"帰る場所を奪われた妻、4階で取り戻した人生" 第8話
私は何も言わなかった。
「妻としてまともなこともしない。俺の母親の世話も放棄して、自分の母親のところに入り浸ってる」
夫はさらに続けた。
「あのマンションだって、母の施設代に充てるために売るだけなんです」
加藤先は度も遮らなかった。
全て聞き終えてから、静かに顔をげた。
「誠さん、確認させてください」
「はい」
「奥様は自分からをていった。そうおっしゃいましたね」
「そうです」
「荷物もまとめて?」
「突然ですよ」
先はさく息を吐いた。
「私は10、ゆみさんのお父様の相続を担当しています」
夫の表が固まった。
「ゆみさんがどれほどご族を切にされる方か、私はよくじています」
「先……こいつのりいなんですか?」
夫の声が震えた。
私はバッグから類を取りした。
管理規約。
売却同。
登記関係の資料。
そして、とのメッセージ画面の写真。
テーブルへ1枚ずつ並べた。
「これは、あなたが提した4階の売却同です」
夫の目がきくいた。
「な、なんでおが……」
「さんの関係者の名を使っていますね」
「違う!」
「では説してください」
夫はをいた。
しかし言葉がなかった。
「誠さん」
加藤先の声は静だった。
「名義の類を本の解なく作成しているのであれば、非常にな問題です」
夫は何度も首を振った。
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「違うんです。これは続き……」
そのだった。
応接の扉が勢いよくいた。
「誠!」
全員が振り返った。
そこにっていたのは義母だった。
髪は乱れ、コートには粒が残っている。
には、くしゃくしゃになったを握っていた。
「私を騙していたのね!」
夫は幽霊でも見たように目を見いた。
「母さん、なんでここに」
義母はテーブルへ売却査定を投げた。
「ゆみさんが言っていたこと、本当だったのね」
「違う!」
「私たちのお父さんのを売って、あの若い女と緒になるつもりだったの?」
夫はすぐに態度を変えた。
「母さん、落ち着けよ。全部母さんのためなんだ」
「私のため?」
「今のマンション、古いだろ。もっと設備のいい施設に移った方が——」
「嘘をつかないで!」
義母の甲い声が響いた。
「あんたの机の奥にあったパンフレット、全部見たわよ」
夫の顔から血の気が引いた。
「都から何もかかる、あんない相部の施設に私を入れるつもりだったんでしょう!」
「それは……」
「あんた、私の通帳まで勝に持っていったじゃない!」
義母は泣きそうな顔で夫を見た。
それでも、どこかで息子の否定を待っているようだった。
、自の息子として信じてきた。
嫁が何を言っても、
「誠はそんな子じゃない」
と決めつけてきた。
その信頼が、目ので崩れている。
夫はしばらく黙っていた。
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そして突然、く息を吐いた。
「ああ、そうだよ」
義母が止まった。
「え……?」
夫はソファへ背を預けた。
優しい息子の仮面が、完全に消えていた。
「分かったなら話がい」
「誠……」
「母さん、もう俺を解放してくれよ」
義母の唇が震えた。
「あの古いマンションも、母さんの毎の愚痴も、もううんざりなんだよ」
「何を……」
「俺だって50代だ。これからしいをやり直したいんだよ」
夫は私を度睨んだ。
「ゆみは自分の母親のことばっかり。のは暗いし、息が詰まる」
私は何も言わなかった。
夫はさらに吐き捨てた。
「は俺の子供を妊娠してるんだ」
義母が息をむ。
「これからがかかる。母さんの活費まで、いつまでも俺が全部面倒見る義理ないだろ」
その言葉で、義母のから力が抜けた。
隣の子へ崩れるように座り、両で顔を覆った。
かつてインターホン越しに、
「あんたの帰る所はない」
と私へ言い放った。
その義母自が、最も信じていた息子から、
「面倒を見る義理はない」
と切り捨てられた。
私はその姿を見ても、議と満はなかった。
ただ、自分が見てきたものの正体が、ようやく義母にも見えただけだった。
すると加藤先がをいた。
「誠さん、もう1つ確認してよろしいですか」
夫は苛った顔を向けた。
「何ですか」
「さんの妊娠について、医療関で直接確認したんですか?」
「当然でしょう」
「あなたが緒に病院へった?」
夫はを閉じた。
「エコー写真を見せてもらいました」
「それだけですか」
「何が言いたいんです」
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