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"水を盗んだ隣人の末路" 第9話

私はのため、局のお客様センターと所轄署の担当警官に話で確認を入れた。

『ええ、ご自宅の元栓を閉めて留守にされることには何の問題もありません。むしろ正接続の被害拡を防ぐための適切な措置です。相方には事に「元栓を閉める」と伝える義務すらありませんよ』

な落ち度は、完全にゼロだった。

朝。 の空がみ始めた午630分。台の黒塗りのハイヤータクシーがまった。 きなリモワの級スーツケースをつ引き、仕ての良いジャケットを着た黒杉が玄関からてきた。

黒杉はの庭につ正の姿を見つけると、勝ち誇ったような嫌な笑みを浮かべてを挙げた。

「青井さん。じゃあ、留守にしますんで。くれぐれも庭の盆栽には余計なことしないでくださいよ。防犯カメラで24してますからね」

は腕を組み、ややかな線を返した。

「ああ。おの庭になんか歩も入らないよ」

「結構。話が分かるようになって助かりますよ」

黒杉は嫌でタクシーに乗り込み、成田空港へ向けてっていった。

タクシーのテールランプが見えなくなってから、きっかり。 正際のメーターボックスのにしゃがみ込んだ。

「閉めるぞ」

「お願い」

属製のハンドルを、方向へ固く締め込む。

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カチリ、と応えとともに、へ引き込まれる本管のが完全に遮断された。

800分。 隣の庭で、タイマーの作するさな子音が響いた。 自システムのノズルが斉にカチッとく。 しかし——パイプからは、かすかな空気の抜ける「プシュー」という乾いた音が漏れただけで、滴のも噴きすことはなかった。

私はその景を、階の窓から静かに見届けていた。

私たちは何も壊していない。 誰も傷つけていない。 ただ、自分たちのおで買ったを、自分たちので止めただけだ。

こうか、紀」

荷物をまとめた正が呼ぶ。 私たちは玄関の鍵を厳にかけ、母のへ向けて発した。

母のでの活は、いのほか適でらぐものだった。 正の通勤分ほど延びたが、母は孫の芽が毎泊まってくれることをからび、毎晩豪勢な夕を作って私たちを迎えてくれた。のメーターを気にする必のない、温かい呂にゆっくりと浸かりながら、私たちは久しぶりにらしい平穏を取り戻していた。

だが、私は度、仕事帰りに自宅の郵便ポストの確認と換気のためにち寄っていた。 その際、どうしても隣の庭の様子が界に入ってしまう。

目】 梅け直の厳しい差しが照りつけていた。

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黒杉の庭の盆栽たちは、まだに含まれていた残留分のおかげか、青々とした緑を保っていた。自システムのノズルは定になると虚しく閉を繰り返していたが、滴もない。

目】 連、最気温が度を超える猛暑が続いた。 鉢植えの盆栽は、くに根を張る庭とは根本に異なる。浅い鉢のに限られたしかなく、烈な直射を浴びれば、半はカラカラに乾燥する。 奥の棚に置かれていた楓の繊細な葉先が、で縮れ、黄く変し始めていた。

目】 異変は決定となった。 黒松や真柏の針葉が、鮮やかな緑から、気を失ったっぽい緑へと褪し、枝全体が力に負けたように力なく垂れがっていた。

「……誰も来ないのかしら」

私はフェンス越しに息を呑んだ。 を空けるのだ。普通なら、いくら自装置があるとはいえ、隣のや専の業者に鍵を渡し、定期な見回りを依頼しておくのが常識だろう。 しかし、黒杉の敷には、発のからっ子入りした気配がなかった。 あの男は、から盗むが「永にノーリスクで湧き続ける」と信じ込み、誰として点検のバックアップすら配していなかったのだ。

目】 あの「500万円の真柏」の葉が、完全に赤茶に枯れ落ちていた。

面には乾燥してパリパリになった苔がひび割れ、が吹くたびに枯葉がの敷へとパラパラとい散ってくる。

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