"嫁に奪われた最後の400万円" 第4話
しかし美はすぐに返していました。
《丈夫です、お母様。あの、何も気づいてませんから》
何も気づいていない。
確かに私は、気づいていないふりをしていました。
輔にも美にも、何も問い詰めませんでした。
広もそのグループにいました。
夫は度も発言していません。
息子たちを止めることもありませんでした。
ただ、全ての会話を見ていました。
それが夫の選択でした。
私は3の夜、この会話を最まで読んだ、旅予約を確認しました。
予約者は私。
支払いをしたのも私。
しかし宿泊者の1が、私の名から美の母親へ変更されていました。
変更の連絡を受けた旅代理は、予約者本である私にも確認を寄こしました。
私はそこで全てを理解しました。
そして担当者へ頼みました。
「お願いがあります」
それが、反撃の始まりでした。
私はすぐに旅を取り消しませんでした。
輔たちが本当に私を置きりにするのか、自分の目で確かめたかったからです。
もし当になって謝るなら。
もし「緒にこう」と言ってくれるなら。
私はまだ、許したかもしれません。
けれど空港で聞いた言葉は――。
「ヅルは用済みですから」
最の希望を完全に消しました。
私はコーヒーをみました。
議なほど苦くありませんでした。
スマートフォンをに取り、登録してある番号へ話をかけます。
広告
「もしもし。成瀬です」
話の向こうから、落ち着いた男性の声が返りました。
「成瀬様、お待ちしておりました」
「例の件、予定通りめてください」
「承いたしました。全て配済みです」
話を切ると、私はバッグから名刺入れを取りしました。
そこには、こうかれています。
命保険会社。
特別顧問 成瀬美佐子。
息子たちはらなかったでしょう。
自分たちが「ヅル」と笑った65歳の母親が、ただ貯を切り崩して暮らしている老女ではないことを。
私はちがり、タクシー乗りへ向かいました。
「座の本社までお願いします」
が空港をれていきます。
窓のを眺めながら、私は静かに決めました。
これからは族のためではなく、自分の尊厳を守るためにく。
もう度と、誰にも私の優しさをさだとわせない。
その、私のでの何かが完全に切り替わりました。
座の層ビルのでタクシーをりると、私は久しぶりに空を見げました。
この建物は、私が28働き続けてきた会社の本社です。だった頃には、正面玄関へ入るだけでも緊張したものですが、今では受付のたちが私を見ると自然にをげてくれます。
専用エレベーターで層階へ向かいました。
扉がくと、静かな廊の先に私のオフィスがあります。
広告
ドアの横には「特別顧問 成瀬美佐子」とかれたプレート。
輔には、私は今でも「保険を売って歩いているだけの母親」に見えていたのでしょう。
しかし実際には、私の契約は最もい期で3億円を超えていました。担当してきた顧客は500を超え、会社でも位の成績を維持してきました。
28で積みげたものは、おだけではありません。
信用。
それが私の最の財産でした。
ドアをけると、秘の本さんがちがりました。
「成瀬さん、お疲れさまです」
「ありがとう。準備は?」
「全てっています」
本さんが差ししてくれたファイルをきました。
私は3、旅代理へ事を説し、私名義で契約されていた旅について、当最終承認がなければ全て取り消すよう配していました。
宿泊。
事。
現で予約していたサービス。
レンタカー。
それらをまとめて解約できるようにしてあります。
費用は条件に従って私の座へ返されることになっていました。
「先方の皆さんは会議です」
「分かったわ」
会議へ入ると、数名が待っていました。
旅代理の担当責任者。
予約していたリゾートホテルの責任者。
そして交通配を担当する会社の幹部。
いずれも、私が保険契約を担当してきた顧客でした。
私はくをげました。
「個なことでお数をおかけして申し訳ありません」
旅代理の担当者がすぐに首を振りました。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
寿司屋で暴かれた嫁
68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。因果応報|相続|親子関係1.7萬字5 0 -
完結第13話
名刺一枚の逆転縁談
美容師として働く藤井まなみは、恋人・桜庭優馬からプロポーズを受け、結婚を決意する。 しかし、優馬の両親は最初からまなみを見下していた。服装、髪色、職業、そして実家のことまで決めつけ、「うちの息子とは釣り合わない」と一方的に別れを迫ってくる。 迎えた両家顔合わせの日。 港区のタワーマンション暮らしを誇る優馬の父は、まなみの父が「スーパーで働いている」と聞いた途端、露骨に笑った。 「スーパー勤めのお父さんでは、家柄がねぇ」 その場で結婚をなかったことにしようとする桜庭家。まなみは悔しさに言葉を失うが、父は最後まで穏やかな表情を崩さなかった。 そして静かに、1枚の名刺を差し出す。 それを受け取った瞬間、優馬の父の顔色が変わった。 見下していた“スーパー勤めの父”の本当の正体とは。 家柄や肩書きで人を判断した家族が、たった1枚の名刺で言葉を失う――痛快な逆転劇。人生逆転|裡の顔2.0萬字5 1 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 2 -
