その理由を聞かせていただきたい」
悦子はをいたが、何も答えられなかった。
「わしらは、あなた方と同じことをするつもりはありません」
祖父は箱の蓋を閉じた。
「これをべろとは言わない。がどれほどの屈辱を受けたのか、目で見て考えてほしかっただけです」
広告
祖父はちがった。
「霞の私物については、、代理ち会いのもとで受け取ります。勝に処分すれば、そのことも記録します」
孝志が霞の腕を掴もうとした。
「待てよ。本当に帰るのか」
親戚たちが斉にちがる。
だが霞は、自分で孝志のを払いのけた。
「もう、あなたの許はいりません」
そして私の隣へ戻った。
をる、霞は度だけ振り返った。
半暮らしたに未練があったわけではない。あのを自分ので越え、もう度と戻らないとに刻むためだったのだとう。
のには、待していた親戚たちがいた。
霞の姿を見ると、誰も結果を尋ねず、静かにをけた。
祖父は全員の顔を見回した。
「帰るぞ」
それだけで、親戚たちはそれぞれのへ戻った。
暴力も号もなかった。
それでも森本の3にとって、自分たちが虐げた女性の背に20を超える族がっているという事実は、分な衝撃だったはずだ。
へ乗り込むと、霞は窓のを見たままく息を吐いた。
やがて私の肩へを預け、さく言った。
「終わったのかな」
「これから終わらせるんだよ」
浦が助席から振り返った。
「婚も責任の追及も、ここからです。ただ、もう霞さんが1で向きう必はありません」
霞は目を閉じた。
頬を伝った涙は、夜までの恐怖の涙とはし違って見えた。
婚協議は、当初の予より難航した。
森本側は、最初の数こそ「霞など必ない」と気だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
余命半年からの再出発
余命を告げられた日、夫は離婚届を置き、息子も「必要なことがあったら連絡して」と距離を置いた。 58歳の桐谷佳代子は、病気だけでなく、33年間築いてきた家族まで同時に失った。 誰もいない台所で一人分の味噌汁を作りながら、絶望の中にいた佳代子だったが、病院で出会った人々との縁をきっかけに、少しずつ自分の人生を取り戻していく。 治療、離婚、家を失う危機。 それでも彼女は、針と糸を手に取り、病気と向き合う人のための帽子作りを始める。 家族に必要とされることでしか自分の価値を感じられなかった女性が、人生のどん底から見つけた本当の生き方とは――。人生逆転|夫婦|第二の人生2.0萬字5 1 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 7 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 0 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 0 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第13話
名刺一枚の逆転縁談
美容師として働く藤井まなみは、恋人・桜庭優馬からプロポーズを受け、結婚を決意する。 しかし、優馬の両親は最初からまなみを見下していた。服装、髪色、職業、そして実家のことまで決めつけ、「うちの息子とは釣り合わない」と一方的に別れを迫ってくる。 迎えた両家顔合わせの日。 港区のタワーマンション暮らしを誇る優馬の父は、まなみの父が「スーパーで働いている」と聞いた途端、露骨に笑った。 「スーパー勤めのお父さんでは、家柄がねぇ」 その場で結婚をなかったことにしようとする桜庭家。まなみは悔しさに言葉を失うが、父は最後まで穏やかな表情を崩さなかった。 そして静かに、1枚の名刺を差し出す。 それを受け取った瞬間、優馬の父の顔色が変わった。 見下していた“スーパー勤めの父”の本当の正体とは。 家柄や肩書きで人を判断した家族が、たった1枚の名刺で言葉を失う――痛快な逆転劇。人生逆転|裡の顔2.0萬字5 1 -
完結第11話
追放母の25億売却
お盆のため、長崎から東京の息子夫婦のペントハウスを訪れた田中春江。 亡き夫に手を合わせ、息子の好物を詰めた重箱を抱え、半日かけて上京した彼女を待っていたのは、温かな家族の食卓ではなかった。 嫁・里奈は春江の手料理を目の前で捨て、安いホテルの予約票を差し出す。さらに息子夫婦は、自分たちが旅行へ行く間、愛犬の世話だけを春江に押しつけようとしていた。 長年、息子のために働き続け、すべてを与えてきた母。だがその日、春江はようやく気づく。 自分は家族として呼ばれたのではない。ただ都合よく使われるために呼ばれただけだった。 その夜、春江は20年以上連絡を取っていなかった“ある人物”に電話をかける。 翌日、息子夫婦が暮らしていた天空の城は、静かに動き始めた――。人生逆転|親不孝|親子関係1.6萬字5 6 -
完結第11話
夫の顔と20年目の罪
8歳の事故で母と光を失った桜田はるかは、暗闇の中でピアノだけを支えに生きてきた。 父の死後、叔父に勧められるまま結婚した相手は、名門病院の跡取り息子・桜田真一。寡黙ながらも優しく、毎日花束を贈ってくれる夫を、はるかは心から信じていた。 そしてある日、20年待ち続けた角膜移植手術の順番が回ってくる。 初めて夫の顔を見られる――。 そう思って迎えた包帯を外す日。眩しい光の中で、はるかの前に立っていたのは、愛していたはずの夫とはまるで違う男だった。 「あなたは誰?」 病室に凍りつく空気。夫を名乗る男、黙り込む周囲、そして誰もが隠していた結婚の嘘。 やがてはるかは、20年前の事故と、ガーベラに隠された本当の意味へとたどり着いていく。人生逆転|夫婦|真相1.7萬字5 0 -
完結第15話
水を盗んだ隣人の末路
節約して家族旅行の資金を貯めようとした早紀。しかし届いた水道料金は、なんと15万円――。原因を探ると、隣人が高級盆栽の水やりのため、早紀の家の水道を無断使用していたことが発覚する。 注意しても反省せず、「隣なんだから少しくらいいい」と開き直る隣人。さらに、数千万円相当の盆栽の多くが他人から預かった大切な品だと分かり、事態は思わぬ方向へ進んでいく。 自分の水を守るために取った行動が、やがて隣人の人生と信用を大きく揺るがすことに――。 一滴の水から始まった、ご近所トラブルと家族の絆を描く逆転ストーリー。因果応報|人生逆転2.2萬字5 0 -
完結第14話
特大おにぎりの恩返し
小学4年生の遠足の日、黒川大雅は「お弁当を忘れた」と笑う同級生・浅川亜美に、祖母が握ってくれた特大の梅干しおにぎりを分けた。 けれど、それはただの忘れ物ではなかった。 給食だけが唯一まともに食べられる日もあった亜美。お風呂にも入れず、空腹を隠して笑っていた彼女の事情を知った大雅の家族は、静かに手を差し伸べる。やがて亜美は祖父母の家へ引き取られ、二人は離ればなれになった。 それから20年後。 建設会社の社長となった大雅の前に、再開発予定地にある「こども食堂」を守ろうとする一人の女性が現れる。 その名は、浅川亜美。 あの日のおにぎりは、ただ空腹を満たしただけではなかった。祖母の優しさと、一人の少女の人生を変えた記憶は、20年の時を越えて、思いがけない形で大雅の前に戻ってくる――。人生逆転|真相2.0萬字5 12