完結第13話
消えた母の 10 年地下室
1993 年、お盆の帰省途中で姿を消した若い母親―10 年後、地下室で衝撃の真実が明らかに! 隣に住む親切な青年が、彼女を長年地下室に監禁していた悪夢の物語。 幼い息子だけが地下室に隠れた母と遭遇し、守らなければならない秘密を抱える。 夫の不審な観察、祖母の疑念、犯人の焦り… 積もった疑惑がついに決定的な瞬間を迎える。 10 年間の監禁、脅迫、欺瞞が一気に暴かれる衝撃結末。 失われた家族の絆が、長い悪夢を乗り越えて再びつながるまでの全記録。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 0 -
完結第13話
マカオに消えた花嫁
2010年4月、マカオへ新婚旅行に訪れた日本人夫婦・田中浩司と山田愛子は、ホテルに荷物を残したまま忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、観光地の監視カメラに映った2人の姿。部屋に争った形跡はなく、財布も荷物もそのまま。誘拐か、事故か、それとも自ら消えたのか――事件は真相不明のまま、12年という歳月に埋もれていった。 しかし2022年、1人の女子大生がSNSで見つけた写真が、凍りついた時間を動かす。 マカオの街で中国人女性と寄り添う中年男性。その顔は、12年前に失踪したはずの夫・田中浩司に酷似していた。 では、彼と一緒に消えた妻・愛子はどこへ行ったのか。 幸せな新婚旅行の裏で、あの夜、本当は何が起きていたのか。 SNSに映った“夫の顔”が、12年間隠されてきた衝撃の真実を暴き出す。ミステリー|真実|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
24年目の手紙
1978年、神戸の坂の町で、12歳の少年・健二が自宅前から忽然と姿を消した。 母・よし子が最後に見たのは、新しく買ってあげた真っ白なスニーカーを履き、嬉しそうに坂道を駆け下りていく息子の後ろ姿だった。 学校にも行かず、家にも戻らなかった健二。近所の証言では、彼は知らない男と笑いながらバスに乗っていたという。警察は「家出」と見なしたが、よし子だけは信じなかった。 息子は必ず帰ってくる。 そう信じて、よし子は24年間、古い家を離れず、毎年6月になると玄関に新しい白いスニーカーを置き続けた。 そして2002年の夏、アメリカから一通の書留が届く。 差出人の名前は――高橋健二。 そこに記されていたのは、24年前のあの日、少年を連れ去った人物の名前と、母が知らなかった残酷な真実だった。ミステリー|真実2.0萬字5 0 -
完結第11話
追放母の25億売却
お盆のため、長崎から東京の息子夫婦のペントハウスを訪れた田中春江。 亡き夫に手を合わせ、息子の好物を詰めた重箱を抱え、半日かけて上京した彼女を待っていたのは、温かな家族の食卓ではなかった。 嫁・里奈は春江の手料理を目の前で捨て、安いホテルの予約票を差し出す。さらに息子夫婦は、自分たちが旅行へ行く間、愛犬の世話だけを春江に押しつけようとしていた。 長年、息子のために働き続け、すべてを与えてきた母。だがその日、春江はようやく気づく。 自分は家族として呼ばれたのではない。ただ都合よく使われるために呼ばれただけだった。 その夜、春江は20年以上連絡を取っていなかった“ある人物”に電話をかける。 翌日、息子夫婦が暮らしていた天空の城は、静かに動き始めた――。人生逆転|親不孝|親子関係1.6萬字5 6 -
完結第11話
雨の美容室ローズ
2003年、埼玉県川口市の古い商店街で、美容室「ローズ」を1人で営んでいた宮下しず子が、雨の朝に突然姿を消した。 店の明かりはついたまま。床には切ったばかりの髪が落ち、ハサミと櫛は使いかけのまま置かれていた。レジの金も財布も残され、争った跡もない。 まるで、誰かの髪を切っている途中で、店主だけが雨に溶けるように消えてしまったかのようだった。 警察が追ったのは、前日の夕方に店を訪れた見知らぬ男。痩せて背が高く、雨に濡れたままローズへ入っていった「あの日の客」だった。 しかし男の名前も行方も分からず、事件は迷宮入りする。 それから10年後。 取り壊されることになった美容室の床下から、古い予約帳と一枚の写真が見つかる。そこに写っていたのは、かつて誰も正体をつかめなかった最後の客。 写真の裏には、しず子の筆跡でただ一言、こう書かれていた。 「金田さん 福島」 10年前の雨の夜、しず子はなぜ店を開けたまま姿を消したのか。 そして、最後の客と彼女の間に隠されていた古い約束とは――。ミステリー|真実1.7萬字5 0